テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
24
星星星@トラヒュを広め隊副隊長
322
1,649
6,995
宵闇の中の運動会。
それは、太陽の下で行う明るい運動会とは、似ても似つかぬものだった。
「今年は何色が優勝すると思う?」
「もうマイリさんたら。そりゃ僕たちのチームですよ!」
「本気やね、相変わらず」
妖狐ことマイリは、狐面を外した。
その隣ではちまきを結ぶ千灯。
自由参加なだけあって、服装もかなり個性豊かだった。
「マイリさんは今日は和服じゃないんですね?」
「和服で運動会でるバカはおらんやろ。千灯くんはいつもと同じやね」
「いつものパーカーよりちょっとだけ薄手なんですよ!」
黒いタートルネックに黒いジーパンと、暗闇の中で目を離したらふといな
くなってしまいそうな格好のマイリ。
千灯も暗い灰色のパーカーだが、よく目立つオレンジ髪のお陰で凄く分か
りやすい。
「僕がいていいんですかね~?」
「問題ない。俺の連れってことになってるから」
「ええ!?実際連れですよ!」
「…せやね」
千灯の額に結ばれた赤いはちまきがぴょこぴょこ跳ねる。
二人は赤組。
人外ばかりが参加する運動会で、純人間は千灯だけだった。
「喰われへんように今日は俺が守ったるわ」
「ひゃー、マイリさんに守ってもらえるなら安心ですね!」
「なんなん、その絶対的な信用。ちゃんと自衛しぃや」
「だって、マイリさん強いじゃないですか」
「俺だけ信用すんのも良くないでって話や」
首を傾げる千灯。
子犬さながらの愛らしさと危うさが前面に出ていた。
マイリはため息を吐く。
「…もう、そろそろはじまんで」
毎年、死者が多数出るこの運動会。
夜の部の恐ろしさと楽しさをよく知るマイリは、帰り道千灯が生きていることを願った。
『さあ始まりました!第444回、人外運動会~!』
山彦の少女が地声を張り上げる。
マイクを必要としないそのよく通る声は、会場全体に響き渡った。
「マイリさんマイリさん!あの子すごいですよ!マイク使わずあの音量なんて…声帯どうなってるんでしょうね!」
「あの子は山彦っちゅー妖怪や…地声あのボリュームの人間、君見たことないやろ」
「確かに…」
「歩く騒音被害ってあだ名つけられてそう」
「マイリさん、時々僕のことそうやって呼んでません?」
「気のせいやろ」
「そうですか?ならいいんですけどね!」
山彦の少女がプログラムを読み上げる。
『プログラム1番、開会式。出場者の皆さんは校庭にお集まり下さーい!』
「…そういえば、この学校って借りてるんですか?」
「誰から?」
「人間達です!」
「あー…ちょっとめんどくさいんやけどね。これは妖怪の学校。昼は人間の
学校。同じ建物が別の世界に2個あるって考えといたらええわ」
「ちょっと僕には難しいですね…」
しゅん、と小さくなる千灯。
子犬のように耳がぺたんと伏せった…幻覚を見た。
マイリは片目を隠す前髪を耳にかける。
「えっ。それ、好きでやってたんじゃないんですか?」
「そらせやろ。鬱陶しい」
和服も着ない。狐面も外し、視界も良好で。
ここまで本気のマイリは珍しい。
ただただ、いざというときに動けるように、というだけなのだが。
千灯には楽しんでいるように見えていた。
「開会式始まっちゃいますよ?」
「ああ、せやね。参加しとく?」
「参加しないことあるんですか?」
「あんなもん参加するんは初めてのやつかバカ真面目だけやで」
「えっ僕初めてなんですけど」
「参加したいん?」
「いや、マイリさんが出ないなら出ません」
「なんで俺基準なん?」
「マイリさんを信じてるんですよ」
「なるほどなぁ」
マイリは終わりかけの開会式を眺める。
しばらくして、視線は校舎の壁に掲げられたプログラムに移動した。
プログラム2番―――
借り人競争。
完全余興なのに、余興どころではない人気を誇る競技だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!