テラーノベル
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中学部の三時間目、教室はいつも通りの静けさに包まれていた。生徒たちは教科書に向かい、ペンを走らせる。丸メガネの女子は、まるで光を集めるかのように机の上でキラキラと勉強していた。
しかし、その光景をじっと見つめる里香の瞳には、冷たい影が差していた。
「……キラキラが沢山……」
里香の低い声と共に、目の前の女子の姿がふわりと変わる。
「闇よ、現れなさい!」
教室の外から、重々しい音が響いた。窓の外では生徒たちも教師も驚きの声を上げ、ドスン、ドスンと何かが暴れまくる音がする。窓越しに見えるのは、教室にいた女の子の姿ではなく、巨大なモングーの影だった。
愛梨は心臓が跳ねるのを感じながら、小声で囁いた。
「(この反応……まさか、モングー!?」
机にかけていたカバンから、パララの声が聞こえた。
「愛梨、モングーが来てるパラ」
愛梨は深く息を吸い、教室の騒ぎを横目にこっそりと抜け出す。屋上の出入り禁止扉を開き、そこで変身した。
「マジカル・アイリーン……!」
ピンクの愛梨カラーのペンライトを振るパララが励ます。
「頑張るパラ〜!アイリーン!」
愛梨はマイクのステッキを握り、ステージさながらの決意を胸に放った。
「……!マジカル・ドリームミラクル!」
虹色のビームがハート型のパーツから迸る。モングーは反撃に、大量の尖った鉛筆をぶつけてくる。愛梨は身をかわしながらも必死で立ち向かう。
「っ……!」
里香の冷たい声が屋上に響いた。
「いつまでも正義の魔法少女ごっこを続けさせる訳にはいきませんよ。魔法少女。モングー、殺りなさい!」
モングーは大きな消しゴムを大量に発射し、愛梨のお腹を直撃。彼女は倒れ込む。痛みに歯を食いしばりながらも、腕を広げパララを庇う。
「やめて!」
涙をこぼしながら立ち向かうパララ。巨大な指で吹き飛ばされても、再び立ち上がる。
愛梨はリボンの真ん中にあるハートのブローチをタンバリンのように叩き、ステッキから力強く放つ。
「マジカル・フラワード!」
花びらのような光が散り、モングーの視界を一瞬で隠す。愛梨はステージのように集中し、心の中で歌う。
――空を引き裂く
—fit it’s like a shining thunder
激しく鋭く全身を迸る
you’ll give me you’ll give me more
never stop
FEEK SHOCK
感情と森羅万象の共鳴
君が解き放つ your love
全てを侵す偉大なワード
♪
ステッキのキーがモングーの鍵穴に収まり、敵は浄化されて消えた。空から紫の蝶型の宝石がついたキーが降り注ぐ。愛梨はそれを手に取った。
落ちたキーはこんな感じ
里香は静かに息を吐いた。
「またですか……」
愛梨は眠るパララを抱え、屋上から下を見下ろす。教室では、さきほどモングーに変えられた女の子が目を覚していた。
「よかった……」
変身が解け、愛梨は小さな手を握るパララに微笑む。
「起きて、パララ……」
パララも安堵の表情で答えた。
「パラっ、ンッ……愛梨、無事でよかったパラ」
愛梨はそっと、パララの小さな手を握り返す。
「うん……」
朝の光が二人を優しく包み、屋上の小さな戦いは静かに幕を閉じた。
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