テラーノベル
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※誤字脱字・学パロ・nmmn
話が進み、登場人物が増え次第タグを増やしていきます。
ご感想お待ちしております。誰のセリフかわからない等、質問はいつでもお答えします。(訂正も加えます。)
君との夏の淡い思い出
こんな感覚は生まれて初めてだった。会ったことは絶対にないのにどこか落ち着く雰囲気。すべてが不思議な感覚だった。
自分の知らない記憶の夢をたまに見る。ただの夢だ、誰も描いたことのない俺の中の妄想。現実には何も関係ない。ずっとそう思っていた。
*
俺の通う学校は普通科、理系科、文系科の3つに分かれている。校舎は理系科と文系科を挟むように普通科があり、普通科の校舎が広いため、理系科と文系科が関わることは一切なかった。だけど唯一、文系科との関わりが持てるところは各科の図書館だった。各教室から、図書館までの距離は遠く、ほとんどの人は普通科の図書館で用を済ますため、使う人も少ない。さらに誰も使わない旧図書館側だ。そこからは互いの様子が見える大きな丸い窓があった。そんな静かで集中できる環境は俺の穴場だ。旧図書館だからこそ、ほんの少し本の古い香りが漂っているのも、大窓越しに映る季節にごとに移り変わる中庭を眺めながら集中できるのもお気に入りのポイントだ。そこでのとある出会いは1年の夏、課題に追われてる頃だった。ふと窓から外の景色を眺めると文系の図書館にいる人と目が合った。俺はとっさに目を離したがあの視線に親近感が涌いた。それから目があったり、すれ違ったりすることは全くなかったがどうしてもあの親近感が忘れられず相談したのが事の始まりだった。
*
「文系で知り合いはいるか…ですか?」
望遠鏡をのぞくのをやめて俺の顔を見て俺の問いかけに乗ってくれた。
「そう、ちょっと気になって…星導なら知ってるかなぁ…って思って」
「ライが人探し…珍しいですね、だけど俺文系に知り合いいないんですよ…いつか顔合わせしてみたいと思ってるんですけどね…すいません…」
星導は申し訳なさそうに俺のことを見ながら視線を空に向けた。
「いやいや、理系と文系じゃ仕方がないし…」
そうだ…何勝手に人を巻き込んでんだ…俺の勝手な勘違いかもしれないっていうのに…
「不思議と壁ができちゃってますからね…小柳くん達なら俺よりも知ってることきっと多いと思いますよ。今日2人とも顔出すって言ってたみたいなのでそこで聞いてみましょう。」
「ごめん、こんなくだらない話に付き合ってもらって…」
星導の言う通りだ…こんな歴史深い学校に根付いだ壁なんて俺でどうにかできるもんじゃない…
「いえいえ、力になれるなら俺はとても嬉しいですよ。大切な仲間ですから…」
「星導…」
星導の笑み心軽くなったように感じる…星導は俺の入っている天文部の部長で、難関科の天文科にいる優秀さんだ。最初は部員が少なく、静かに集中して作業ができるからと軽い気持ちに天文部に入ったがいざ星導と絡んでいると星導が天文の研究をしているのに見惚れ天文に興味を少し持ち、今では星導のお手伝いもしている。そして俺は星導の人柄の良さに俺は心を置くようになり、今では相談相手をたまにしてもらっているいい先輩だ。
「あ、噂をすれば」
スマホの振動に反応した星導が入り口に向かってドアを開けた。
「いらっしゃい、今日もゲームですか?今日は晴れてるので星がよく見えるんですよ~」
「いや、今日は流石に手伝うよ。ずっとゲームしてても活動報告書にまとめられねぇし…今年は天文レポートってやつ作らなきゃいけないんだろ?」
「そうなんですよ…資料配られたんですけど意外と大変そうで…あ、資料はあそこの中に置いておきましたからね。」
そう言いながら星導は望遠鏡の近くにある棚に指をさした。
「ま、そういうことだ別にいいよな?カゲツ。」
「大丈夫や、僕もそろそろやらなきゃなって思ってたし、伊波達が何やってるの気になる。」
天文部には俺の他に2人の部員がいる。星導の友達の小柳ロウと、俺と寮で同室の叢雲カゲツだ。2人とも普通科だが、星導が部員足らずで困っていた時に「ゲームしても大丈夫ですから~」と言う言葉に引きつられて入った。
「そう言ってもらって嬉しいです。でもまぁ、星が出るまでまだ時間があるし、くつろいでもらって大丈夫ですよ…あ、そういえばライが文系に知り合いがいないかって言ってましたよ。」
星導は普段あまり勉強に興味がない普通科の2人に「手伝う」「気になる」と言われて嬉しいのかせかせかと準備を始めながら話の共有を始めた。星導が俺の勝手な相談に真剣に向き合ってくれていることに胸がいっぱいになる。
「え?そうなんライ?」
カゲツが俺のことを心配そうに見つめてきた。
「うん、まぁ…俺の勘違いかもしれないんだけどね…w」
「珍しいな、ライが人探しなんて…」
ロウも俺のことを心配そうに見てくる…そんなに俺が人探しするのが珍しいのか?なんて思っていたら星導が話を広めるようにロウに問いかけた。
「…小柳くんは何か知り合いとかいますか?」
「ん~…あ、イッテツ……って言いたいところなんだけど…あいつ…」
「あ~…」
星導の問いかけにロウは答えたがどこか不服そうにしている。ロウの反応に星導はどこか感づいたように少し微妙な返しをした。
「…?イッテツって誰や?」
俺と同様に2人の微妙な空気を感じ取ったカゲツがロウの顔を見ながら言った。
「文系科で落語やってるやつなんだけど…あいつあんまり人脈を広めないタイプというか…」
「簡単に言うと人見知りですね。」
「へぇ~…」
ロウのカバーしている言い方に対し星導のストレートな言い方に俺は笑ったが、カゲツは星導のストレート発言に気づいておらず理解したような素振りを見せた。
「おい星導、それはイッテツに失礼だろ」
「はぇ?」
「まぁ、俺も知り合いには声かけてみるよ、探してるやつの特徴とかわかるのか?」
ロウは自分のストレート発言に気づいてない星導に訂正を入れ、俺に問いかけた。
「あ、…俺、あんま覚えてなくて…」
実は、見かけたことにインパクトがありすぎて容姿までははっきり覚えてないのだ…
「……お前なぁ~…」
「まぁ、それだけ衝撃的な出会いだったってことですね。」
小柳が少し不機嫌になりそうな所に星導が俺のことを優しくカバーしてくれた。
「ふ~ん…僕もあんま他の科の人と関わらんからな…って!星導、空!もう星出てるって!!」
カゲツが話を理解ししみじみしていると、空が暗くなっていることに気づき慌てて星導の肩を叩いた。
「あっ、やば!」
カゲツに言われて慌てるように星導は立ち上がり俺は電気を落としてくると言い立ち上がった。
「小柳くん!これ準備するの手伝ってください!」
そう言ってロウの腕を引っ張りながら星導たち2人は展望ルームへと向かった。
「ライ電気室に行くん?僕も電気の落とし方知りたいんよ」
俺が電気室に向かうために懐中電灯を取り出していたらカゲツが声をかけてきた
「いいよ~こっちこっち」
俺はカゲツに手招きしながら電気室へ向かい、天体観測に向けて準備を始めた…
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