やらかした
やらかしたやらかしたやらかした
盗んだのがバレた
2回までなら行けると思った俺が甘かった
顔を覚えられていた
体内に水が無いせいか視界が揺れる
クラクラする足取りでもしっかり前を向いて走る
後ろから大人たちの声がする
よく聞こえないがそれは俺たちを励ますような言葉じゃなくて俺たちを貶す言葉だということはわかっていた
なんでお前たちが怒るんだ。俺たちがこうなったのはお前たちのせいだよ
お前たち大人がこんな世界を作るから俺たちはこうやるしかなかったんだ
全部、全部全部、全部
お前らのせいだ
「鬼さんこちら!手の鳴る方へ!!」
きんときがクルッと後ろに振り返って手を叩きながらそういった
きんときってこんな奴だっけ
ただ俺にはそんなことどうでもよかった
何となく彼に乗っかってみた
「鬼ごっこもできないのかぁ?そんなんだから犯罪者の1人も捕まえられないんだよ!」
大人たちの顔がみるみる赤くなる
それはきっとこの暑さのせいなんかじゃない
ただ大人達の本気なんて勝てるわけなくて
どんどん距離は縮まっていく
あぁ捕まるのかな
「そろそろかな」
きんときが呟いた
あぁ、そろそろだね
そう返そうとした時だったいきなりきんときが何処からかナイフを取りだして俺の首に近ずける
「ぇ」
「そこから近づくな!近づいたらこいつを殺す!」
「きんとき?」
きんときの汗が滴り落ちる
「ごめんnakamu」
「そして一緒にいてくれてありがとう」
そんなこれが最後みたいな
そんな事言うなよ
喉から声が出ない
出たとしてもカスッカスで言葉にはなっていなかった
「あいつらによろしくな」
そう彼が笑う
俺を放り出して
彼は
「死ぬのは俺一人でいいや!」
大人たちの、俺の前で
首を切った
「は」
俺の口から出たのはそんな単純な言葉で何も出なかった
あまりに突然なことで脳が目の前のことを処理できていない
気づいたら俺は大人たちに捕まっていて
だけど
なんか全部がどうでも良くて
隣で君も一緒に捕まっているはずなのに居なくて
一緒に連行されて
いやぁやらかしちゃったとか
ごめん俺のミスだとか
そんな会話をするはずだったのに
君は俺の隣にいるはずなのに
なぜか、
どこにもいないんだ
そして
夏は終わった
俺たちが逃げていた3ヶ月の間に夏休みも終わっていて知らない間に授業も進んでいた
クラスメートには沢山声かけられて
犯罪を犯した俺を許してくれた
ただ
何故かぽっかり空いた心の穴は埋まらない
久しぶりにアイツらに会った時
初めはみんな無言で何も言わなかった
そんな中スマイルが一言
なんで馬鹿なことしたんだ
とだけ言った
確かにあの時自首したら良かったのかもしれない
だけど
どうせまともな道はなかったんだ
「こうするしかなかったんだ…」
「俺たちはこうするしかなかったんだよ!!」
前はこんなに叫んだら喉が渇くはずなのに今は全く渇かない
「馬鹿なの?!」
ぶるーくがそういった
「こうする以外にも方法はあったよ!犯罪者は居場所は無いそれは確かだ!」
「だけどね、更生する方法だってあるんだ!逃げるなんて事はもっと罪を重くするだけなんだよ!」
「ぶるーく、俺はきんときが否定されるこの世の中なんて耐えきれないんだよ…」
「逃げなきゃいけなかった!更生なんて出来ない、もうまともな仕事はつけない」
「それは俺たちがよくわかってるはずだろ?!」
今まで散々犯罪者を白い目で見てきたんだ
犯罪者は一生世間から白い目を向けられ続ける
それは何よりも分かりきってる事だ
「たとえそれでも」
「僕は少なくとも2人に生きて欲しかった」
「犯罪者とかなんだとか気にしないでただの友達としていたかったんだよ…」
ブルークはそう泣き崩れた
「無理だな、今の俺はすっかり汚れててお前らの隣にいる権利なんてない」
そう言った瞬間頬を叩く音が教室に鳴り響いた
頬がヒリヒリする
「何すんのきりやん」
「権利なんて知らない、俺たちはそんなことを気にしたことは1度もない」
俺の胸ぐらをきりやんは掴んだ
「お前この後死のうとしてるだろ」
そりゃそうでしょ
彼を置いてかれるなんて出来ない
最後まで付き添うのが俺の役目だ
「きんときはそんなこと望んでいたのか?」
警察からあいつの最後の言葉を聞いたよ
そう言われてハッと思い出した
『死ぬのは俺一人でいいや!』
彼は確かにそう言った
「きんときはお前を生かすために死んだ!ならお前はきんときの分まで生きるべきだ」
パッと胸ぐらを離される
ふざけんな…
なんで俺なんかが生きなければならないんだ
なんできんときじゃないんだよ
そんなことを考えているとシャークんが口を開いた
「きっと、きんときはこんなくだらない旅にこれ以上nakamuを付き合わせたくなかったんだろうな」
だから1人で死んだ
「お前が後を追うことなんて誰も望んでねぇよ」
付き合わせたくなかった、かぁ…
俺はどこまでも付き合うつもりだった
もしかして、きんときはそんな俺に対して抱いていたのは罪悪感だったのかな
だから、一人で
「そうなのかな…」
確認しようには君はもうどこにもいない
もしそれが本当ならお前は
悪くないなんて言葉じゃなくて
誰も悪気なんてないんだから、逃げることなんて投げ出して元の世界に戻ろう
そして罪を償おう
そう言って欲しかったのかなぁ…
教室が夕日で照らされる
あの時見た夕日とは違ってビルとビルの間から見えるような夕日だった
「きんとき」
「そう言って欲しかったんだろ?なぁ…」
END
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まじ主さんの物語泣ける
この楽曲はカンザキオリ様自身が小説や漫画を作っていますのでぜひそちらもご覧下さい。少しだけ過激な表現もありますのでご注意してください