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俺は、その微笑みに少しだけ違和感を覚えた。
なぜそんなに前から知っているかのような顔をするのか。その疑問を晴らそうとゼノに問いかけようとすると、 外からポツリ、と音がした。


……雨だ。


窓の外を見ると、アスファルトに雨の波紋が少しずつ広がっていた。

アメリカでは久しぶりの雨だった。

当然、俺は傘なんて持っていない。


「おぉ、雨だね。いつぶりかな」


ゼノはそう言いながら、今座っている机の真横にある、少し大きな窓に両手を添えて外を眺めた。

薄暗い図書館に、ポツポツと雨音が静かに混じる。


俺はあまり天気予報は見ないから当然雨が降るなんて知らなかった。

しかしゼノは、背負っていたリュックサックを下ろし、中から黄色のレインコートを取り出す。

白衣を丁寧に畳んでしまうその動きは、妙に慣れていた。


「スタンは、何か雨具を持っているのかい?」


突然あだ名で呼ばれて、少しだけ面食らう。


「……いや、持ってねぇ」

そう答えると、ゼノはフードをかぶり終え、もう一度リュックの中を探った。

そして、小さな折りたたみの傘を取り出し、机の上に置く。


「今日は、君に貸すよ」


何でもないことのように言って、こちらを見る。


「また、いつかここで会ったときに返してくれ」


そう言って、あの儚い笑顔を浮かべた。


ギィ……と音を立てて扉が開く。

ゼノは振り返らず、そのまま外へ出ていった。


俺は、机の上に置かれた傘をしばらく見つめてから、手に取る。


(……また次、か)


そんな約束、するつもりもなかったはずなのに。

自然と、そう思っていた。


俺も扉を開ける。

外は、思ったよりもしっかりとした雨だった。


傘をさした瞬間、胸の奥がひやりとする。


(……どーやって帰んよ)


雨音だけが、やけに大きく響いていた。




僕と君だけの図書館

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