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午前1:30一定のリズムを奏でる扇風機の音と
忙しない蝉のなき声
暑苦しい部屋に響く耳障りに鳴くカラスの声と
何十匹もの鳥の群れ
それがなにを意味しているのかわたしには興味すらなかった
8秒後。
脳に響くようなけたたましい音と共に
激しい揺れとガラスの割れる音
外からは叫び声焦げ臭い匂いサイレンの音慌ただしい足音と悲鳴
母親は妹を守るのに必死で父親は残業中
激しく揺れる中玄関へ走り戸を開け
テレビをつけ父親に電話するが繋がらない水が出ることを確認し
わたしはマンションの手すりから身を乗り出し
地震だ戸を開けろと叫ぶ
地震が納まった瞬間自分の階の全部のチャイムを鳴らし寝ている人を起こす
震度は5強
陸上部で良かったと初めて思った瞬間だった
足が重いとか走りにくいとかそんなことはどうでもよかった
揺れが収まったと思った瞬間また激しく揺れ始めたさっきとは違い立つことすらままならない
死に物狂いで手すりに掴まり避難所は市役所と
小中学校だと叫ぶ
これで誰かの命を救えたならそれでよかった
家の中なら大丈夫だと思った思いたかった
また揺れが収まって母親と妹を連れて避難しようと部屋に戻った時
母親が居た場所には食器棚が倒れていた
薄らと私の名前を呼ぶ母親の声と妹の泣く事もままならない呻き声
私1人では持ち上げられるはずのない食器棚を必死に持ち上げようとしてでも出来なくて
そんな私に母親は避難所へ行けと言う
家族をほって自分の偽善を優先したわたしに生きろと言う母親の言葉と妹の浅い呼吸
わたしは避難所に行くしかなかった
階段を降りている時赤ちゃんを抱いた女の人に、男の人に色んな人にお礼を言われた
「君がいなきゃ寝たまんま死ぬとこだったありがとう」
「あなたの声掛けがなかったらどうすればいいかわからなかったありがとう」
わたしは偽善者なのに大切な人すら守れないのに
涙が止まらなくてなにが正解でなにが間違いとかあの時どうすればとか頭の中がぐちゃぐちゃで避難所に着くまでずっと涙が止まらなくて
結局わたしは1人になった
父親は帰りの電車で地震に合い車両が転倒して亡くなり母も妹も助からなかった
あの時なんでもっと母親に気を配れなかったのかなんで大丈夫だと思っていたのかずっと妹の声が忘れられない
色んな人があなたは悪くないと言うけどどうしてそう思えるのかがわからない
近くにある命と遠くにある命
ううんどっちも近くにある命だった
全部を抱え込むことは助ける方法はなかったのだろうか
もしあの時母親と妹を連れて外へ出ていたら
いやこんなことを考えても意味がない
どう頑張っても私はわたしを殺せないから