最後のまとめにひろぱ視点で。
「本当に迷惑かけてごめん!許してください!」
そう言って頭を下げる元貴のつむじが見える。
「…体調はもう大丈夫なの?」
「ちゃんと寝て、ご飯食べたらすぐに復活した」
そう言って気まずそうに上目遣いで俺の顔を見てくる元貴に俺は大きなため息をつく。
「それで、涼ちゃんとは仲直りできたんだよな?」
「うん。ちゃんと涼ちゃんと話して正式に恋人同士になりました。今回は本当に色々迷惑かけてごめん」
ちょっと照れながら幸せそうに笑う元貴を見て一安心した。
「まぁ、今回は俺も対応の仕方間違えたトコもあったしさ。無事に落ち着いてよかったよ」
そう言って笑った俺に元貴もホッとしたような顔をする。
「それにしても、俺と涼ちゃんになにかあると勘違いするなんて、相当頭おかしいだろ。そんな精神的に不安定だった?」
「う〜ん、ここしばらく涼ちゃんとの微妙な関係にモヤモヤしてたトコ2人の様子が変だったから…そこにキスマークの追い討ちかな」
「って言うか、俺は普通に女の子が好きなの!なんで涼ちゃんとそういう事になると思うんだよ」
俺は思いっきり顔をしかめてみせる。
「最初元貴と涼ちゃんがそういう関係かも?って思った時だって、本当にびっくりしたんだからな!」
「まぁ、そりゃそうだよね」
目線をそらしながら元貴が苦笑する。
「お前さぁ、昔から男が恋愛対象だったの?」
「えっ?いや、男とか女とかあんまり気にしなかったかな?好きになったら好き!…みたいな?」
「…知らなかったよ」
「だって実際女の子とも付き合ってたし、わざわざ言う事でもないかな、と」
「まぁ、確かに俺にせまってこない限りどっちでもいいけどね」
「うん。若井なら絶対そう言うと思ってた」
フンっと鼻を鳴らしながら答えた俺に、元貴はニヤリとした笑顔を向けてきた。
「若井もさ。俺と涼ちゃんの始まり聞いてるんだろ?」
俺、最低だよな。そうつぶやいて元貴は遠い目をしながら思い出すように話し出す。
「あの時の俺はもう限界ギリギリで…。怒られても、はげまされてもどっちでも弾け飛んでたと思う。でもさ、涼ちゃんはそんな俺を「大丈夫だよ」って何も聞かずただ抱きしめてくれたんだ」
あの当時のつらそうな元貴の顔が思い浮かぶ。
「涼ちゃんがいたから俺はあの時期を乗り越えて今ここに立ててる」
元貴は目を閉じて噛み締めるように言う。
「元貴…」
「涼ちゃんは俺にとって誰も代わりのいない大事な人なんだ」
そう言いながら元貴は見た事がないくらい安らいだ顔でほほ笑んだ。
「なら、ちゃんと大事にしろよ」
「うん。やっと正式に恋人になったんだし、これからは遠慮せずに大事にするつもり」
そう言っていたずらっぽく笑う。
「若井、あの時涼ちゃんを助けてくれてありがとう」
「別にお前のために助けたわけじゃないよ。涼ちゃんは俺にとっても大切な友達で大事な仲間なんだから当たり前だろ」
「その後も勝手に勘違いして暴走して、最後にはぶっ倒れて心配までかけて…。なんか自分で言ってて情けなくなってきた」
がくりと肩を落とした元貴にちょっと吹き出しそうになりながら肩をポンポンと叩いてやる。
「まっ、すんだ事だしもういいじゃないか。気にするなよ」
「お前、ムカつくくらいいい男だよな」
じっとりとした目で見てくる元貴に今度こそ笑ってしまった。
「そんな俺より涼ちゃんはお前の方が好きって言ってるんだろ?それでいいじゃないか」
「だってさぁ、涼ちゃん俺の事かわいいって言うんだ。『かわいいは最強』なんだってさ。かわいいってなんだよ…かわいいのは涼ちゃんの方だろ」
そうブツブツつぶやく元貴は確かに『かわいい』だ。
「あんまりウジウジした事ばっかり言ってると俺が涼ちゃんもらっちゃうぞ」
あの時と同じセリフ。
「ふん。取れるもんなら取ってみろよ」
元貴は鼻で笑いながら自信ありげにそう答える。
…ああ、もう大丈夫だ。そう思えた。
「まっ、2人が喧嘩するとバンド活動にも影響するからなるべく仲良くやってくれよ」
「もしそうなった時は『いい男』のひろとくん、仲裁お願いします」
笑いながら上目遣いで見てくる元貴にこちらも笑顔になる。
「ばーか。それくらい自分らで解決しろ」
「え〜、いいじゃん。冷たいなぁ」
そのまま掛け合い漫才のような会話が続いていく。
こんな平凡で幸せな毎日がずっと続きますように…。
今度こそ終わりです。
とてつもなく長い話を最後まで読んでくださってありがとうございました。
自分でもちょっとホッとしてます😅
コメント
2件
本当に素敵なお話、ありがとうございました✨ そしてお疲れ様でした🥹 私の中で本当に大好きなお話です! 毎日更新して下さったので、本当に生きる糧になっていました🤣 また次のお話、楽しみにしています♥️