テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『春夏秋冬』〜四季を巡って恋をする〜
第1季 春始
桜舞い散る四月。新しい制服に、新しい鞄。
ありもしない微かな望みを抱き…ドアを開ける。
どんな出会いがあるのかな。友達100人できるかな。
『なんて、小学生じゃないんだから。』
『栞季!忘れ物ない?』
『うん。』
『あ、そうそう。隣に住む夏輝君も同じ高校らしいわよ!』
『夏輝?あぁ…そう。』
『何よ素っ気ないわね。喧嘩でもしたの?』
『…夏輝とは、小学生の終わり頃から話さなくなったから。』
『え?』
『……なんでもない。行ってきます。』
『気を付けてねー!』
夏輝は私の幼馴染。幼稚園からの腐れ縁。
昔はお泊まりしたり、遊んだり、一緒に家族旅行に行くくらい仲が良かった。でも、小学校の時のあのことをきっかけに疎遠になった。
『はぁ…。くどくど聞かれるのもめんどくさい。』
(子供同士のことなんだからお母さんには
分からないよ。というか…入ってこないで欲しい。)
大人に、私達年頃の子の気持ちなんて分からないんだから――。
今日は高校の入学式。外の掲示板にクラス分けの紙が貼られる。
『1年B組…。』
(夏輝の名前……。はぁ。どこまでも腐れ縁。)
私は溜息をついて校舎に入る。
『栞季!』
『…夏輝。』
話しかけて来たのは幼馴染の澤本夏輝。
『同じクラスだな。』
『……だね。』
『一緒に行こうぜ。』
『…なんで?』
『なんでって…俺達幼馴染だし。』
『……あの時は否定した癖に。』
『は?何言って…』
私は夏輝を置いて昇降口へ向かう。
『っ、待てよ、栞季…!』
(何だよあいつ…。俺あいつになんかしたか?俺が忘れてるだけ……?)
『夏輝が忘れてるなら…もう言う必要ないか。…本当に忘れっぽいよね。』
(まぁ、席は離れるから良かったけど。)
私は下駄箱で上履きに履き替えて教室へ向かう。
『私の席…。廊下側の1番後ろか。』
私は黒板に書いてある自分の名前を探して席に座る。
机にカバンを置く。
『ねぇ、君が俺の隣の席の子?』
『…え?』
話しかけてきたのは両耳に小さいピアスを付けて、髪は淡いピンク色した男の子。
『え、う、うん。』
『名前聞いてもいい?』
『も、森山…栞季。』
『じゃあ栞季ちゃんだ!』
(いきなり呼び捨て…。)
『俺は綿谷春人!好きな呼び方でいいよ!』
『え、あ、う、うん。』
(フレンドリーだな…少し苦手かも。)
『ねぇねぇ、栞季ちゃんの好きな食べ物って何?趣味とかあるの?』
『好きな食べ物…。りんご飴…。』
『へぇ〜!女の子らしくて可愛いね!ちなみに俺はかき氷が好きなんだ!あ、お祭り限定って言ってないか!あははっ。趣味は何?』
『趣味…。』
(これといって特にないな…。)
『ちなみに俺はね人を笑顔にさせることが趣味!みんなが笑ってる姿を見るのが好きなんだ!』
『……。』
(私には眩しすぎるな…。)
『もっと栞季ちゃんのこと教えて!ねぇねぇ。』
と、その時――。
『後ろの席の奴〜これから自己紹介するから静かにしろ〜。』
『あ、すみませーん!』
『というかお前、入学式なのにブレザーはどうした。後その、髪と耳。』
『え、あ〜。』
(確かにカーディガンだけだ。寒くないのかな。)
『道で猫が濡れてたので猫にあげました!てへっ。』
『雨なんて降ってたか?まぁいい。後で職員室な。』
『はぁい。』
(やんちゃというか……。問題児……?
見るからにあれだもんな…髪染めてるし、ピアス空いてるし。あんまり関わりたくない。)
『あいつおもしれーな。』
『あぁ、後で話しかけに行ってみようぜ。』
(こういう人が結局はクラスの人気者になるんだよな…。)
そして、一人一人自己紹介をする。
『モリ…ヤマ…シ、キ、です、えっと……。』
私は緊張して声が出ない。
『ねぇ、聞こえた?』
『ううん。全然。』
(もうやだ……自己紹介なんて……。)
と、その時。
ガタンッ。
『はいはーい!俺が栞季ちゃんに聞くから栞季ちゃん答えて!!』
『え…』
『お名前は?』
綿谷君が私の隣に立ち、エアーマイクを向ける。
『森山、栞季…です。』
『森山栞季ちゃん!可愛い名前〜!好きな食べ物は?』
『りんご飴…です。』
『りんご飴だってー!美味しいよね!他に何か話すことある?』
『え、っと…。い、一年間よろしくお願いしますっ!』
パチパチ…。
(自己紹介出来た……。)
『じゃあついでに俺の自己紹介も〜。』
『綿谷、順番は守れ。』
『ちぇ〜。』
『あははっ…!』
『あの子面白いね、綿谷君だって。』
『見た目と違って面白いね。カワイイ系だし。』
教室の空気が一瞬で変わった。さっきまでのが嘘みたいだ。まるで…春風に吹かれたように清々しくなった。
『…あの、綿谷君。』
『ん?』
『……ありがとう。』
『ふふ、どういたしまして!』
俺はニコッと微笑む。
(…見た目と違って、優しいんだな…。)
全員の自己紹介が終わり、体育館し、入学式が行われる。
休み時間――。
『なぁなぁ、綿谷って呼んでもいい?』
『うん!好きに呼んでいいよ!』
『髪色可愛いね!ピアスも似合ってるし!』
『ほんと?これお気に入りなんだ〜。』
『俺も空けよっかな〜!』
『なぁなぁ俺何色似合うと思う?』
『ん〜。金色?』
『初めて染めるにはハードル高いわ!』
『wwwꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)』
隣がとても騒がしくなる。
(さっそく人気者だな…私とは正反対。明るくて優しいし…そりゃ好かれるわけだ。)
『なぁ、夏輝。あれって確か幼馴染の森山だよな?』
『あぁ。』
俺の前の席の齋藤そうすけ。小学校の時同じクラスだった。
『話しかけに行かねぇの?』
『…あぁ。そうだな。』
俺は遠くの席から夏輝を眺めていた。
(あいつ…なんで俺の事避けてんだ?)
『お前ら席つけ〜。帰りの会するからな。
今日はこれで終わりだ。明日から授業が始まる、入学前に貰った教科書持ってくるようにな。時間割は後ろの黒板に書いてあるから各自確認しろよ。』
『はーい。』
『よし、じゃあ、起立、礼。』
『さようなら〜。』
『日直も明日からだから毎回の挨拶よろしくな〜。』
『ふぅ、終わった…。』
『あ、ねぇ、栞季ちゃん。』
『!な、なに?』
『栞季ちゃんこの後暇かな?』
『特に予定は無いけど…』
『そしたら学校探検しよ!』
『学校探検……?』
『うん!まだ教室と体育館しか知らないからさ、探検しようよ!』
『え、でも…。私なんかと行くより他の子と…。』
『俺は栞季ちゃんとがいいの!』
グイッと綿谷君に引っ張られる。
『わわっ!』
綿谷君の手を握り、廊下を走る。
『栞季…?』
(あいつは綿谷…あいつ、栞季とどこへ…。)
『あははっ!楽しいね、栞季ちゃん!』
『ちょ、落ち着いて……っ。』
『ここが保健室か、あっちは理科室、こっちは音楽室…こっちは〜。』
『綿谷君はなんでそんなに私に構うの…?』
『え?』
『私って無表情だし…。一緒にいても楽しくないよ…。』
『…だからだよ。』
『え?』
『その無表情な顔を笑顔にするのが俺の趣味なんだ!栞季ちゃんのことなら尚更俺笑顔にしたい!楽しいと思えないならもっともっと楽しませる!俺、栞季ちゃんの、笑顔が見たいから!』
『……!』
(今まで…私の事なんて誰も興味なくて…友達もいなくて…。一人で過ごしてきた私を…笑顔にさせたい…?綿谷春人君…変なひと……。)
『ふ、ふふっ。』
『!』
『ふふ、あははっ……っ!』
私はおかしくなってつい笑みがこぼれる。
『栞季ちゃん?笑ってる?』
『うん、綿谷君が面白くて…。あは、ふふっ。』
『ふふ、良かった。栞季ちゃんの笑顔見れて。』
『やっぱり栞季ちゃんには似合うと思ったんだよね笑顔が。』
『笑顔……?』
『うん。教室で会った時も…入学式の時も、さっきだってそう。』
『それは…。』
『だから俺の力で笑わせられて良かったよ。ふふっ。』
『……!』
胸が高鳴る音がした。
どこかで覚えのある高鳴りだった。だけど
それがいつかなんて忘れてしまった。
『他の所も探検しよ!』
『う、うん…!』
『あ、苗字だと堅苦しいからさ、春人でいいよ?』
『え、いいの?』
『うん!その方がもっと仲良くなれる気がする!』
『分かった……春人。』
『うん!その方が俺好きかも。』
ドクンッ……!
この胸の高鳴りは…収まらない気がする。
加速して加速して…止まれない気がする。
『さ、行こ!』
春人は私に手を差し伸べる。
その手をぎゅっと握る。
『探検、探検だー!』
『はしゃぎ過ぎだよ〜!』
『あははっー!』
『……なんであいつの前では笑ってんだよ。』
(俺にずっと見せてたあの笑顔…最後に
見せたのはいつだった…?)
俺は影で2人を見ていた。
ギュッと鞄を握りしめる。
次回のあらすじ
隣の席の春人と友達になった私は春人と学校生活を共にすることに。この胸の高鳴りに悩まされながらも学校生活を過ごす。そして学校にも慣れていき、入部する部活を探すことに。そして それがきっかけで新しい友達が……?
『ここがサイエンス部…。』
『この体験入部するの?』
『うん、ここ気になってて。』
『じゃあ俺も体験入部しよっと!じゃあ早速〜。』
『え、いきなり!?』
だけどそこは女子禁止の部活で……。
『ここは虫とかそういうのを取り扱ってる部活何だ。女子は虫嫌いだろう?』
『い、いえ、私は……。』
『ほら、これを見て何も思わないの?』
『っ…。』
『ほら、気持ち悪いって思っただろ?そう思われるのが嫌だから女子は入部禁止なんだ。だから違う部活に――。』
『…変わってるね。森山は。』
『え?』
『普通なら気持ち悪いって思うのに。』
少し変わった趣味を持つ不思議くんと出会い――?
次回
第2季 秋会
コメント
4件
(´。✪ω✪。 ` )最高
ほんと天才だよ .ᐟ .ᐟ あくねこじゃないストーリーかけるとかほんとに天才