俺の世界は「君」だけだった。
「おいで、ご飯の時間だ」
「今日はお前の大好物、ハンバーグだぞ」
何をするにも、「君」がいた、いてくれた。
「ふっ、そう急いで食わなくても…、あ?」
「…もしもし…、ん、俺」
生まれた時からずっと、そばにいてくれた「君」。
「…、は、…」
「ま、じか…」
ご飯も、服も、住むところも。
全部不自由なく用意してくれた「君」。
「…、わかった…、あぁ、ありがとう」
「…」
「君」には感謝してもしきれない。
それほど俺の人生には、「君」がいた。
「…、ん?…あぁ、いや…」
「…なんでもねぇよ、気にすんな」
「ほら、さっさと食っちまえ」
だから俺からしてみれば、「君」はなくてはならない、大きな存在だった。
それなのに。
ウーウー…。
バタンッ!
ドタドタドタ!!
“!いました!被害者と思われる男性、発見しました!”
…??
“大丈夫ですか?怪我などはないですか?”
誰だ?こいつらは。
“こちら○○県警、××、男性の安全を確認。これより、一時保護を行います”
“長い間、よく耐えましたね。辛かったでしょう”
ケンケイ?イチジホゴ?
なんだかわからないが、嫌な予感はする。
すごく、嫌な予感が。
“…、容疑者の姿は見当たりません”
“くそっ、逃げたか…”
逃げた。
誰が?
分からない。
さっきからこの、急に家に入ってきたやつらは何を言っているんだ。
分からない、どういうことだ。
あぁ、こんな時「君」なら、すぐに教えてくれるだろうに。
“すみません、失礼ですが、両手を挙げてもらっても?”
「…、?」
“ありがとうございます。…、ふむ…”
ぺたっ、ぺたっ。
「っ!」
ぞわわわわわわ。
な、なんだ。
何でこいつはいきなり俺の体を触ってきたんだ。
気持ち悪い。
俺の体に触っていいのは、「君」だけだって言われてたのに。
嫌だ、気持ち悪い。
触るな。触るな。
「…っ、あ、あの…!」
「さわら、ないで」
“!…そうですね、すみません”
“…、身体に目立った外傷なし”
ガイショウ。
またわからない言葉。
おんなじ人間のはずなのに、さっきから一つも言っていることが理解できない。
あぁ、「君」よ。
早く帰ってきて、こいつらをどうにかしてくれ。
この「俺たちだけの空間」に、ずけずけと入ってきたこいつらを。
どうか、早く。
“…!警部!容疑者のものとみられる書置きが…!”
どくんっ。
不意に心臓が大きく高鳴る。
どくんっ、どくんっ。
なんだ…、なんなんだ…。
…すごく、嫌な予感がする。
さっきの比にならないくらい、強烈に。
だめ、だめだ。
“読み上げろ”
嫌だ、やめろ。
“はっ!…、えー…”
嫌だ、聞きたくない。
耳をふさげ。
そう脳が指令するが、体はピクリとも動かない。
動けない。
『今までありがとう、大好きだ』
“…、と”
どくんっ、どくんっ。
「…っ、は…、は…っ」
分からない。
何で今のとこだけ、「君」の声で聞こえたんだ?
分からない、分からない。
なぁ、教えてくれ。
“…!どうしました!大丈夫ですか!”
どくんっ、どくんっ。
「は、…ん、っは…」
分からない、何もかも、すべて。
なぁ、教えてくれ。
この人たちは一体、誰なんだ?
さっきから何を言っているんだ?
なぁ。教えてくれよ。
いつもみたいに、今まで通りに。
仕方ねぇなぁって笑いながら。
俺に全部、教えてくれ。
どくんっ、どくんっ、どくんっ。
「はっ、はっ、ふ、ぁっ」
“!警部!被害者の様子に異変が!”
俺の世界の全部は、「君」でできているのに。
「君」が教えてくれないと、何もわからないのに。
なぁ、…なぁ。
教えて、くれよ。
“__…、それでは次のニュースです。”
“本日午後一時半ごろにて、○○県のマンション内で監禁されていた男性、…ルフィさんが発見されました。”
“今回の出来事は19年前、当時ルフィさんが0歳だったころに起きた「ルフィちゃん誘拐事件」と関連しており、実に19年ぶりの進展となりました。”
“警察の調べによりますと、ルフィさんの体に目立った外傷はなく、極めて健康体だったとのことです。”
“しかしその一方で、「長期間にわたる監禁によって精神がかく乱している。容疑者に対して異常な信頼を抱いており、非常に危険な状態だ」、と述べています。
“容疑者は未だ見つかっておらず誘拐に加え拉致監禁の容疑も含め、改めて今後も捜査を続ける、との方針だそうです…__”
生まれた時からずっと一緒だったから。
もし君が犯罪者だったとしても。
俺にとっての世界は、「君」だけだ。
「俺も、ずっと大好きだ」
ざっざっざっざっ…。
「は…、は…」
「っ、…はっ、はっ…」
「…」
「いつかまた、絶対に」
「迎えに行くからな、ルフィ」
ルフィくんと誰かの誘拐監禁話。
年齢、好物、性格操作しまくりました。
はは。
今回の話は珍しく、特定のカプ要素はありません。
なので、「君」のところはご自身のお好きなキャラを当てはめてお読みください。
ロールが好きならロー君とか、ゾロルが好きならゾロ君とか。
ちなみに私はサンジ君で想像しながら書きました。
彼は絶対メンヘラだという偏見からです。
…え?それならサンルじゃないのかって?
まぁまぁまぁ。
ね。
では本日はこの辺で終わりとしましょう。
リクエストは、まぁ、はい。
ぼちぼちと…。
あは。
ではまた👋
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