こちらは、まぼえむさんの楽曲、「奇例事」のストーリーを題材とした小説です。主の妄想も入っております。
66がくを含みます。苦手な方はここで読むのを辞めてください。
監禁要素などもあります。
なかなか際どいです。()
「おはよう。」
いつものように、“彼”に挨拶をする。
「おはよう」
“彼”も同じように言葉を返してくれる。
扉越し、いつもと同じような風景。
おはよう、なんて本当は今が朝なのか真夜中なのかは分からない。
この部屋には、窓もなくて、光が届かないから、分からない。
とにかく、今起きたからおはようと言った。それだけ。
〈ガチャリ。〉
鍵の開く音。その少し後に、“彼”は部屋の中に入って来た。
「おはよう──がくぽ。」
「ロロも。おはよう。」
彼、ロロは、僕の親友であり、恋人だ。
ロロが僕に近付くにつれ、彼の足元でジャラジャラと音がした。
それは、僕の足に着いている足枷の鎖の音だった。
そして、僕の目の前に来ると、ロロは僕をそっと抱きしめた。
僕も彼の背に手をまわす。
心做しか、僕を抱きしめる腕に少し力が入った気がする。
これが、僕達二人の朝だ。
それが終わると、移動のために僕の足枷を外し、リビングで朝ご飯を食べる。
─そう、僕は監禁のような行為をされている。
まぁ、監禁によく似た同棲、とでも言ったところなのだろうか。
今日はロロの機嫌が良いようで、抱きしめる時も随分と優しかったし、微笑んでいる。
理由を聞くと、どうやら最近仕事が上手くいっているらしい。
彼は、美容師をしている。
「んじゃ、そろそろ行ってくるから。」
そう言って、ロロは食器を片付けると外出の準備をし始めた。
「今日はどのくらいになる?」
「まぁ、いつもの時間帯くらい。最近は店の閉店時間自体が早くなってるから。」
「そっか。行ってらっしゃい。」
玄関でその背中を見送った後、部屋の掃除を始めた。
ロロは生活のためのお金を稼ぐために平日は仕事をしている。
僕も一度家を支えるために働きたい、と言ったけれどもダメだと言われた。
家事は、ご飯は朝はロロが、昼と夜は僕が作っている。
それ以外は基本的に、家を出ることが少ない僕がしている。
「…あれ、これ、何だっけ。」
見つけたのは、リビングの端ちょこんとある小さなテーブルの上に写真があることに気付いた。
「そうだ、大学生の時…同棲したての頃だったっけな。部屋で撮った写真…」
なつかしい、と思いながら僕はそれを見ていた。
ふと、自分が泣いていることに気付いた。
「あぁ…もしかしたら、」
『あの頃の自分が、羨ましかったのかもな…』
少しの間、その写真を眺めていた。
その写真に映る僕とロロは、二人とも笑顔だった。
あの頃は思いもしなかっただろう。
相手の抱いていた感情に気付かず、こんなことになるなんて。
いつの間にか、自分がどのくらい愛されていたか、
相手がどのくらい嫉妬をしていたか。
「にしても、幸せそうだなぁ…」
僕は、写真があった場所に写真をそっと戻した。
〜END〜
コメント
2件
「奇例事」めっちゃ好きです! ゑ、神すぎません? 本当に尊死できる…。
はい。また新たな66がくを生み出してしまった。 思い立ったが吉日、ですよね!? ちなみに、本垢でも一度紹介しましたが、この小説の元になったものはまぼえむさんの「奇例事」という曲です。 是非聞いてみてください。私はめっちゃ大好きです。