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 ユウリは目を開けた。目の前にフィアナの顔があった。気遣わしげに眉を顰めていたが、ユウリの覚醒に気づいてぱっと表情を明るくする。

「ユウリ! 気づいたのね! 良かった! 急に現れた|悪竜《ヴァルゴン》に前足で殴られたって聞いて、一時はどうなることかと思ったわ」

 フィアナの口振りには心からの安堵が感じられた。

「そうだ! あの|悪竜《ヴァルゴン》はどうなったんだ?」ユウリは周りを見渡し、目を瞠った。

 あらゆる所に|悪竜《ヴァルゴン》がいた。士官学校の生徒や先生と戦いを繰り広げている。

「な、なんだよこれ! 一匹だけじゃないのか? どこもかしこも|悪竜《ヴァルゴン》だらけで……。どうなってるんだよ!」

 ユウリがまくし立てると、フィアナは唇を強く結び厳しい表情になった。

「ユウリが昏倒してすぐ、近くにいたカノンがユウリを襲った奴を斬り伏せた。それで終わったと思ったんだけど、次々と黒の渦巻が発生して、そこから|悪竜《ヴァルゴン》が出てきたの。で、こうしてみんなで戦ってるってわけ」

 フィアナは淀みなく状況を述べた。

「戦況はどうなんだ? ファルヴォスみたいな人型の奴はいないのか?」ユウリは続けて質問を投げかける。

「人型|悪竜《ヴァルゴン》の姿はない。それに加えて通常の|悪竜《ヴァルゴン》も、どういうわけか動きが鈍いの。具体的に言うと、飛行がいつもと違って微妙に安定してないのよ。だから、そこまで劣勢を強いられてるわけじゃあ──」

 説明を続けるフィアナの背後に黒色球体が発生。みるみるうちに大きさを増していく。

「フィアナ、後ろだ!」叫んだユウリはフィアナを突き飛ばした。フィアナは転びそうになりつつも、足を器用に動かして持ち直す。

 次の瞬間、フィアナのいた位置を漆黒の火球が通過した。ユウリの肌に熱感が生じる。

 火球は校舎に激突した。ボゴウ! 大きな音がして、レンガの一部が剥がれ落ちる。

 ユウリはフィアナを攻撃した|悪竜《ヴァルゴン》に向き直った。ユウリたちを射貫くような眼差しで睨んでいる。一見、ただの一般的な|悪竜《ヴァルゴン》だが、目を引くのは身体の後ろのものだった。

 通常の|悪竜《ヴァルゴン》の尾は、成人男性の身長ほどの長さである。だがその|悪竜《ヴァルゴン》の尾は、細いがとにかく長かった。ユウリの背丈の倍はあるように見える。

「気をつけて! この|悪竜《ヴァルゴン》、尻尾が他の奴と違うわ!」

 フィアナが危機感たっぷりに叫んだ。

 ユウリは精神を集中し、目を閉じた。

「ユウリ、戦う気? でもあなた今、|神鳥聖装《セクレドフォルゲル》が使えないんじゃあ……」

 フィアナが不安げに呟くと同時、尾長|悪竜《ヴァルゴン》は身体を回転。長大な尻尾を振り回す。

 ユウリは瞬時にバックステップ。射程の外へと逃れて躱した。近くではフィアナが、子ユリシスで作った障壁で尾を受け止めている。

(いや、使える。俺は、戦える! 戦って勝って、ルカが愛したルミラリアを守るんだ!)

 心中で吠えながら、ユウリは詠唱を進める。

 尾長|悪竜《ヴァルゴン》が右腕を振るった。鋭い爪がユウリの腹部へと迫る。

 ほぼ同時、「|神鳥聖装《セクレドフォルゲル》! |青《プラリア》!」詠唱を完遂したユウリの手に、|水盾《すいじゅん》が出現。尾長|悪竜《ヴァルゴン》の一撃を受け止めた。

「ユウリ! あなた力が──」フィアナの弾んだ声がした。

 ユウリは微笑で返答しつつ、長大な尾を引いていく尾長|悪竜《ヴァルゴン》を睨み続けた。

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