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「つっちーは凄いよ。」
ぽんぽんと軽く頭に手を置いて、彼の手は離れていく。それが酷く寂しく感じられてもっと撫でてくれとワガママを言った。仕方ないなぁ。なんて口では言いながらも、満更でもなさそうにワガママを受け入れてくれるからいつも甘えてしまう。さほど歳は変わらないはずなのに大きく見える彼に抱きついた。
きっと自分なんか居なくても上手くやっていける彼に追いつくのに必死で、彼ばかりを見ている自分には見えない世界を見ているその目に焦がれて生きてきた。誰しもが彼を評価して、集まる視線の割合はいつも彼の方が多い。それが誇らしくて自慢したくなる。しかし、それが時に自分の心を締め付けてくる。自分は今、彼の隣に見合う人間でいられているだろうか、自分のせいで彼の評価を下げてしまってはいないだろうか、と。それを感じ取ってか、いつもブルーな感情に明るい色をくれるのは彼だった。だから、自分が唯一弱みをさらけ出せるのは彼だけ。それでも、この依存と表現して相違ない関係に何ら不安を感じないのは、彼の心の広さと日々の行動から滲み出る愛情のおかげだった。
抱きついてからも頭を撫で続けてくれる様はまるで親子のようで、しかし母親にされるよりも大きい安心感があった。
「ありがとうございます。」
肩口に乗せていた顔を上にあげると彼と目が合う。普段は広く色んなものを見ているその目は今、俺だけを見つめている。
「つっちーはたまに不安になっちゃうんだよな。」
「…すみません。」
「いいんだよ。いつでも言えよ。」
心強くて優しい笑みに胸がいっぱいになる。
何年もこの笑みに救われている。このお返しができるような気も、できている自覚もないけれど、それでいいと言ってくれているのだから、引き下がらないのも違うだろう。ありがたく今は甘えさせてもらおうと彼の唇に自分の唇を重ねた。
「好きです。」
「おう。知ってる。」
「塙さんは?俺のこと好きですか?」
今度は彼の方から唇を重ねられた。
「もちろん。愛してるよ。」
ぐしゃぐしゃと掻き回された髪の毛は彼の照れ隠しの証のようで嬉しくなってもう一度だけキスをした。