街の灯りが雪に反射して、どこを見ても柔らかく光っていた。
白い息がふたりのあいだで重なって、
それだけで少し笑ってしまう。
「寒いね」って言いながら、
君の手をポケットの中で探した。
指先が触れた瞬間、
世界が少しだけ静かになった気がした。
冷たい風も、
混み合う街のざわめきも、
全部どうでもよくなるくらい、
君が隣にいるだけで満たされていく。
カフェの窓際で飲むココアの甘さも、
マフラーに残る君の香りも、
この季節だけの特別みたいで、
それがなんだか、くすぐったい。
帰り道、
少し遅れて歩く君の影を振り返る。
街の灯が揺れて、雪が落ちる。
その瞬間、時間が止まって見えた。
「来年も、またこうして歩けたらいいね」
なんて言葉は、まだ照れくさくて飲み込んだ。
代わりに差し出した手を、
君が何も言わずに握り返してくれた。
それだけで、
この冬はもう十分だと思った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!