リオヌヴィ/魔女会パロ/狼人間ショタ(成長後もあるけど)⛓×魔女(男)(水龍)🌧の話/💊ちゃんは🌧の眷属
__走れ、走れ、走れ!!!
頭の中で永遠と警笛がなり続ける。止まったら死ぬ、確証を持ってそう思った。後ろから聞こえてくる怒号と多くの足音。確実に、死ぬ。
薄暗い森の中を駆け回る分には己の方が秀でていると思うが、あっちには数がある。ざっと見て10人。もしくはそれ以上。このけもの道から抜け、藪の中で息を潜めたとして見つかるのは時間の問題だろう。なら、どうする?このまま走り続け、撒く?それとも木の上にでも身を潜める?
前者は無理だ。いくら狼であろうが、体力が無限にある訳では無い。それにもう限界に近いのに。
後者。可能性はある、と思った。が、刹那。人間たちが手に持っていた松明が脳裏に過った。それで森に火をつけられてしまえば、詰みだ。
__なら、どうする?
「……ッい!? 」
瞬間、左足に激痛が走った。なにかでソコを突き抜かれたような、鋭い痛み。ダラダラと温い液体がソコから側面へ流れていく感覚がした。でも見て確認する暇は無い。もしも、止まってでもみろ。絶対に、もっと酷い目にあう。
痛みを無視してまた足を踏み出せば、確実に先程よりスピードが大きく落ちていることを察した。時間は有限。これじゃあすぐ。
「……何をしている?」
背後からそんな声が聞こえてきた。透き通る、清水のような美しい声。ガサガサと五月蝿く逃走劇をはやし立てていた、葉の擦れる音すら彼が口を開くのに合わせて止まる。さて、彼の存在は吉と出るか凶と出るか。まず、誰にこれを尋ねてるのかによるが。
「…アグノティタ……!!」
その声にぴた、と動きを止めた。アグノティタ。聞き間違いでなければ、この世で1、2を争うほど強い力を持った魔女のはずだ。確かにこの付近に住んでいるとは聞いていたが、それは御伽の中の話だとばかり。
だが、ここで本に描かれていた一節を思い出した。
『__アグノティタは変化を好まない。それゆえ、微かな異変にも過敏で、暴力的である__』
故に、年に似合わず聡明な少年の頭に導き出された答えは、そう。
死。
おそらく、後ろに凛と立っている彼は、不変に圧倒的な執着を持っている。変化を好まず、それを決して許さない、力を持った魔女。そして、哀れにもそこに現れてしまった異端な小狼。こんなに良い役者と流れがあってエンディングを導けない執筆者は、センスがないと言える。そう、おそらく。
ここにいる人間、およびこの狼の少年も総て、彼の手によって消されるだろう。そう悟った。なら、もう諦めよう。ただの幼い男児が、世界一の力を持つと言われる魔女に勝てるわけが無い。
ずっと震えていた足の力を抜き、膝から崩れ落ちるように地べたに座り込む。せめて痛くないように、項を差し出していずれ訪れる死をじっと待つ。男たちの怯える声の後、ザシュッと鈍い音を立てて唸る風。そして飛び散る液体の音。音が鳴らないはずなのに、カツカツと近づいてくるヒールの音。
そして、暗転。
「……………こ、こは」
白く、そしてかすかに光る天井。もしくは空。あぁ、もしかして死後の世界だとでも言うのだろうか。少しだけ痛む腕を上にあげて、ソレに触れようとすれば想定通りその手は空を切った。
__はずだった。
「あら、おはよう、子狼くん?」
柔らかくあたたかい手が己の手を掴んだのだ。肌に触れた感覚は高価そうな布地。もしかして手袋をしているのだろうか。その手はゆっくりとリオセスリの手を握り、優しくベッドへと戻した。最後に撫でるようにして手は離れていった。一体誰だろうと視線を向ければそこには、いたいけで可愛らしい少女の姿があった。同い年か、それとも少しばかり下だろうか。そのような普通の少女の姿。__いや、取り消そう。ぴこぴこと揺れる頭の上の耳は一般的ではないだろうから。一瞬兎の類かと思ったが、毛は生えていないようだ。それに珍しいグラデーションで、どちらかといえばウミウシに近いような……。
「ねえ、お名前はなんて言うの?ウチに教えてくれない?」
「…なまえ?」
「そう。キミが家族や仲間に呼ばれてた名前なのよ」
「……」
リオセスリは少し躊躇った。だが、不思議と彼女は大丈夫な気がして、ゆっくりと口を開いた。
「…リオセスリ」
「リオセスリくん、ね!教えてくれてありがとう。ねえ、もう少し寝ておきたいかしら?
もしまだ眠るなら、ウチはキミに合う薬を煎じてくるけど……」
もう起きるなら、ウチとお話しましょう?そう彼女はにこりと微笑んで、首を傾けた。
「…あんたを引き止める訳にはいかないので、まだ寝ておきます……」
「あら、そういう理由?そんなこと気にしないでちょうだい!もう…子供は大人に甘えるべきなのよ……!!」
そう言って彼女は可愛らしく頬をふくらませながら、こちらへ手を伸ばしてくる。そうかと思えばぎゅっ、と両頬を寄せられて目を見開けば、彼女はくすくすと微笑み始めた。それほど滑稽だったんだろうか……。ごめんなさいね、と彼女は笑いながら言って頭を優しく撫でてくる。
「さあ、ウチとお話しましょう?薬草は夜でも大丈夫だから……」
「ならば私が彼と話してみよう。」
ぱっ、と目の前の少女が嬉しそうに笑いながら、扉へ顔を向けた。聞いたことある、澄んだ声。
もしかして、と思い、自分もゆっくりと視線をそちらへ向けた。
コメント
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久しぶりに移した。これの魔女名は全部ギリシャ語で統一してます✋