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「アオちゃん、いつになったら僕を好きって言ってくれる?」
僕は彼女の動かなくなった右手を優しく握り、問う。
「私別に茜くんのこと好きじゃない…。」
口先ではそう言うけど、顔を赤らめてるしバレバレなんだよなぁ…。
会長、源後輩の家に集まって花火をしている夏の日のこと。僕、蒼井茜は幼馴染の赤根葵と2人で過ごしていた。
「茜くん、ごめんね…」
アオちゃんはしきりにそう僕に呟くけれど、僕は彼女には何も怒ってなどいない。
「アオちゃん、僕は好きな子に対して怒ったりなんてしないよ?」
「…うん。」
やっぱり、まだ少し気まずいみたいだ。僕は場の空気を和ませようと、スマホに山吹の事故画を表示してアオちゃんに見せた。
「見てよこれ、山吹のやつ凄い顔してるでしょ。」
「ふふっ」
アオちゃんが笑った!僕は嬉しくて、何枚も何枚も写真フォルダに入っている写真を彼女に見せる。
「あ、ハムスター…かわいい。」
「ハニ太郎の写真もあるんだね。」
「わ!これ美味しそう…」
アオちゃんが段々と笑顔になるのが幸せでたまらない。
「え、茜くん?」
僕が友達に撮られたキメ顔写真。紛うことなき黒歴史だ。
「わ”ー!!見ないで!!」
僕はスマホを彼女から奪おうとするも、アオちゃんは僕にそれを渡そうとする素振りすらない。
「私、今の好きだよ。」
「え…?」
好きっていうのは…写真のことだよな、うん。と自分に言い聞かせ、彼女からスマホを奪い取るのはやめた。
「あれ、このフォルダなに?」
彼女はそのフォルダを開く。
「えっ、それも見ないで!」
「茜くん…。」
フォルダの中には、アオちゃんの写真がずらりと並んでいた。一番見られたくないものを見られてしまった…。最悪だ。
「ごめんねアオちゃん、すぐ消すね。」
「…やだ、消さないで?」
まさかの返答に口がポカリと開いてしまった。なぜ?
「茜くんってほんとに…私のこと好きなんだね。」
「もちろんだよ!僕はアオちゃんのことが本当に好きなんだ。だから…」
ここでガツンと決めなくてどうする。何か彼女にクリティカルを与えられる言葉はないだろうか。
「だから?」
長いまつ毛を拵えた、大きく可憐な瞳が僕を見る。その顔に胸を思い切り打たれてしまうのだから。
「…だから僕、アオちゃんがいつだって隣にいてくれなきゃだめなんだ…。」
「アオちゃんがいなくなった時、僕すごく怖かったんだ。」
こんな、弱々しいことを言いたかったんじゃないのに。なのに、僕の目からは大粒の涙が溢れ出して止まらない。
「茜くん…」
彼女の声が僕の耳をくすぐった。
「私はもう、どこにも行かないよ。
ずっと茜くんの隣にいる。」
「え、アオちゃん、それって……」
告、白…?
「ほら皆の所に戻ろう。きっと待ってるよ」
彼女は表情ひとつ変えず、僕の前から姿を消してしまった。
茜くん、やっぱり私のこと好きなんだな…。
「私も好きって言えばよかったな…。」
でも、この気持ちを伝えるのはまだ先。
茜くんに、本当の私を全部知ってもらってから、かな?