異魚天がアレクシスと向き合った瞬間、全身が緊張を帯びる。一歩を踏み出すたびに、部屋に漂う圧力が増していった。異魚天は冷静にアレクシスの動向を観察している。
アレクシスは、ただ一度だけ目を閉じ、深く息を吸い込んだ。その瞬間、彼の周囲に空間が歪むような気配が広がる。
「過去の契約、か。」
アレクシスの声が低く響く。目には意志が宿っている。彼の手が動き、目の前の空間に波紋が現れる。
その波紋が広がり、乱反射する。その光の中から、ゆっくりと影が浮かび上がった。
「龍神陛下の養子、再現。」
その言葉とともに、部屋の空気が一層重くなり、光が強くなった。アレクシスの手のひらから放たれる力が、過去の契約を呼び起こす。その契約が結ばれた瞬間、まるで時間が逆行するかのように、過去の出来事がこの場に再現されていく。
そして、光の中から現れたのは――
「我が名は、リュウゼン。」
背筋を伸ばした青年が現れた。その顔は、龍神の養子として名を馳せた者。瞳は不気味に輝き、空間が揺れる錯覚を感じる。
異魚天は一瞬、その存在をじっと見つめた。その瞳が言葉を紡ぐ間、アレクシスは冷徹に微笑んだ。
「これが私の契約の力だ。」
リュウゼンは一礼をし、アレクシスの命令を待つ。無駄な動きがなく戦士のようだ。目は冷徹で、異魚天にじっと注がれている。
「さあ、異魚天。」 アレクシスが言った。「お前の選択は、過去の契約を超えることができるか。」
異魚天は少しだけ目を細めた。そして、刀を握る手に力を込める。
「契約…過去に縛られるのはお前だけだ。」
異魚天の目には、すでに決意が宿っていた。彼の足元が軽く震え、刀を抜く。その瞬間、彼の周囲に渦巻くような気配が一気に広がり、部屋の空気が一変する。
アレクシスは、再度冷徹に微笑んだ。
「その意気や良し。」
次の瞬間、激しい戦いが始まった。
リュウゼンが一歩踏み出し、その力が爆発的に広がった。異魚天もそれに応じて、一気に前進し、刀を振り下ろす。
刃が交わる瞬間、音もなく空間が震える。