テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
りすず
631
#界隈雑多
ⅸ㎞
252
むかしむかしある森の奥に、うさぎさんときつねさんが住んでいました。
うさぎさんときつねさんの暮らす家は、少し古くて小さい家でしたが、二匹はとても満足していました。お互いのことがだいすきで、二匹でいられるだけで十分だったからです。
二匹は役割分担をして暮らしていました。うさぎさんは足がはやいので、少し遠くの木の実がたくさんなるところにご飯を採りに出かけます。きつねさんは強いので、家に泥棒が入ったりしないように見回りをします。
いつものようにうさぎさんが木の実を採りに行くと、途中にきれいなオレンジ色の花が咲いていました。なんてすてきなきつねさんの毛に似た色の花! うさぎさんはそう思いました。摘んで帰ろうと思いましたが、帰るまでにしおれてしまうといけないと思い、帰り道に摘んで帰ることにしました。しかし、うさぎさんは帰るときにはその花のことをすっかり忘れてしまい、家に着く直前で思い出しました。明日にしようかとも悩みましたが、明日も忘れてしまいそうだし、枯れてしまってはいけないと思い、その花を摘みに引き返すことにしました。
一方きつねさんは、なかなか帰ってこないうさぎさんを心配していました。いつもならもう帰ってきて、一緒にご飯を食べている時間のはずなのに帰ってこないということは、うさぎさんになにかあったんじゃないかと思い、きつねさんはうさぎさんを迎えにいくことにしました。
きつねさんはいつもうさぎさんが向かっている方向へ走りましたが、いつも通っていないので、道に迷ってしまいました。
そこへきつねさんのむかしの知り合いであるくまさんがやってきました。くまさんは、きつねさんにうさぎさんがどこへ行ったか知っているよと言いました。きつねさんは怪しいとも思いましたが、自分ひとりではどうすることもできないので、くまさんにうさぎさんの場所を教えてほしいとおねがいしました。くまさんは、うさぎさんはあっちへ行ったよ、ついてきなと言い、きつねさんを案内してくれました。
するとそこには木の実とオレンジ色の花を持ったうさぎさんがいて、おどろいたようにきつねさんを見ました。うさぎさんはきつねさんに、なんでこんなところにいるのか尋ねると、きつねさんは帰ってこなくて心配だったから迎えにきたんだと言いました。うさぎさんは心配をかけたことを謝ったあと、後ろのくまさんを見て、その方はだあれ? と言いました。きつねさんは少し気まずそうにくまさんをうさぎさんに紹介しました。
くまさんは、きつねさんとは友達なんだと言いました。そして、きつねさんがいままでうさぎさんにずっとひみつにしていたことを話してしまいました。
その手に持っている木の実はご飯のつもりかい? 実はきつねさんはね、木の実だけのご飯では生きられないんだよ。きつねさんは隠れて君の仲間を食べているのさ。
きつねさんの体はくまさんを止めるには小さすぎました。きつねさんは、自分のひみつが話されてしまうのを黙って聞いているしかありませんでした。言い訳をするにもみじめで、うさぎさんの方を見ることすらできませんでした。
しかし、うさぎさんは落ち着いた声で言いました。わたしの仲間は食べるのに、わたしのことは食べないということは、きつねさんはわたしのことがほんとうにだいすきでとくべつなのね。きつねさんは思ってもいなかった返事におどろいて、うさぎさんの方を見ると、うさぎさんはオレンジ色の花を差し出して言いました。わたしもだいすきよ。
くまさんはうさぎさんを怖がらせるつもりで言ったのに、全く怖がらず、むしろ喜んでいるうさぎさんを見て、逆に怖くなってそのまま逃げていってしまいました。きつねさんは、差し出された花を受け取って、うさぎさんと手を繋いで家に帰りました。
きつねさんは、うさぎさんがおどろかなかったのは、ひみつをすでに知っていたからかもしれないなと思いました。
コメント
1件
ああ、これめっちゃ良かった…! うさぎさんの「わたしのことは食べないってことは特別なんだね」の返し、優しさと強さが両方あって痺れたわ。くまさんの悪意が逆に二人の絆を固める展開も好き。最後の「知ってたのかも」の余韻がほんわか切なくて、何度も読み返したくなる一話だった🔥