テラーノベル
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――静寂。
天を突くような大聖堂の高い天井に、黒い瘴気が渦を巻き、石造りの壁をきしませていた。
玉座に座るシェイドは、唇に禍々しい笑みを浮かべながら三人を見下ろしている。
その漆黒の瞳は、闇そのものの深淵。
大森と若井は、藤澤に抱き起こされるようにして立ち上がった。
まだ薬の余韻が残り、汗で額が濡れている。
それでも、その瞳には先ほどまでの虚ろさはなかった。
「……涼ちゃん……」
かすれた声で大森が呟いた。
その名を呼べる、それだけで胸が震えるほどの実感。
若井が拳を握りしめ、荒い呼吸を押さえ込む。
「……あんな奴に、もう俺たちを支配させねぇ」
藤澤は二人の手を強く握った。
「戻ってきてくれて、ありがとう……。でも……まだ終わってない」
その瞬間、玉座のシェイドが低く笑った。
「戻った? ……違うな。戻ったように見えても、君たちの身体にはまだ僕の薬が残っている。いつでもまた墜ちる……そうだろう?」
背筋を撫でるような声。
三人の胸に緊張が走る。
少しでも気を緩めれば、また闇に引きずり込まれる――その恐怖が喉を締め付ける。
だが、大森は一歩前へ出た。
「俺は……歌うことでしか自分を証明できない。だから――」
炎のように赤い五線譜を空に描き、声を放った。
「この声で、闇を裂く!!」
空気が震え、音の光が天井まで駆け上がる。
続けざまに若井が大剣を抜いた。
琵琶を模した刃が振り下ろされるたび、波動が床を裂き、闇を切り裂いていく。
「俺の刃は迷わねぇ。二人を――必ず守る!」
藤澤の鍵盤が鳴り響いた。
白く、琥珀色を帯びた花弁が舞い、大聖堂を覆う瘴気を押しのける。
「二人を導く光は、俺が……!!」
三人の音が重なった瞬間、圧倒的な響きが生まれた。
それは闇を震わせる“和音”。
「シェイド。お前には分からないだろう」
大森の声は炎のように熱を帯びていた。
「孤独に支配されたお前に、俺たちの音は壊せない」
「俺たちは――三人でひとつだ。」
若井の叫びが大聖堂に轟いた。
「だから、負けない!!」
藤澤の声が、闇を切り裂いた。
「……くだらない」
シェイドが玉座から立ち上がる。
漆黒の髪が揺れ、広がった闇の翼が天井に触れる。
「ならば、証明してみせろ……。三位一体とやらが、僕の快楽より強いかどうか」
シェイドの笑みが消える。
その身から、黒い瘴気が溢れ出し、大聖堂全体が揺れ始めた。
光を呑み込み、空気を濁らせ、彼らの身体を絡め取ろうとする。
「来い……本物の“守護神”とやら……。僕がその幻想を打ち砕いてやる!!」
瞬間、シェイドの掌から黒い鎖が放たれた。
大地を割り、音を呑み込もうと迫る。
「来るぞッ!」
若井が叫び、剣を構える。
大森が歌声で鎖を弾き飛ばす。
しかし一本、避けきれず肩を裂かれ、鮮血が舞った。
「元貴!」
藤澤が駆け寄る。
鍵盤の光で血を止めながら叫んだ。
大森は苦痛に顔を歪めながらも、唇を開いた。
「俺の歌は……お前らがいるから響くんだ……ッ!」
再び声を張り上げ、赤い音符が炎の矢となってシェイドを貫いた。
「チッ……!」
シェイドが呻き、翼で矢を払いのける。
若井がその隙を逃さず、剣を振る。
波動が衝撃波となり、シェイドを後方へ吹き飛ばした。
大聖堂の壁が崩れ、瓦礫が降り注ぐ。
「今だ、押せ!!」
藤澤の鍵盤が再び奏でられる。
光の花弁が無数に舞い、崩れた大聖堂を白く染め上げる。
大森の歌声がその花弁を導き、若井の剣が突き抜ける。
三位一体の一撃。
闇と光がぶつかり合い、大聖堂全体が砕け散っていく。
三人は決して退かず、ただ前へ進む。
――守るために。
――繋ぐために。
――共に、生き抜くために。
コメント
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最終決戦キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!テンションバクアゲで読んでました!やっぱり最終決戦はワクワク最高潮になりますね…!主様の戦闘シーン描写も相まって最高のお話でした! いつも更新お疲れ様です!ありがとうございます!これからも頑張ってください!応援しています✨️✨️✨️(いつもよりも✨️多めです!)