カランカラン…
軽やかなベルの音と共に床を踏む革靴の音。
「……ぉぃ……お…」
周囲の人がざわりと騒がしくなる。
中には自分をみてきゃあ、と黄色い声を上げる者もいる。
そんな中で俺はカッコよくウィンクを……
「おい!いい加減起きろやボケッ!!」
「ぶわぁおっ!?な、なな何!?」
「朝や、朝!!ったく…はよ準備しろ!」
「ぬぁぁあっ!?もうこんな時間!?」
慌てて2段ベッドの上段から飛び降りて、制服に着替える。
ドタバタと慌ただしく準備を済ませてから、トーストを口に突っ込んで寮を飛び出た。
「ん〜!ひょうはんおあはへ!!」
「早くそれ食え…まったく…」
「むぐっ…いつも助かるわ〜!」
「毎朝お前を起こしに行く俺の身にもなれ」
へらりと笑顔を返すと、きょーさんは呆れたように笑った。
しばらくして、最近ようやく見慣れてきた、贅を凝らした華やかな建物が見えてきた。
あれは魔術師養成機関【近海】口頭魔術が基本となった現代では魔術を習う事は当たり前のこととなっている。
「ぁーぁ…めんどくさぁーい」
ぽつりと空を見上げながら呟いた。
〜
教室に入ってすぐに見慣れた顔に挨拶をする。
「レウもコンちゃんも、おーはよ!」
「おはよー」
「おはよ〜う」
にっこりと笑った2人の笑顔にほっとした。
その時、教室の各方面からクスクスと忍び笑いが聞こえてきた。
「見て、劣等生4人組…!」
「よく来られるわよね…」
「同じ人間として見てられないぜ…」
「はっ、これだから庶民は…」
悪意のある言葉達に4人揃って少し俯く。
俺たち4人には共通点があった。
それは、庶民であるという事。
貴族が8割を占めるこの学校では庶民はストレスを発散する的でしかない。
さらに庶民である俺たちは、貴族である彼らと違って、魔力量も魔力を操る技術も全てにおいて劣っている…だから【劣等生】…
抵抗したところで悪とされるのはこちらだ。
「…そ、そういえばさ、今日は実技でしょ?どこのダンジョン潜るんだろうね!」
テンションを上げてにっこりと笑った。
しょうがない…いつもの事だから。
俺達は庶民なんだから、貴族には逆らったらいけないルールなんだから。
「…そうだね!どこだろう…?」
「あんまし危険度は高くないやろ」
「油断してると危ないよぉ?」
入学2年目の実技はダンジョン攻略。
攻略、といっても内容は結構単純なもの。
危険度の低い、過去に攻略済みのダンジョンに潜り、そのダンジョンにのみある物体や生物をここまで持ってくる事。
ダンジョンとは、ある年に発見された、いわゆる【危険区域】未知の生物や植物、文化に満ちているそこは、人々を魅了した。
その結果、ダンジョン攻略が始まったのだ。
「班員のリーダーはダンジョンの行き先を提示したプリントをこの後取りにくるように!行き先はランダムだから、文句を言った場合は成績を減点しておく!」
ハキハキとした声をいつも通り聞き流す。
きょーさんは俺と同じく眠そう。
レウさんとコンちゃんは先生の話を真面目に聞いているらしい。
一段下にある2人のつむじを眺めながらぼんやりしていれば、かったるい朝礼なんてあっという間だ。
「やぁ、劣t…らっだぁくん」
朝礼が終わり、しばらくするとクラスメイトに声をかけられた。
「…なんですか……?」
「朝礼の話を聞いていなかっただろう?」
「……?」
「班員のリーダーは行き先のダンジョンが提示されたプリントを取りに行かないといけないのさ…朝礼の後に」
「ぇ…」
しまった…聞いてなかった…
今から行っても間に合うのか…?
チラリと時計を確認して少し焦っていると、クラスメイトはニコリと人の良い笑みを浮かべた。
「そんな事だろうと思って、僕がプリントを貰っておいたよ。受け取ってくれ」
「ありがとう、ございます…」
この腐ったクラスの中にもこんな親切な人がまだ残ってたんだ……意外かも…
「…危険度D、【青鬼の館】…」
プリントを眺めてぽつりと1人呟く。
写真には鬱蒼と茂った木々の中に、ひっそりと洋館が建っていた。
「……ここ、本当に危険度Dなの…?」
写真からでも何となく感じる嫌な雰囲気に思わず疑問を抱いてしまったけど、稀にしか見ない親切なクラスメイトがわざわざ届けてくれたプリントにケチをつける気にもなれず、そのまま大人しく席についた。
それからはなんだか、不思議な空気だった。
コメント
4件
え…なんだろう、、青鬼の館…まだみどりくん出てきてないのもなんか関係あるのかな?えぇぇむずっ!!考察わしには無理だ!!
考察コメント大歓迎