コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「2022年 10月」
外では雨が強く降っている。
紬(26)、ベッドから体を起こし、寝ぼけ眼で窓の外を見る。
横で寝ていた恋人・戸川湊斗(26)、激しい雨音に目を覚ます。
湊斗、体を起こして、
(湊斗)「雨すごいね」
(紬)「ね」
(湊斗)「何時?」
(紬)「5時」
湊斗、紬の腕を引いて一緒に横になり
(湊斗)「寝よ」
(紬)「うん」
寄り添い、2度寝する2人。
雨音がひどくて、
(紬)「(眉をひそめて)·····うるさい」
紬、カーテンを開けて、
(紬)「あ、やんでる」
先に起きていた湊斗、出勤の準備を終えて、
(湊斗)「仕事終わったら連絡するね」
と、玄関で靴を履く。
(紬)「ん。なんかあれ? 小綺麗な格好してないと入居審査ひびく?」
(湊斗)「(笑って)いつも通りでだいじょぶ」
(紬)「そっか。靴下は綺麗なの履いてく」
紬とルームシェアしている大学生の弟・青羽光(20)、深夜バイトから帰宅。
(光)「ただいまー。あ、湊斗くん、いらっしゃーい」
と、適当に言いながら部屋の奥へ。
(湊斗)「おじゃましてます」
紬、湊斗に小さく手を振って、
(紬)「じゃ、いってらっしゃい」
(湊斗)「いってきます」
部屋を出て行く湊斗。
(光)「姉ちゃん、今日? 内見行くの」
(紬)「(嬉しそうに)うん」
(光)「·····ニヤニヤしてるよ」
(紬)「(自分のほっぺを軽く叩いて)してないよ」
音楽が鳴り響く店内。
バイト中の紬、在庫チェックをしている。
店長の穂田ゆかこ(38)、近付いてきて、
(ゆかこ)「つむちゃん」
(紬)「(手を止めずに)はい」
(ゆかこ)「フリーターたのし?」
(紬)「(手を止めて)楽しくないです。未来への不安に怯える日々です」
(ゆかこ)「(微笑んで)よかった」
(紬)「(微笑み返して)よくないです」
(ゆかこ)「(1枚の紙を差し出して)ん」
(紬)「ん?(と受け取る)」
正社員採用試験の要項。
(紬)「(まじまじと眺めて)せーしゃいん·····」
(ゆかこ)「こんなCDの売れにくい時代だけどさ、うん、バイトよりはさ」
(紬)「·····この手があったか」
(ゆかこ)「前向きにご検討ください」
(紬)「ご検討します!」
と、頭を下げる。