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長い月日は心を溶かす
「…もう起きてたんや。早いな。相変わらず。…ってそれ。」
「あぁ、行くことにした。もうろくに外にも出てないし。諦めがついた。」
さっきまで眠そうに目をこすっていた氷織が目を見開いて俺を見る。
「…そっか。頑張って。…でも何で今日なん?急すぎるやろ。」
氷織には言ってなかった。いや言わない。
今日は俺と凪が付き合って3年目の記念日だ。
諦めは凪に対して。そしてもう1つ。
自分の人生に対して。
「…なんで。なんでいるんだよ。」
ここからはこの話の元ネタとなっている「泣いているのは君のせい」の5話に詳細が書いてあります。
そちらをご覧下さい🙇♂️
久しぶりに堂々と病院に来て見る凪の表情はやっぱりムカつくほどに綺麗だ。
儚く消えてしまいそうなほどに弱っている。
「…玲王。」
父さんの言葉を遮って頷くと俺は車に乗り込んだ。
どうかしていたらしい。
俺は。
「…潔ッ!凪が…凪が目覚めたって!」
「あぁ、けど面会はできない。凪が面会を望んでないんだ。家族さえも拒否してる。」
「…やっと手術ができるんだよな…!」
「うん、できる。明日を予定してるらしい。」
「良かった…ほんとに良かった…」
目を伏せて心の底からほっとすると同時に潔が俺の手を取った。
「凪は1人で闘った。愛する人に会えなくて、手を握ってくれる人もいなくて。なんであいつが面会を拒否してるか。お前は分かるんじゃないのか?」
潔の言葉が重くのしかかる。
俺が逃げてたことを凪は知らない。
このまま話さなければ凪と俺はまた戻れる。
弱い俺を見られずに済むはずだ。
それで…いいのか?
「これから凪誠士郎さんの緊急手術を行います。面会室でお待ちください。」
看護師さんはそれだけ告げると走って行ってしまった。
凪の手術は複雑だ。
通り魔に刺された箇所が肺だった為に穴が空いている。
今までは無理矢理チューブで酸素を送り込んでいたが痩せたせいで穴も広がった。
チューブを外して1時間以内には肺を塞がなければ呼吸困難で…なんてこともあるらしい。
ただ手に力を入れて願う方しかできない。
凪はこんな俺を起こるだろうか。