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※gktu(gkty)です※捏造多めです
※男性妊娠あり(オメガバではありません)
※普通にknmcが歳とってます
(fsm25歳 knmc22歳)
※fsmの狐要素あります
※若干kgmと距離近いですがcp要素はありません
※すれ違いあり(ちゃんとハッピーエンド)
※実際に存在する方のタグです。ご本人様とはなんの関係もありません。全て主の想像です。
※全て配信を追えているわけではないので口調や呼び方が違う場合があります。ご指摘していただけると嬉しいです。
※脅し、スクショで無断転載などはおやめください。
※ここまで読んでくださった方ありがとうございます。それでもokという方は下にスクロールしてください。
「ゔぅ、ぉえ、っ、」
最近吐き気が止まらない。食べたり食べ物の匂いを嗅いだりすると気分がすごく悪くなる。
「刀也さん大丈夫か?病院行ったほうがいいぞ?」
「うん、そうだね。明日行ってくる。」
流石に吐き気がこんなに続くのはおかしい、大変な病気だったら困るし明日朝1番で行こう。そうして今日は早く床についた。
「妊娠していますね。」
「は?」
「現在妊娠6周目です。」
「えっ」
頭の中が真っ白になった。
念の為大病院に行った僕は消化器科にかかることにした。検査をした後何故か産婦人科へ行けと言われ頭がはてなマークで埋め尽くされていた。
どういうことだ。
僕は男で女性がもつ赤子を授かるものなど持っていない。
「僕、男ですよ…ね?」
「はい。」
「じゃあなんで妊娠して…?」
「稀に男性でも妊娠できることがあるんです。剣持さんの場合、不定期に卵子ができる体のようです。生理が来ないのもその体の仕組みのせいでしょう。今まで気づかなかったのも無理もないです。お相手や心当たりのある人はいますか?」
いる。伏見ガクだ。僕が夜の営みをする人物は彼しかいない。きっと、この間初めてナマでシた時だ。
あの時はどちらとも興奮状態でゴムをつけることなんて頭になかった。
「かなり稀なことです。お相手の方とよくお話になってからまた来てください。母子手帳も渡しておきますね。」
医者から受け取った母子手帳を見ながら僕はだんだん現実を受け入れていった。
凄く嬉しい。早くがっくんに知らせたい。子供なんて絶対に望めないと思っていたから。
そうわくわくどきどきとした感情が湧いていた時、ふと思い出した。
【回想】
「刀也さん、体大丈夫か?」
久々のセックスだったためかなり激しめな行為をしてしまったがっくんは布団の中で僕を抱きしめながら心配してきた。
「がっくんがっつき過ぎ、絶対に腰死んだ。」
「ごめん、全然セーブできなかった。明日はなんでもするから許してくれとやさん。」
そんな見捨てられそうな犬の目をされると怒る気力もなくなってしまう。
「まぁ、僕も結構おかしくなってたし…いいですよ別に。」
「とぉやさん!!!!!!」
「やめろこっち来んな!」
「えぇ、ひどい。」
「一応掻き出したからお腹は壊さないと思うけど心配だな。」
「ちょっ、か、掻き、っ、恥ずかしいからやめてよ。あと僕はそんなにやわじゃない。大丈夫だよ。」
「ん~?刀也さん何想像したのかなぁ?さっき掻き出しただけで刀也さん2回もイッちゃったもんなぁ?」
「はぁっ?!やめろ!思い出させんな!!」
僕はじたばた暴れ始めた
「おわっ、落ち着け刀也さんもう言わないから!」
「そうですよ。もう二度と言わないでくださいよ。次言ってきたら殴るからな。」
「はいはい〜。」
でも、もし僕が子供が作れる体だったとしたらがっくんはどうするんだろう。
「がっくん」
「なんだ、とやさん?」
「もし子供ができるならがっくんはほしい?」
正直僕は「欲しい!」とがっくんが言うと思っていた。でも彼の返事は違った。
「いらないかなぁ。」
「え、なんで?」
「だって今の生活で俺は結構幸せだし子育てってかなり大変だろ?いつも家事やライバーの仕事でいっぱいいっぱいな刀也さんだからもっと忙しくなっちまうし。」
「そっか。」
嬉しいような嬉しくないような返事だった。
がっくんは僕が妊娠することを望んでいない。
じゃあ僕はがっくんに妊娠したことを伝えないほうがいいのかもしれない。でも僕は産みたい。せっかく神様が僕に与えてくれた大切で大好きな人との命だから。
「どうしよう」
悩みながら家路に着いた。僕が二十歳になったら同棲しようとがっくんから提案されて建てた一軒家。少し家に入るのが怖くなった。
ガチャ
家の扉を開ける
「とやさんおかえりー」
すぐに暖かい彼の声が聴こえてくる。
「どうだった診察?」
「あ、えっと…。」
言ったほうがいいのだろうか。でもそれでがっくんに嫌われてしまったらイヤだ。彼が望んでいないことを強制させたくない。
僕は偽ることにした。
「ただの疲れだって。薬飲めば治るらしいよ。」
「そっかぁ〜、病気じゃなくてよかったよ。」
「うん、あはは。」
それから僕はがっくんを避けるようになった。
感づかれないように仕事だとか打ち合わせがあるとか言って定期検診に行ったり、わざと寝坊してご飯を一緒に食べなかったり吐き気止めを飲んだりして悪阻の症状を消した。
「刀也さん今日も何かあるのか?」
「うん、ごめんね最近いそがしくて」
「全然大丈夫だぜ!気を付けて行ってきなよ〜」
真実を知らないがっくんに笑顔で見送られるのはかなり辛かった。
「はぁ、」
妊娠16周目、
最近少しずつお腹がはってきた気がする。
ゆとりのある服で隠せてはいるがもっと大きくなると無理がある。親にも他のライバーにも誰にも言えていないから相談も何もできない。
「今日は定期検診の後、ろふまお収録かぁ」
病院に行くといつもこう言われる
〝本当にお相手に言わなくて大丈夫ですか?〟
本当は言いたい、でも駄目なんだ。それでがっくんとの関係が壊れてしまった方が辛いし苦しい。
だから最後まで偽り続ける。でも産むためにがっくんとは離れなければいけない。いずれはさよならをしなければならない。せめてそれまでは一緒にいたいから。
検診でエコー写真を見せてもらった。
「これが赤ちゃんです。健康に育ってますよ。」
その言葉を聴くだけで頑張っていける。この子はちゃんと育っている。大丈夫だと僕に伝えてくれている。
「では◯月◯日にまた来てくださいね。」
「はい、分かりました」
検診後は事務所に向かう。今日は6本連続収録だから疲れるだろう。
「お母さん頑張るからお前も頑張ろうな。」
お腹に手を当ててそう呟いた。
「ろふまお塾、次回もお楽しみに〜!」
ようやく地獄の6本収録が終わった。
へとへとになりながら楽屋にたどり着く。
「もちさんめっちゃ疲れてるじゃん。珍しい〜。」
「確かに甲斐田より疲れてるやん。」
「ちょ、アニキ?」
「にゃはは、ごめん」
「剣持さん、少し休んでから帰りますか?」
「うん、そうする。」
「じゃあ俺この後配信あるから先帰るな〜。」
「僕も予定あるのでお先に失礼します!」
「お疲れ様でした。しばらく私はここで仕事しますね。」
社長に気を使わせてしまった。申し訳ないな。
「すみません社長。迷惑かけちゃって」
「いえ、全然大丈夫です。お疲れのようですね。顔色も少し悪いですよ?飲み物とか買ってきましょうか?」
「いえ、大丈夫で、ゔぅ、おぇっ、」
「剣持さん!?」
急に吐きそうになって座っていたソファーから崩れ落ちてしまった、と思ったら社長に支えられていた。
「ゔぅ、っおぇ、げほっ、」
「剣持さん、とりあえずこのビニル袋に吐いちゃっていいですよ。」
「いいです。悪阻なので吐き気だけです。」
あ。
「は?」
言ってしまった。間違えた。
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい
絶対に社長は僕が嘘をついても誤魔化しても分かってしまう。もういっそ言ってしまったほうがいいのか。
「剣持さん、悪阻ということは妊娠されていらっしゃるんですか…?」
「……。」
「無言は肯定とみなしますよ」
「そうです。僕妊娠しています。お腹にがっくんとの赤ちゃんがいます。」
僕は一通り社長に話した。
「そうだったんですか。これはおめでとうと言うべきなのでしょうか。」
「僕はおめでとうと言ってほしいけどそういう雰囲気じゃないんです。」
「え?伏見さんはこのことをご存じでは無いのですか?」
「はい。」
「何故?伏見さんならとても喜ぶのでは?」
「喜ばないです。がっくん、子供はいらないって言いました。っ、始めは降ろすという考えもありました。でも、でも!せっかく授かった大切な命を僕は無駄にっ、ひっぐ、したく、なくてぇ、でもがっくんにはっ、嫌われた、くないからっ、ずっと黙っ、て、、!」
視界が涙でいっぱいになって、まともに話せなくてもう意味がわからなくなってしまった時、ぐいっと手を引き込まれた。
「しゃ、ちょう?」
「すみません。伏見さんには後で土下座します。なので少しだけ、ね?」
どうやら僕は社長にハグされているようだ。いつもの雷ゴリラとは全く違う背中をぽんぽんと優しく叩く手、全身を包むようなぬくもり。
「剣持さん。よく今まで耐えてきましたね。もう大丈夫です。たくさん泣いてください。」
「っぅ、ぅあ、ひっ、しゃちょ、お、」
どのくらい泣いたのだろう。収録後に5時をさしていた時計の針はもう7時をさしている。
「落ち着きましたか?」
「はい、あっ、社長のシャツ濡れちゃってる。ごめん。」
あまりにも泣きすぎてしまったせいか社長のシャツに涙の跡をつけてしまった。
「構いません。これで少し剣持さんの気持ちが晴れたならこのくらい大丈夫です。」
「ありがとうございます社長。」
「いえいえ、貴方は私にとってろふまおの大切な末っ子ですからいくらでも助けますよ。」
「もう、子供扱いしないでよ。成人してるからね僕。」
「それでも私にとってはチビ同等です。」
「この雷ゴリラが」
「何だと全雑魚小僧。」
「「っ、ふはははっ!」」
なんか久々に笑えたかもしれない。社長すごいや。
「剣持さん。私からの提案です。伏見さんに話しませんか?」
「えっ、がっくんに?」
「はい、きっとずっと隠し通すのは無理だと思います。お腹もこれから大きくなってくるでしょうし、産むときだってどんな言い訳をするんですか?」
「そうですよね。バレるのも時間の問題ですね。」
やはり言わなければならないのか。
でもすごく怖い。本当に怖い。考えるだけで体が震えてしまう。すると
「もし受け入れてもらえなくても私達がいます。貴方はあまり嫌なことや辛いことを吐き出さない人です。たくさん頼ってください。」
頭を撫でながらそう言われた。
やめてよ、また涙出ちゃうじゃん。
「今日の社長、めっちゃかっこいい大人だね。」
「褒めても何も出ませんよ?」
「はははっ、」
ちょっと安心できたかも。
fsm視点
最近刀也さんの挙動がおかしい。
ろふまおの収録だとか打ち合わせだと言っているが明らかに俺を避けている。なにか自分がやらかしてしまったかと考えたが、思い当たることが何も無い。話がしたいのに全く時間が合わず話すこともできない。
「もしかして、浮気か?」
いや、刀也さんに限ってそんなことはない。自惚れ話だがかなり刀也さんは俺のことが好きだ。
絶対に配信ではしない「媚び」を俺の前では平然としてくるし、スキンシップや嫉妬も多い。俺としてはすごく嬉しいがだからこそ最近の行動が気になってしまう。
「今日、刀也さんろふまおの収録って言ってたよな。疲れてるだろうし迎えに行くか!」
仕事が終わった俺は刀也さんを迎えに行った。
「あれ〜?ガッくんじゃないすかぁ?」
「ふわっち!甲斐田くんもいるのか〜。」
「え、なんか酷くないですか、その言い方。」
「収録終わり?加賀美さんと刀也さんは?」
「あ〜、なんかもちさん結構疲れてたんで休んでから帰るって言ってて社長が付き添ってましたよ。」
「まじ!?二人とも楽屋にいるのか?」
「多分そうだと思います。僕達は配信あるので先に帰るところです。」
「そうなんか〜、今日午前から収録だったんだろ?お疲れ様だな。」
「「えっ?」」
「ん?」
どうしたのだろう。二人とも頭にはてなマークを浮かばせている。
「今日は午後からでしたけど?」
「え?刀也さんは午前からって言ってたぜ?間違えたのか?」
「いやもちさん俺より後に来たっすよ。」
なぜ?やはり俺に何か隠し事でもあるのか?
「……刀也さんに聞いてみるよ。じゃあお疲れ。」
「「お疲れ様です」」
「もちさんなんかあったのかなぁ?」
「てかもちさん最近太ったっけ?」
「急に何言ってるんですかアニキ。」
「ん〜?だってオーバーサイズの服着て太ってるの隠してるように見えたから〜。」
「幸せ太り?………まさか…」
「どしたん晴?」
「いや、なんでも無いです」
普段は歩いている事務所の中を走っている。時々スタッフにぶつかりそうになりすみませんと言いながら走っていく。なぜ俺に嘘をついているんだ刀也さん。俺に言えない隠し事でもあるのか?そう考えながら走っていると目的の場所に着いた。
ろふまおの楽屋の扉が少し開いていた。
そこには刀也さんが見えた。
「刀也さ……えっ、」
扉を開けて入ろうとした時、俺は目を疑った。
刀也さんと加賀美さんが抱き合っている。
「っ、なんで…?」
俺はそこに入れなかった。本当は入りたかった。でも「邪魔しちゃいけない」という考えが浮かんだ。刀也さんは加賀美さんのことが好きになったのか?二人は両思いなのか?もしかして刀也さんは俺の前で無理をしていた?でもなぜ言わなかった。好きじゃなくなったのなら素直に言ってくれれば良かったのに。だんだん怒りがこみ上げてきた。拳に力が入る。
「俺の刀也さんだろうが。」
自分でも驚くほど低い声が出たと思う。
俺は写真を撮りその場から立ち去り家に帰った。
「よし、行くぞ」
家の前まで来た僕は覚悟を決めてドアを開けた。
「がっくんただいま。」
………。
あれ?「おかえり」という声がない。
ベランダでも出てる?
「がっくん…?ひゃっ!」
恐る恐るリビングの扉を開けようとしたらがっくんが開けた。
「ちょっ、がっくんいるなら返事してくださいよ。びっくりしたじゃん。」
「……。」
がっくんは僕を見つめずっと黙っている。
「がっくんどうしたの?ちょっと大丈夫?」
「刀也」
「えっ、」
あまり聴かない呼び捨てに驚いてしまった。
「俺に何か隠し事してないか?」
「えっ、し、てないよ」
「本当か?」
「う、うん。」
「嘘つき」
今まで聴いたことない低い声があたりに広がった。たじろいてしまうほど怒りがこもっている声。
「刀也さん、加賀美さんのことが好きなんだろ。」
「は?」
「すっとぼけんなよ。最近忙しいとか言ってたのも加賀美さんとどっか行ってたんじゃないのか?」
「がっくん、ちょっと待ってよ。僕社長とは何もないって!」
「じゃあ、これはどんな言い訳するんだよ。」
「!」
がっくんはスマホの写真フォルダから一つの写真を見せてきた。
「今日、刀也さん収録で疲れてると思って迎えに行ったんだよ。そしたらっ、なんだよこれ!」
「っ、違うよ!僕は社長のこと恋愛的に好きじゃない!」
「このクソがっ!」
「ひっ、」
がっくんは僕の手首を強く引っぱりそのまま寝室へと進みベットに投げた。
「っ、がっくんやめて」
「うるさい黙れ!」
僕の上に覆いかぶさる彼の瞳は刺し殺してしまうほど鋭かった。
「怖いよがっく、んむっ」
いきなりキスをされる。逃げたくても両手をベットに縫い付けられているため逃げられない。
「んむっ、ふっ、んんっ、」
いつもの優しさを忘れたかのように手首を固定し乱暴にジャケットを脱がされる。これ以上は絶対にだめだ。お腹が見えてしまう。
「ほんとにやめろ!!」
僕はありったけの力を使ってがっくんのお腹を蹴った。
ドサッ、ガシャン
それと同時に今日使っていたバッグが衝撃で床に落ちた。中身が出ている。
「ッツ、痛た、は?」
「あっ、」
落ちたバッグを見れば母子手帳がとび出していた。
「刀也さん、これどういうこと…?」
がっくんが丁寧に拾う。僕はどうすればいいか分からなくなってしまい口を閉じた。
「……。」
「『母の氏名剣持刀也』妊娠…してるのか?まさか加賀美さんとの、」
「違う!!絶対に違う!!」
「じゃあ誰との子だよ!」
「お前だよ!!伏見ガクと僕の子供だよ!」
「は?」
沈黙が流れる。
がっくんが何も話そうとしなさそうだったから僕はぼそぼそと話し出した。
「体調が悪くて病院に行った時に分かった、今妊娠16週目です。安定期に入ったってとこかな。」
「でも、がっくん子供いらないって言ったでしょ。」
「は?」
今日何度目の彼の「は?」だろうか。あぁ、怖い。全部話すことがこんなに怖いとは思っていなかった。
「僕のこと振っても大丈夫ですよ。でも子供産むことだけは許してほしい。」
「ちょっ、刀也さ、「全然大丈夫です。がっくんには迷惑かけません。会いたくなかったら会いませんし、コラボとか嫌だったらもうしませんから。」
本当は嫌だよ。ずっと一緒に居たいしコラボだってずっとしたい、隣に立っていたい。でもがっくんが望むなら僕は受け入れよう。だんだん涙が込み上げてきてしまった。
「この家も出ていったほうがいいよね。鬱陶しいよね僕。」
そう言って僕がベットから出ようとした時、息ができないほど強く抱きしめられた。
「ちょっとがっくん、離し、」
「勝手に話進めるなよ!」
「え…?」
「刀也さん不安にさせて悪かった。ごめん。子供のこと、あれは本心じゃない。あの時は子供なんて望めないのが当たり前だと思ってたし、もしできたとしても刀也さんに負担掛かるのは事実だろ?でもできたならすごく嬉しい。」
「ほんと…?がっくん僕のこと嫌わない?赤ちゃん産んでいい?ここにいてもいい?」
「当たり前だろ。俺達の子供ずっと一人で守ってくれてありがとう。これからは俺も守るから。」
「うん、うん…!」
「……ということで、社長には多大なるご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。」
「いやいや、剣持さんそんなかしこまらなくてもいいですから。和解できて良かったです。」
「へぇ~、もちさん赤ちゃんおったんかぁ。」
「僕の感当たってましたね。」
後日僕とがっくんは産休のために事務所での手続きをし、社長へのお詫びを兼ねろふまおメンバーとおしゃべりをしていた。
「え、甲斐田くんなんで分かってたの?」
「あぁ〜、アニキがもちさん太った?って言ってたのと、差し入れオレンジ系のお菓子とか酸味があるものよく選んでたので…。後はもちさんの体から違う音が聴こえてたからですかね?」
「え怖っ、甲斐田くん怖っ」
「魔の研究してますからね、もちさんからちょっと人じゃない音したので」
「人じゃない音?まさか…。」
僕は顔が真っ青になった。
「はて?」
「はて?じゃないよ!産まれてくる時耳生えてたらどうすんのさ!」
「大丈夫だって〜、俺みたいな生き物は最初産まれてくる時は人間のような感じで産まれてくるから心配する必要はないぜ!実際にエコー写真とか問題なかっただろ?」
「うん、まぁそうだけど。ならいっか。」
ちょっと心配だな。
「そういえば性別は分かったんですか?」
「はい今日の検査で、男の子らしいです。」
「では男の子用の玩具用意しておきましょう。あと最近会社が乳児用品の生産を開始したので是非使ってほしいです。今度資料持ってきましょうか?」
「え、社長いいんですか?メーカーとか全然分からないからめっちゃ助かります!」
「わぁ〜、社長頼もしすぎやろ」
「お恥ずかしながら私、結構嬉しくてはしゃいでます。」
「「「「はははっ、」」」」
良かったみんなが受け入れてくれて。
〜おまけ〜
「!そうでした、伏見さんに土下座しなければ。」
「えぇっ?」
「あぁ〜…。」
「刀也さん何か知ってるのか?」
「えっと…。社長とハグしたことだと思う。」
「あぁ~、そんなことかぁ〜!」
「えっ?なぜ伏見さんがご存知なんですか?」
「実はあの時がっくんに見られてて…ちょっと一悶着あったんです。」
「俺はてっきり加賀美さんと浮気してるんじゃないかって思っちまって。」
「……切腹してきたほうがよろしいでしょうか。」
「いや大丈夫!大丈夫だから!!」
その後綺麗な土下座とめっちゃ高そうなお菓子が贈られた。
「ふぅー、重い…。」
同僚や家族への報告や、乳児用品を買ったりその他の準備をしたりしていたらあっという間に僕達の子は大きくなっていた。正期産に入ったのでがっくんは「いつ産まれてもおかしくない!」と言って一ヶ月活動を休止することになった。別にぎりぎりまで仕事しててもいいのに。まぁ心強いっちゃ心強かった。
「刀也さん大丈夫か?どっか変なところないか?」
「うん、大丈夫だから、三十分置きに言うのやめて。」
「いや心配すぎるから。」
心配し過ぎて1日に何十回もこう聞いてくるがっくん。鬱陶しいけど愛されてるから悪い気はしない。
「僕に似てのんびりさんだなぁ」
実は出産予定日は昨日だった。多少のズレがあることは知っていたが昨日は冷静沈着、泰然自若の僕でさえもはらはらしていた。なのにちっともこないので少し呆れてしまった。性格は僕似なのかな?
「準備は整ってるからいつ来ても大丈夫だぜ刀也さん!」
「あははっ、頼もしいパパだね。」
「そう言われると照れるな。」
プツンッ
「えっ、」
「?」
なにかが裂けるような音がした。
もしかして…
「がっくん」
「どうしたどやさん?」
「きたかもしれない」
「へ?」
「破水したかもしれない!」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
破水してから10時間が経過した。
男性妊娠は滅多に無く助産師の方も経験が少ないため何かがあっては大変という理由で立ち会い出産は出来なかった。俺はただ祈るしか無かった。
「無事でいてくれよ二人共。」
ーーーふぇっ、ふぎぇぁぁぁぁ!!!
産声がした。元気な元気な声が聴こえてきた。俺は気づけば助産室の前に走っていた。
助産師がドアを開けにっこり笑ってこう言った。
「元気な男の子ですよ!さぁ、奥さんの所行ってください!」
少し奥のベットには全身汗をかいて真っ赤になっている刀也さんと新しい命がいた。
「がっくんにそっくりだねぇ」
赤ちゃんの顔をぷにぷにしながら刀也さんは笑った。
「がっくん泣いてるの?」
「えっ、あっ、」
俺の顔は大きな涙の粒で溢れていた。
「ほらほらがっくん、僕達の子抱いてあげて。」
刀也さんから渡された小さな命は温かく元気に動いていた。顔は俺によく似ているが髪色は刀也さんの色だった。その姿に俺はまた涙が込み上げてきた。
「と、やさん。っ、ありがとう、な」
「もぉ、泣きすぎだよがっくん」
そんなことを言っていた彼の目が潤っていたことは言わないでおこう。
「そういえばがっくん、名前決まったの?」
「ん?あぁ、名前はーーー
大切な命end