すると、
コンコン。
とドアをノックする音がした。
「どうぞ。」
書類から顔を上げてオーターが声をかける。
ガチャ。
とドアが開き姿を現したのは、
「やあ、オーター。」
同僚であり恋人のカルド・ゲヘナだった。
(本当に来た。)
「カルド。・・・どうしました?」
「次の会議用の資料を持って来たんだ。」
「次の会議まではまだ日がありましたよね?それなのにわざわざ持って来て下さったのですか?」
「うん。君の顔も見たかったしね。」
「・・・・そうですか。」
カルドのストレートな言葉にオーターは照れたのか、手にしている書類で顔を隠した。
(可愛いな。)
カルドはそう思いながら書類で顔を隠したままのオーターの下へと歩いて行き、机の上に資料を置いてから彼女の傍まで回り込み、手首をそっと掴んでそのまま下げた。
オーターの淡い桜の花のようにピンク色に染まった顔が露わになる。
と、そこでカルドはオーターの下唇の所が小さく赤くなっている事に気づいた。
「オーター。どうしたの下の唇の所。赤くなっているよ?」
「あ、誤って噛んでしまって。」
「痛そうだね。大丈夫かい?」
「大丈夫です。」
「それならよかった。おや?」
カルドがオーターの顔の近くでスンスンと鼻を動かした。
「カ、カルド?」
「君から蜂蜜の匂いがする。」
「・・・!」
(いくら好きな物とはいえ鼻が良過ぎでは?)
「前にツララから頂いたリップクリームの匂いです。」
「へえ、蜂蜜の匂いなんてあるんだね。そうかリップクリーム。それで今の君の唇、つやつやなんだ。・・・・美味しそう。」
そう呟くとカルドはオーターの頬に手を添え少し顔を上向きにさせると、顔を近づけていく。
「ぁ。」
(キス、される。)
オーターはそのままそっと目を閉じて、近づいて来る目の前の唇を受けとめた。
「ん。」
オーターの口から甘い吐息が漏れる。
その甘い吐息を聞きながら、カルドが唇を離し呟く。
「甘くて美味しいよ。もっと食べていいかい?」
カルドの問いかけにオーターは、 リップクリームに味などついていない、そう思ったがコクリと頷いた。
カルドは嬉しそうに笑みを浮かべ、蜜蜂が花の蜜を求めるように自身の好きな蜂蜜の香りを漂わせているオーターの甘い唇を求めるのだった。
コメント
4件
もう………好きすぎてどうにかなりそう
コメントといいねありがとうございます♪この話の前作にあたる『余裕のない可愛い貴方』もよろしくお願いします🙇♀️
やべぇ口角が((