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——午前9時。
窓から差し込む光が、淡くシーツを照らす。コンちゃんは布団の中でぼんやり目を開けた。
「……ん、ふぁ……」
体がだるい。
腰がズキズキする。
なにより、喉が……かすれて、声が、出ない。
「っ……あ、れ……」
言葉にしようとしても、喉がひゅって鳴るだけ。
喋ろうとすると、出てくるのは掠れた吐息ばかり。
「ん……んん……っ」
上体を起こそうとして、腰にズンと痛みが走った。
同時に、お腹の奥がじわっと疼くような感覚が広がる。
(……な、にこれ……なんか、変……じんじんする……)
「……おはよ、コンちゃん」
バスルームから出てきた天城先輩が、タオルを肩にかけたまま近づいてくる。
「起きた? 喉、声、出ない?」
こくこく、と頷く。
「腰も、痛い?」
また、頷く。
「……中、じんじんしてるでしょ?」
——どくん、と心臓が跳ねた。
「……ふふ、ごめんごめん。昨日さ、ゴム、2箱使っちゃったんだよね」
「……っ!」
「姉貴ほんとやってくれたわ〜。あの飲み物、効きすぎじゃない?」
先輩は笑って、コンちゃんの頭を撫でる。
その手のひらはあったかくて、でもちょっとずるいくらい優しい。
「でもさ、可愛かったよ、昨日のコンちゃん。ずーっと泣いてて、ずーっとぐちゃぐちゃで」
声にならない声で、抗議しようと口を開けても、やっぱり出てくるのはひゅって音だけ。
「喉もおかしくなってるでしょ。昨日、あんなに“だめっ”て叫んでたからね」
くすっと笑って、首筋にキスが落ちる。
触れられたところが、びりって熱を持った。
「……俺さ、実は昨日あれもう一本飲んでたんだよねー」
「っ……!?」
「“優しくできないかも”って言ったけど……何があっても優しくしないって決めてた」
耳元で囁かれ、ぞわって背筋が震える。
ふわふわの意識のまま、コンちゃんは再び枕に沈み込んだ。
「でも、後悔してる?」
ん?と首を傾げる。
「……よかった。じゃあ、おかわりはまた今度ね」
「……っ、ん……」
かすれた吐息しか出ない喉で、かすかに笑うと、先輩がその額にやさしくキスを落とした。