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ねぇえもいがすぎるよー!! 青桃も桃青もいけるのでどっちの解釈でも楽しんじゃう🫶🏻️💓 全然駄作じゃないむしろ神作だよ!!前回のお話に引き続き世界観が好きすぎるー!🫵🏻🫵🏻💕💕💕
え?ん?神作すぎませんか?どうしてこんなにもいい作品がかけるのか謎でしかないんですが??あ、主様が神だからかな うんそうだな。フォロー失礼します!私のお墓はどこですか??(・ω・。)キョロ
前回のものの幼少期編です。すみません、ハート指定したにも関わらずとんでもなく駄作に成り下がりました。
桃青かと言われれば桃青だし青桃かと言われれば青桃って感じです。お好きな受け取り方でお楽しみください。
青:「ないこ、ないこ」
昼食後、自室の扉に手をかけた時その手に重ねるようにして動きを止められる。振り返るとにいさまがきょろきょろ辺りを確認しながら顔を寄せてきた。
桃:「にーさま?どうし、」
青:「今日先生が帰ったら俺の部屋に来て」
耳元で言われた言葉の意図が分からなくて首を傾げる。
桃:「とうさまに何かいわれたんですか?勉強なら、おれ、数学教えてほしいです」
青:「父様なら出張で昨日から居ないやろ。勉強は明日教えるわ。…今日は、誰にも言わずに俺の部屋においで」
内緒だぞ、と念押しのように言ってからにいさまは何事もなかったかのように自室に入っていった。
ーーー
堅い木の音が3回、自分の耳に届いてから空気に溶ける。
自室には扉が2つあって1つは廊下と繋ぐ扉、もう片方はおれの部屋とにいさまの部屋を繋ぐ扉だった。後者の扉の前で数秒待っているとゆっくりと開いてにいさまの藍色の瞳がおれを捉える。柔く目尻を下げおれの名前を呼ぶと続けて口を開いた。
青:「おいで」
言われるがまま着いていくと そこ座ってええよ とベッドを指さされる。言われた通り待っていると小ぶりな金属製の箱を持ったにいさまが隣に腰を下ろした。
青:「これ、探しててやっと手に入ったんよ」
口元を綻ばせてそう言うにいさまの 10歳にしては随分すらりとした手が彫刻風に浮き上がった文字をなぞる。周りに色々な種類の焼き菓子が描かれているからお菓子の箱なのだろう。
桃:「あ、もめんと、おぶ、はぴねすとぅー、ゆー…?」
青:「お店のキャッチコピーで『あなたに一時の幸せを』みたいな意味やな」
桃:「ふーん…」
こんなににいさまが喋るのをおれは知らなかった。このお菓子はそんなに美味しいのだろうか、思案しているうちに かこ、 という小さな音と甘い香りが広がる。
桃:「クッキー…の、詰め合わせですか?」
青:「うん。…これの、この味。これが欲しかったんよ」
そう言ってにいさまが指さしたのは正方形の箱の1番端っこに2つだけ入っていたクッキーだった。真ん中にキャラメルの丸があるだけのもので、他のものには花などが散らされているのに対して地味な見た目のもの。
桃:「そんなに美味しいんですか?」
青:「味は、覚えてないんやけど…」
母様が好きだったから そうにいさまが呟いたのが微かに聞こえた。
桃:「かあさま…」
言うと目頭が熱くなって鼻の奥がつん、と痛くなる。
もう2年も前のことだけど日に日に寂しさは増していってしまって、それを感じることも出来ないほど8歳にして多忙な日々を送っていた。
にいさまと違って口調が似通ってしまうほど長い時を一緒にいた訳ではない。それでも仕事の忙しい父に変わってあの人の分も、と言わんばかりの愛情をくれたかあさまのことが大好きだった。
慌ててぐっと下唇を噛んで涙が零れないように堪える。何とか波が収まった頃にいさまを見ればおれみたいな泣きそうな顔ではなくて、相変わらず優しい笑顔でクッキー缶を見つめていた。
にいさまは凄い。そんなの分かりきっているけれど、今ここにとおさまがいたらおれはきっと 男なのにいつまでもめそめそするな って怒られてしまう。けどにいさまはいつもかっこよくて、優しくて、なんでも出来るからとおさまに褒められるんだ。
にいさまが褒められてるとおれも嬉しい。胸を張って紹介できる自慢のにいさまだもん。
青:「ないこ、手出して」
桃:「はいっ」
青:「…っふ、w…ちゃうなぁ、それじゃハイタッチやん」
くすくすにいさまが笑う。自分の間違いに気づいて恥ずかしくなりにいさまの顔に向けていた掌を引っ込めた。
青:「ほら、手ぇ貸し」
今度はちゃんと 掌を上にしてにいさまに差し出す。焼き菓子が掌に置かれると甘みのある香りがいっそう強く感じた。
桃:「いい匂い…」
思わず口から漏れる。突然黙ったにいさまを不審に思って顔を覗き込めばびっくりしたような、泣きそうな。それでもどこか幸せそうな色んな思いがいっぱいいっぱいなような顔をして固まっていた。
桃:「にいさま…?」
青:「っぁ、あぁ、ごめんな、ぼーっとしとって…食べてええで」
桃:「はいっ!」
手の中のクッキーを口に入れた。ほろほろと周りが崩れたかと思えばキャラメルが無くならず長い間口に残る甘いお菓子。今まで食べてきたどの高級菓子よりも美味しく感じたそれを食べていた時のにいさまの横顔の意味はまだ分からない。
分かるとすればその場所には ただただ家族からの愛を欲していた2人がいたということ。あの場所にいたのは高尚な生まれのご子息ではなく母を亡くした悲しみを分かち合い愛し合う兄弟だったということ。
それさえ分かっていればこの先も2人で生きていけるだろうということ。
「ねえかあさま、いい匂いやね」
「?、はい!とおさまには内緒にすればええんねっ」
「ないこが夜更かしできるようになったらないこも一緒に食べたいなぁ」
花束いっぱいの愛情を。end