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今目の前に選択肢が出てきたのなら、1番に「死」を選ぶだろう。
この強そうな、大きな背中が無かったのなら、また他の選択肢を選んだかもしれないけど。
あの後、俺の腹を蹴り続ける奴を…が蹴り飛ばしたらしい。
残念ながら肋の骨が折れてるせいで、視界が歪んでよく見えなかったが、確かそうだったと思う。
「お、お前‼︎俺様を殴るなんて…どうなるか分かってるのか‼︎」
まだ痛みが継続しているのか、腫れる頬を片手で押さえながら腰をついて悪態をついている。
この大きな背中を前に自分のことを俺様と名乗る輩がいたのだなと感心するや否や、目の前にあった背中が大きく左に飛ばされる。
目の前に「望んでいた」選択肢が表示される。
▶︎逃げる
戦う
そして最後の項目…にも目がいかなかった。
次の瞬間、俺は自身を蹴り飛ばした奴を殴っていた。
殴った勢いからか、はたまた殴りすぎてしまったからか、勢い良く相手の体が右の石壁に叩きつけられる。
その影響からか、黒い煙が広がる。
しまった…と思っても、もう遅い。
先程の情けない顔はなく、牢屋内には僕だけとなっていた。
1人…?
辺りを見回すも、誰もいない。
…追って、くれたのだろうか。
仕事でミスをする度、カバーしてくれていたのはいつもアイツだった。
いや、正確には「皆」だった。
…懐かしいなぁ。
懐かしむ資格もないのに。
今、選択肢が出されたのならどうだろうか。
▶逃げる
いつか捕まるとわかっていても、必死の思いで、僕は牢屋を逃げ出した。
本拠地内にいくつかのカメラが設置されていることに気がついたのは、牢屋を出てすぐのこと。
何かとあたりを見回して置かなければならないと思いながらも、その事実に気がついたときにはもう遅かった。
走っていた廊下の先に見慣れた緑色のキャラクターが見える。
昔、著作権がどうたらこうたらと彼に言っても聞かなかったのを思い出す。
「ラダオ」
相変わらずの様子に一瞬ホッとするも、息を吐いた心臓がズキズキと痛くなる。
何もかもを忘れていた、忘れてしまっていた。
口から少量の血が流れるが、そんなこと今は構っていられない。
近くにあった窓から、思い切り身を乗り出し、飛び降りた。
「ッ逃さない」
背後から何かが後を追って着いてくるのがわかる。
相手があの幹部一員なら大丈夫だろうと横目で後ろを覗くも、彼は着地する準備を一切していなかった。
思わず空中で身を回し、彼の方へと体を向け受け止められるような体制を取る。
地面に当たる衝撃はほんの僅かで、痛みを感じない。
また死んだのかと、固く閉じていたまぶたを開けば、目の前にはエメラルド色の綺麗な瞳があった。
彼は悲しく笑う。
「やっと、捕まえた」
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