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と、言う訳で亜矢の部屋には美保を加え、さらに賑やかになって4人。
亜矢と美保が向かい合ってテーブルに座る。コランはもちろん、亜矢の隣に着席。
そして、部屋の隅のソファに寝転がり、すっかりくつろいでいるグリア。
夕飯が済んだのならさっさと帰ればいいのに、と亜矢はグリアを横目で見つつも、美保に視線をもどし、真剣に聞く体勢になる。
「それで美保、聞きたい事って?」
「うん、リョウくんの事なんだけど……」
「リョウくん?」
意外な人物の名が出て、亜矢は思わず聞き返す。
「リョウくん、何か悩みとかあるのかなぁって思って」
これまた、意外な言葉だ。
一瞬、その言葉に反応してグリアの瞳が僅かに揺らいだ。
亜矢はリョウの事を思い浮かべてみるが、思い出すのは彼の笑顔ばかり。
いつも穏やかに笑っている天使の彼に、悩みなんてあるようには見えないが。
「リョウくんに悩みがあるとは思えないけど、どうして?」
「時々……、リョウくん、とても悲しそうな顔するのよ。ううん、悲しいというか、とても辛くて苦しそう。悩みじゃなかったら、何か持病とか……」
天使に悩みや持病なんてあるのかなあ、と亜矢は聞きながら思いつつ。
それにしても、リョウがそんな顔をしている事なんて見た事がなかった。
いや、気付かなかった。
リョウに憧れている美保の事。きっと、誰よりもリョウの事をよく見ているのだろう。
亜矢はちょっと感心したが、リョウの事については何も原因が思い付かない。
思えば、亜矢はリョウの事を良く知らない。彼の正体が天使だという事だけ。
「亜矢はリョウくんのお隣さんだし、何か知ってるかな〜と思って来たんだけど」
本気でリョウの心配をしているらしい美保に何か協力出来ないものかと、亜矢はふと、ソファで寝転がっているグリアに視線を移す。
「死神、何か知らない?」
すると、グリアはだるそうに顔だけをこちらにゆっくりと向けた。
「ああ? 知るかよ」
この話に感心がないと言うよりは、関わりたくない、と言った顔だ。
少なくとも、グリアなら少しでもリョウの事を知っていそうなものだが。
結局答えは出ないまま、美保はしばらく亜矢とおしゃべりをして帰って行った。
グリアも自分の部屋に戻り、部屋には亜矢とコラン。
(リョウくんかぁ……)
亜矢は風呂上がりの髪をとかしながら、さっきの美保との会話を思い返していた。
明日からはもう少し注意深くリョウの事を見てみようと思った。
「なあ、アヤは死神と天使の兄ちゃん、どっちが好きなんだ?」
パジャマ姿でベッドの上でゴロゴロしていたコランが、無邪気に聞いた。
「こっ! コランくんまで……! そんなんじゃないってば! ……もう」
亜矢は少し頬を赤らめながらベッドまで歩くと、横になっているコランのすぐ横に腰を下ろす。
そうするなり、コランはバっと勢いよく起き上がり、亜矢に抱きついた。
「オレは、アヤが好きだ!」
「えっ!?」
「アヤの側は居心地いいから、オレ好きなんだ!」
大きな赤の瞳を一杯に開いて、抱きつきながら亜矢を見上げる。
「コランくん……」
えーと、これは告白というのだろうか? と亜矢は思いつつも、幼いながらも純粋で真直ぐなその気持ちがどこかくすぐったくて、微笑み返す。
「おやすみ、アヤ……」
こうして、小悪魔は今日も亜矢の温もりに抱かれながら眠りにつく。
次の日の朝。
「ちょっと、なに朝から機嫌悪そうな顔してるのよ?」
「…………」
今日も何故かグリアと一緒に登校する事になった亜矢だが、隣で歩いているグリアは昨日以上にイライラが増しているようだ。
昨日は昨日で、怒りを発散する事が出来なかったのだから。
「何だか知らないけどそんなに怒ってばかりで……栄養不足なんじゃないの?」
「……なら、そこら辺の魂喰ってもいいのかよ」
「そ、それは絶対にダメよっ!」
そんな相変わらずの会話を繰り返し、学校まで辿り着くと。
運の悪い事に、今日に限って校門の前で体育の有田先生に出くわし、さらに悪い事にグリアに絡んで来たのだ。
「コラァ、貴様ぁ! 何だ、コレは!?」
有田はグリアを見るなり、胸元にあるペンダントを鷲掴みにして引張る。
グリアは制服の時も私服の時も、いつも胸元に赤い宝石のついたペンダントをしている。
「学校にこんなモノを持って来ていいと思っているのか!?」
グリアは特に動じる事なく目を細めていたが、ふっと無言で顔を伏せた。
亜矢はその側で、その様子を緊張しながら見ている。
(今日の死神はマズイわ、何をするか分からない!)
どちらかと言えば、グリアよりも有田の身を案じている亜矢だった。
「聞いてるのか!? だいたい、貴様はそのロン毛自体が規則違反……!」
有田がそう言った瞬間、グリアのペンダントの宝石を掴んでいた有田の手首を、グリアの片手が力強く握りしめた。
ン? と有田がその手に目を向けたその時、グリアが顔を上げた。
「…………触んじゃねえよ。殺すぞ」
低く、重いその一言。
上げた顔から除く鋭い瞳からは、殺意とも取れる恐ろしい輝きを放ち、相手を一瞬で射貫いた。
さすがに有田も恐怖を感じたのか、小さく声を上げたかと思うと逃げるようにして目の前から去っていった。
いや、それが利口だろう。死神の場合、『殺し』は冗談ではない。
「あんた、そのうち退学になるわよ……?」
半分呆れたように亜矢が言うと、グリアは今度は低く笑った。
「面白え。やれるモンならな」
ああそうだ、コイツに心配は無用だった、と亜矢は自分自身に溜め息をついた。
裏五条
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コメント
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このエピソード、美保のリョウくんへの視線がすごく良かったですね。普段笑顔の天使に「悲しそうな顔がある」と気づく感性は、彼女の真剣さが伝わってきます。それに対してグリアがあからさまに話を避けるのも気になる——死神の立場から何か知ってそうで、実はリョウの秘密に繋がる予感がします。最後のコランの無邪気な告白にほっこりしつつ、翌朝のグリアVS有田先生の緊迫感、一気に空気変わって面白かったです。