朝から空が低くて、重たい雲が地面にまで垂れてきそうだった。
なんとなく気が乗らなくて、絵筆も持たずに外へ出た。
そんな日に限って、やっぱりあいつはいた。
仏「……なあイギリス、お前さ、最近ちゃんと寝てる?」
声をかけたとたん、イギリスは持っていた紙袋を僕に押しつけてきた。
見え透いた話題そらし。やり方が雑すぎて、逆に心配になる。
英「はい、これ。……今日の花です。貴方、そういうの期待してたでしょう」
仏「うっざ。誰が期待なんか」
英「口とは裏腹ですね、受け取るの速すぎて引きました」
仏「うるせぇな」
紙袋の中には、――リンドウの花。深い青に、少しだけ紫が混じっている。
綺麗だけど、少しだけ寂しげな色だった。
仏「これの意味、知ってる。“悲しんでるあなたを愛する”ってやつ」
英「……へえ。物知りですね」
その目が、冗談を言ってるときよりずっと冷めていた。
仏「てか、お前の顔のクマ、日ごとに濃くなってんだけど?」
英「ええ、最近は仕事が死んでますので」
仏「誤魔化すのやめろ。マジで心配してんの。」
英「……心配されるような立場じゃないんですけどね、私」
仏「それ、またそうやって拗ねてるだろ」
英「拗ねてません。“現実”です」
イギリスは少しだけ肩をすくめて、相変わらず目を合わせないままだった。
昔からそうだった。調子がいいときはやたら近づいてくるくせに、弱ってるときは手が届かないくらい遠くへ行く。
英「……今日、来るか迷ったんです」
仏「は?」
英「けど、花を渡さないと……なんとなく、“終わっちゃう気がして”」
イギリスの声が、風にまぎれて聞こえにくくなる。
ああもう、やめろよ。そういう、胸の奥を引っ掻く言い方。
仏「終わんねぇよ。僕が、終わらせない。」
英「……そんなこと、軽く言わないでください、」
仏「軽くなんかないよ。お前の顔が今にも泣きそうだから言ってんだよ」
英「泣いてません、誰が泣くか」
仏「んじゃあ、リンドウなんか持ってくんなよ。自分の気分が花に出てんだよ、バレバレだぞ」
英「……ツッコみが鋭すぎて、花屋も泣いてますよ、きっと」
仏「バカかお前は」
そのやり取りで、ほんの少しだけ空気が軽くなる。
でも僕の心には、リンドウの色がじんわりと染みていた。
こんな風に笑ってるけど――でもどこか、僕の知らないところで、
ずっと君が泣いてるように見えて。
僕はそれに、
コメント
4件
ぐへヘヘ((殴 こういう感じ大好きです〜🫶
イギリスさんちゃんと休んでね… あぁぁぁマジでこのカプは一生推せる ニヤニヤしすぎて親に何その顔wって笑われました☆1日3話も投稿してくれるのも神だし、もう最高☆☆☆☆