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誰も訪れることのなかった、1年間。
屋上で奇跡などを待ち続けた1年間。
当然、神様も何も現れることのなかった1年間。
そんな1年間は、長いように見えてとても短くて。
瑞希も気づいたらもう、高校生となっていた。元々頭も悪くないほうだし、受験勉強はめんどくさかったりして軽ーくやったぐらい。それでも、気づいた頃には高校生となっていた。
神山高校、という名の高等学校は、男女共学の近代的な高校。綺麗な校舎に少し見惚れながら、周りの並に流れて入学式をすました。
クラス内によき友人もできた。
サボることはあるけど、顔もたまに出してるし、成績も問題は無い。
特に困ることも何も無い生活だった。寧ろ、これはいい方なのかもしれない。それなのに、ボクの心の穴は埋まりそうになかった。
いつからかできてた、大きな大きな穴。
それはとある出来事をきっかけに、さらに大きく大きくなっていった。
「…………え、類…?」
廊下であった、久しぶりの先輩。ボサボサの髪は綺麗に整えられ、今はもう横で少しだけ結ばれ軽く跳ねている髪も、中性のような長い髪も切られていた。目元のアイラインも、雰囲気も、変わらない。大人びた優しい笑顔が、そこにまだ残っていた。
「久しぶりだね、瑞希」
身長は相変わらず高く、見上げないと顔が見えない。くんがつけられないその呼び方は、特別なんだと実感できる。胸が高まる。モヤモヤは消えていき、穴も気づいたら埋まっていた。
久しぶりに昔話に花を咲かせた。沢山笑えた。ボクはサボっても良かったのだが、来たばかりの類は流石に教室へ顔を出すため、授業と授業の合間の数分で、沢山話をした。またね、と別れたあとも、嬉しさは消えず、笑みが絶えない。ニヤニヤと笑っているボクは傍から見て気持ち悪かったかもしれないけど、それほど嬉しいものだったのだ。機嫌がいいまま、ボクも教室へと向かった。
数週間後、屋上でサボっていたら、いつの間にか昼休みになっていたらしい。ここで食べるつもりで持ってきていた弁当を膝の上に移し、箱を開ける。カラフルな可愛いお弁当。流石お母様。今日も大変美味であります、なんて味わいながら食べていた。その時だった。校庭の方から、大きな爆音が聞こえる。ちなみに今日が初めてじゃない。その後に先生の怒鳴り声と、犯人の生徒の一人の叫び声が聞こえるまでがセットである、この爆発。犯人はボクの大好きで大切な先輩、類とその同級生だ。ただの同級生ではないだろう。彼と同じショーユニットに所属していて、しかもそこのユニットの座長さん。声が大きく変なポーズをよく決めていたりするので、変人と呼ばれている。
まーたやってるよ、なんて苦笑いしながら下を見て見たら、笑いながら走る類と、必死に走っている変人__司先輩。嬉しそうに笑う類の表情は、ただ嬉しいだけのようには見えなくて、胸がチクリとした。頬を赤らめ、嬉しそうに笑顔でいる先輩は、あの屋上で長い時を共に過ごしたボクも、見たことはなかった。
心に穴ができる。
うんと大きな、穴。