テラーノベル
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⚠️please read⚠️
dzl社様よりmn qn主人公
他メン登場なし(存在有、話には出てくる)
タヒネタ、バッドエンド(たぶん)
mn様のひらがな表記あり
「『桜』って、不思議な花だよね」
2人だけのディスコードに、突然そんな声が響いた。
今日は俺のチャンネルの動画の撮影日で、久しぶりのおんりーコラボだった。
まあ主戦力2人が集まるってことで、鬼畜も勿論マシマシ。
クタクタになりながら撮影を終わらせ、今はそのままディスコードを繋いだまま雑談中だ。
鬼畜への文句を言い合ったり、今日の働きを競ったりしていたのだが。
会話が途切れ、少し沈黙が続いた時に
なんの脈略もなく、こいつは桜についての話題を振ってきたんだ。
しかも今は梅雨真っ盛り。
もう桜とか終わった時期だぞ?!
戸惑うのも無理はないだろ、!
「え、?」
「ん、だってさ。桜って、別れの花でもあるし、出会いの花でもあるじゃん」
「んぁー、なるほどな、?確かに卒業式も入学式も桜ってイメージだな」
「でしょ?悲しいイメージと、明るくて新しいイメージが、両方あるんだよ」
「言われてみれば、不思議かもな。」
「でも急になんだよ?」
「特に意味はないんだけど。」
「いやないんかい?!」
「、、Menは、桜好き?」
「あー、まあ好きかな」
「ふつーに季節の花として綺麗だし、なにより和風建築に使えるからな!」
「結局建築かよ、、wめんらしいけどw」
「ははっ!一応プロマインクラフターですから!w」
「、じゃあさ、もしよかったらさ、?次の春は__」
「一緒に桜、みてくれない?」
「なんだよ、かしこまって」
「そりゃ、いいに決まってるけど」
「ほんと?約束、だからね!」
「もちろん!何気に花見とか一緒に行った事ねえな」
「うん、咲いてるのは勿論なんだけどさ」
「俺、市立病院の桜が散るのも、一緒に見て欲しいんだ」
「わかる?市立病院にある、あの大きな桜の木」
「、?おう、いいけど、、」
「なんで市立病院?結構遠いぞ?」
「特別綺麗って噂も聞かないけど?」
「だって、、」
「市立病院の桜が、一番散るのが遅いんだもん」
「なんでわざわざ遅い桜を見たいんだよ?」
「んー、まあ気分?だって、花見も一緒に行ってくれるんでしょ?」
「それはそうか、色々予定もあるだろうしな」
「じゃあ、どっかで花見すんのと、病院の桜が散るのを見る。これでいいのか?」
「うん、!」
「じゃあ約束な!」
「…ありがと!めんこそ忘れないでよ?絶対行くからね!」
あれから暫くたち、今は3月下旬。
早咲きの桜が見頃で、ついに花見にきたのだが、、
「、、?おい、なにぼーっとしてるんだよ?」
「、、、」
「おい、聞いてるか?、、おんりー!!」
「わ、?!なになに?!」
「いや、声かけても反応なかったから。ほんとどうしたんだよ?」
「…ごめん、桜見てただけだよ」
「なら、いいけど、さあ、」
「ほんと、だいじょうぶだから」
そう言い困ったように微笑んで見せてから、桜に視線を移す。
大丈夫、と笑って見せながら、すこし眉を顰めるこの表情は、まるでそれ以上の詮索を拒んでいるようだ。
最近おんりーは、会議でも撮影でも上の空になることが増えている。
元々おんりーはそんな奴じゃない。
なにか可笑しいのは誰が見ても明らかだ。
メンバーのみならず社員も解っている_
“何か大きな事を抱えている”と。
それでも誰も聞き出せずにいるのは、質問するたびあの表情で「大丈夫」と返してくるから。
きっとおんりーは意図的にあの表情を作っている。
相手を否定せず質問を受け流しつつ
誰にも立ち入って欲しくない、立ち入らせない境界線を目の前に敷いてくる。
…そんな無言の距離に、何も言えなくなるんだ。
「こんなに綺麗なのに。
…なんで散っちゃうの、」
舞い落ちる花びらを見つめながら小声で呟いている。
、あんな悲しそうな表情で桜を見て欲しくなんてない。
あんな顔させるくらいなら、境界線でも何でも無視してやる。
例え、あいつが望んでいなくとも。
悩んでるのをわかった上で、おんりーに。おんりーだけに、
重荷を背負わせるなんて
絶対に間違ってる。
「なあ、」
「なーに?めん」
「何があったんだよ。」
「だから、俺は大丈夫だって」
「俺は引き下がんねえよ。みんな心配してるんだから」
「、っ」
「…わかった。話すって」
「!」
「まあ、そろそろだとは思ってたし、ね」
「桜が散る頃
俺は、
____死ぬ。」
話を聞いて、俺は何も言えなかった、
抱え込んでいること、わかっていたはずだったけれど
こんなにも、こんなにも…
見る世界が変わってしまうほどに
大きなものだとは、思っていなかったから。
あの花見の日から、1ヶ月と少し。
、、おんりーは入院した。
あの日、桜の下で
おんりーは病気のこと、だんだん普通の生活ができなくなってきていること、
そして、余命宣告のこと。
全てを話してくれた。
花見の約束をした日にはもう、
医者から残された時間について聞いていたらしい。
日が経つにつれ症状は悪化し
満足に配信ができなくなったり
リアルでの会議がしんどくなったり
…俺に話す前にも、だいぶ無理をしていたようだった。
「あの、面会に来た大原です」
「ああ、大原さんですね。今日は他の3人はいらっしゃらないんですか?」
「はい、都合がつかなかったので」
「おんりーさん、みなさんがくるといつも嬉しそうにしていますよ」
「それはよかったです」
「では、いつも通り909号室です」
「ペコッ」
コンコン
「よっ、今日は元気か?」
「おはよ、朝からありがと。今日はだいぶましかも、沢山話せるよ」
「そうか、よかった、、!」
荷物を置いて、窓辺のベッドへ向かう。
点滴やバイタル機器などが繋がれている姿は、やっぱり何度見ても慣れない。
なんで、あんなにも努力家で真っ直ぐなこいつが…と、思わずにはいられない。
そりゃ、誰だったらよかったとか思うのは違うけど
だとしても、なにも悪いことなんてしてないのに、なんで…
「めん、らいくんとふうくんは元気?」
「ああ、一旦おらふくんの家で一緒に世話することになったのは言ったよな?」
「うん」
「それで、おらふくんから伝言」
おらふくんとのトーク画面に並んだ4匹の猫の写真を見せる。
元気にキャットタワーに登ったり
お昼寝していたり
とにかく元気いっぱいだ
「✨かわいー!!」
「相変わらず、猫への愛情がすげぇな」
「んふふ、癒される〜」
「絶対元気に過ごさせてあげるから心配しないでって、おらふくんが言ってたぞ」
「そりゃ、おらふくんなら大事にしてくれるよ〜!!安心!」
相変わらず猫の写真を見て頬を綻ばせている。
あんな姿を見てると、タイムリミットが近いだなんて思えない。
…おかしいだろ、ほんと。
一番若いのに。一番努力家なのに。
なんで、一番に、、
「はぁ、っ」
「、、?めん?」
「いや、気にすんな」
「…余命のこと、だよね」
「、っ。なあ、医者はなんて?」
「お医者さんは、、」
「、…」
「担当の先生から言われたんだ、もういつ発作が起きてもおかしくないって。」
「、そう、か…」
「、、、覚えてる?余命宣告の言葉」
「ああ、もちろん。あんな衝撃的なこと…、忘れられる訳、w」
「ほんと、俺だって忘れられないよ、w」
「あの時のお医者さんったら、すっごい謝ってきて、緊張してて、w」
「俺より取り乱してたよ〜、、w」
コンコン
「おんりーさん、お食事のお時間です」
「どうぞ〜」
ガラガラ
「そちらは面会の方ですか?」
「そろそろ本日の面会時間が終わりますが、、」
「、え?あれ、、」
「やば、こんな時間?!帰らないと撮影遅れる!!」
「、wじゃあ “またね” 、めん」
「おお、また来るから元気でな!!」
「うん、もちろん」
ガラガラ
「…よかったんですか?おんりーさん」
「、なんですか?」
「もう、面会なんてできないかもしれないんですよ、、?」
「…いいんです。めんは____」
「絶対また会いに来てくれますよ」
「ふう、今日も鬼畜だったな〜」
「おんりーがいねえと余計鬼畜、、」
この撮影が普通になるのか…なんて
考えたくもないことまで頭に浮かぶ。
俺が悲しんでたらだめだろ。
俺は、毎日おんりーに会って
いつも通りの会話を、空気を届け続けて
、、、せめて後悔だけはしないで欲しい。
「はーっ、おーい俺、ネガティブよくねーぞ〜、」
独り言を呟いて
配信の準備をする。
なにか作業してたほうが、考えないで済むから。
「あ、飲み物」
喋り続けるこの職業で欠かせないのが、喉を潤す飲み物。
撮影終わり故コップは空っぽで
気怠く席を立ってキッチンへと向かう。
キッチンに来てみると、辺りはすっかり暗く、窓が風で音を立てていた。
撮影していて気が付かなかったが、どうやら今日は嵐のようだ。
窓の外を覗いてみると、地面に激しく雨が打ちつけている。
ふと、風に揺れる葉桜が目に留まる。
おんりーから聞いた、医師の余命宣告の言葉が脳裏に蘇る。
『次の桜が散る頃、貴方の命も_。』
激しい雨に打たれて落ちていく一枚の桜の葉が、
やけにくっきり目に映った。
急いで車を走らせる。
途轍もなく嫌な予感に駆られたまま。
これが気のせいでありますように、
何度も祈りながら
赤信号のたび舌打ちをしながら
車を飛ばした。
生きていて、
生きていてくれよ、、
今日はあんなに元気だったじゃないか
心配しすぎだと笑ってくれよ
驚いた顔でこっちを見てくれよ
元気な声を聞くこと
笑った顔が見られること
それが、どんなに幸せなことか__
今なら分かる。
弾き出されるように車を降りて
見上げるのは909号室。
建物の端に位置するその部屋の横には
桜の木が一本生えている。
殆ど花が散ったその木と
909号室”だけ”ついている明かり。
黒い妄想が止まらない。
もう堪えることができなかった。
面会時間などとっくに過ぎている。
それでも、どうしても
顔を見るまでは止まれない。
病院に飛び込んで
看護師の静止なんて構わずに進む。
909号室には、誰もいなかった。
後ろから追いついてきた看護師が、俺を見た。
勝手に侵入して、怒られるだろう
そう思ったのに
突然頭を下げられて一言。
「容態が悪化して、、現在緊急手術中です」
「…は、っ?」
「、、大変言いにくいのですが、再び会える可能性は極めて低いかと」
「なんで、そんな、、急にそんな、」
「、実は昨日の夜も容態が悪くなり、一時的に経過を止める薬を投与していました」
「本人も、長くて明日までしか保たないと理解していたはずです」
「そんな、ならなんで、、ッ」
「、、、手術が終わるまで、こちらの部屋で待機していただいても大丈夫ですので。」
取り乱す俺を案じたのか、そのまま看護師は出て行った。
信じられない話だ、
わかっていて言わなかったのは、何故…?
俺はこの部屋で
窓の外で桜の花びらが、一枚一枚散っていくのを
見つめる他なかった。
あいつが、この桜が散るのを一緒に見る約束を取り付けてきたこと
そして、わざわざ家から遠いこの病院に入院したこと
やっと理解した。
おんりー、お前は…
死ぬのが怖かったんだな、
余命宣告の言葉が怖くて
死ぬなんて思いたくなくて
だから、この桜である必要があったんだろ、
町で一番散るのが遅い
この病院の桜を選んだんだろ、?
それでも怖くて、
別れが寂しくて
だから、この桜が散る時に
必ず会えるように、って
俺を誘ったんだろ…?
ほんとお前は
いつもクールで冷静で、毒舌なくせして
誰よりも、怖がりで寂しがりで
仲間が大好きで、
独りが嫌いで
人に頼るのが、甘えるのが下手で…
「ほんとに、素直じゃないよな、ッ」
途端に、なにかが崩れた。涙が止まらなかった。
死ぬことに対する小さな、でも必死な抵抗を知って
隠してきた何ヶ月もの間、ずっと苦しみながらもがいていたことが分かって
俺はもっと、寄り添うことができたんじゃないのか、、?
今更、わかったって遅いんだよ…ッッ
散々泣いて涙も止まった。
気づけば嵐は止んで、三日月が浮かんでいる。
かれこれ2時間が経っているようだ。
看護師さんたちはドズさんたちにも連絡してくれたみたいだけど、
雨で道路が冠水したり、土砂崩れが起きたりして、なかなか来れないようだ。
コンコン
「、!」
扉が開いて見えたのは、
確かにおんりーだった。
前よりももっと多くの管が繋がっているが、
確かに息をしていた。
「っ!!あの、おんりーは、生きてるんですね、?!」
「はい、目を覚ますかどうかは、本人次第ですが」
「、よ、かったぁ、、」
「しかし、あくまで延命です。生きていられるのは長くて1時間程度。私たちは外で待機していますので、なにか異常があればナースコールを押して下さいね」
部屋に静けさが戻る。
ただ変わったのは、一定のリズムで機器の音が鳴っていること。
それが、生きている証明だった。
それだけで、今は十分だった。
じっとしていられなくて、何となく窓を開けてみる。
どっと、夜の風が吹き抜けた。
まだ湿度の高い、冷たい風。
俺と、おんりーの髪を揺らしていく。
、、、今は、少なくとも今は。
同じ場所で、同じ空気を吸っている。
本当は、その苦しみだって同じくらい、とはいかなくても
少しくらい、背負ってやりたかった
俺より小さな体で
今、重い病と覚悟を、抱えてるんだろ、、?
怖かったんだな、
寂しかったんだよな、
一緒にいて欲しかったなら、直接そう言ってくれよ…
桜に託さなくても。
俺は、俺らは
力になりたかったんだよ、、
「め、ん…」
「っ、?!」
振り返ると、そこで
確かに目を開いている。
息は荒く、声を出すのもしんどそうだが
今、確かに俺を呼んだ。
「し、ぬまえに…はなせて、ッよかっ、た」
苦しそうに発音して、紡いだ言葉には
苦しみと恐怖の色に、少しの安心が混ざっていた。
「、ああ。俺も、、話せて嬉しいよ」
「っね、きいてッ?おれ、がさいごにいいたいこと、、っ」
「もちろん、」
「あの、ねっ、?この、すうねん、、がっ、いちばん、たのし…かッた、よ」
「ッおれは、せかいで、、っいち、ばん…しあわせ、だった…から、ねっ」
「わかった、わかったから」
ああ、そうか
こいつは、、いつも
自分が決めたことに真っ直ぐだったな、
おんりー、お前は…
最後まで、”スピードスターおんりー”で居ようとするんだな、、
、俺は
もうお前に、抱え込ませたくないんだよ
「もう、1人で強がんなよ…」
「散る桜を一緒に見て、、そばで看取って欲しかったんだろ、?」
「1人で死ぬのは、怖かったんだろ、?」
「おみとーし、なんだッね、」
「っ、…」
「はは、、ッ、ぉ、れ、ほんとにしんじゃうんだね、」
「しにたく、ッなかったな、ぁ、、」
「もっと、もっと、ぉッ…」
「グスッ、ポロポロ」
「そうだよな、そうだよな、、っ」
おんりーの手を優しく包む。
“もっと”
きっとその後には、色んな言葉が続くんだろう
もっと撮影して
もっと遊んで
もっとコラボもして
もっと上を目指して
、、、可能性を、日常を奪われたこと
それがなにより辛いだろう
「で、も…たのしか、ったのは、ほんとう…だからッ、」
「、こうかい、、じゃ、ないよ…、?」
それは強がりじゃなかった
“スピードスター”としての強さでもなかった
そこにいたのは無邪気な青年
不安、寂しさ、未練、、
でもそれを超えた、幸せと覚悟
いつも全部を、全力で努力して、楽しんできた人の最期だった。
「、、おんりーはやっぱつえーな、」
「ハヒュ、?!ゴホッケホッ」
「おい、?!大丈夫か、?!」
突然苦しみ出す姿を見て、思わず立ち上がる。
弱々しく、微かに首を横に振っている。
涙だって溢れてる。
、、、こっちまで苦しくなっちまう。
「ナースコール、押したからな、!」
心配で心配で、挙動不審になる俺に
まるで最後の力とでも言うように
震える弱々しい手で俺の手に触れる。
虚ろながら薄く開いている、その目が物語っている。
もう、最期の時が訪れたのだと
口が微かに動き出している。
あ
り
が
と
ビーーー
機器が異常を告げる。
心臓が止まった
呼吸が止まった
瞼が閉じた
俺に触れていた、手が落ちた
この部屋にいるのは、1人だけになった。
手の上には、窓から舞い込んできたのだろうか
嵐の生き残り_、最後の花びらが
そこに一つ、儚く散っていた。
〈桜よ、散るな〉
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