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ナギサノサナギ
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五月下旬。
教室の黒板には、大きく「体育祭」の文字が書かれていた。
「今日は体育祭実行委員を決めます!」
担任の声に、教室がざわつく。
「やりたい人ー?」
もちろん、すぐには誰も手を挙げない。
「じゃあ推薦で。」
その一言で、一気に嫌な空気が流れた。
「マナやれよー!」
「いやいや無理やって!」
「伊波も向いてそう!」
「俺?」
突然名前を呼ばれたライは少し驚く。
「伊波、真面目だし仕事できそう。」
「確かに。」
クラスのみんなが頷く。
ライは苦笑しながら頭をかいた。
「俺でいいなら。」
その瞬間――
(ライくんが実行委員……。)
マナの胸が少し高鳴る。
(……一緒にやりたい。)
でも、自分から立候補なんてできるはずがない。
そんなことを考えていると、
「じゃあもう一人は?」
また教室が静かになる。
「緋八とか?」
「えっ!?」
急に名前を呼ばれ、マナは飛び上がる。
「緋八なら伊波と仲いいし!」
「最近ずっと一緒にいるもんな!」
「そうそう!」
教室中からそんな声が飛ぶ。
「ち、違っ……!」
顔を真っ赤にして否定するマナ。
するとライが小さく笑った。
「嫌じゃなかったら、一緒にやる?」
その優しい一言に、マナは心臓が跳ねる。
「……う、うん!」
こうして二人は体育祭実行委員になった。
⸻
放課後。
実行委員会が始まる。
他クラスの委員も集まり、競技の準備や当日の流れについて話し合いが進んでいく。
「この資料、クラス分配ってもらえる?」
先生が資料の束を渡した。
「はい。」
ライはすぐに受け取る。
「緋八、半分持つ?」
「え、ありがとう!」
二人で並んで資料を運ぶ。
廊下を歩きながら、マナは少しだけ笑った。
(こうやって二人で歩いてるだけで嬉しいな。)
ライはそんなマナの横顔をちらりと見る。
「楽しそう。」
「えっ?」
「なんか今日ずっと笑ってる。」
「そ、そんなことない!」
慌てて否定するマナ。
(ばれてる!?)
ライはくすっと笑った。
「楽しそうならよかった。」
その笑顔に、また胸が苦しくなる。
⸻
数日後。
体育祭の練習が始まった。
「集合ー!」
先生の笛が鳴る。
リレーのメンバーが集まる中、
「ライくん、リレー出るんや!」
マナが声をかける。
「うん。星導に押し切られた。」
「絶対速いやん!」
「どうかな。」
ライは照れくさそうに笑う。
一方のマナは、学年種目の大縄跳びに出場することになっていた。
練習中。
「せーの!」
何度挑戦しても縄に引っかかってしまう。
「あー、ごめん!」
マナが申し訳なさそうに頭を下げる。
「大丈夫大丈夫!」
クラスメイトは励ましてくれるものの、マナは少し落ち込んでいた。
休憩時間。
一人で水を飲んでいると、
「緋八。」
聞き慣れた声がした。
「ライくん。」
「気にしすぎ。」
「でも俺ばっか引っかかって……。」
ライは少し考えてから言った。
「練習なんだから失敗して当たり前。」
「……。」
「本番までにできればいいじゃん。」
その言葉は、不思議なくらいすっと胸に入ってきた。
「ありがとう。」
自然と笑顔が戻る。
「その顔の方がいい。」
ライが何気なくそう言う。
マナは一瞬固まり、耳まで赤くなった。
(その顔の方がいいって……。)
(反則やん……。)
⸻
その日の帰り道。
星導がライの肩を軽く小突く。
「最近さ。」
「ん?」
「緋八とよく一緒にいるね。」
「隣の席だし。」
「それだけ?」
ライは少し考える。
「……一緒にいると楽なんだよ。」
「ふーん。」
星導は意味ありげに笑った。
「気づいてないの、ライだけかもな。」
「何が?」
「いや、なんでも。」
そう言って先に歩いていく。
ライは首をかしげるしかなかった。
(……何のことだ?)
一方その頃。
マナも友達と帰りながら、今日の出来事を思い返していた。
「ライくんに励ましてもらえた……。」
思わず頬が緩む。
友達はそんな様子を見て苦笑する。
「もう完全に恋してる顔。」
「……否定できへん。」
初めて、自分の気持ちを友達に認めたマナ。
その恋はまだ片想い。
けれど少しずつ、二人の距離は確かに近づいていた。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。 第4話、読ませてもらいました。 体育祭実行委員っていう、めっちゃ青春な設定の中で、二人の距離がちょっとずつ近づいてく感じがすごく伝わってきました…! ライくんの「その顔の方がいい」、あれ反則ですよね。マナの気持ち、すっごくわかる…。 最後にマナが「否定できへん」って自分の恋を認めたところ、胸がぎゅっとなりました。 まだ片想いだけど、この距離感がじれったくて愛おしいです。 続きも気になります…!