青桃、赤桃
3人で付き合ってます
わんくっしょん
似ている作品があったとしてもコニカルビーカー様の絵から自分で考えたものです
決してパクリではございません&参考になったものもございません
私のものと似ているのがあった場合、コメントで教えていただけると幸いです
もうわんくっしょん
この作品は、irxs様の二次創作、特にnmmnというデリケートなものとなっております。
ご本人様の名前、イメージをお借りしただけであり、一切関係ありません。
拡散もおやめください。
nmmn界の治安維持にご協力お願いします。
「・・・本当に・・・こんなので会えるんだったら・・・苦労してないよね・・・w」
6畳ほどの畳の部屋にごろりと寝ころび、着物をはらりとはだけさせる。
適当に帯を枕代わりにし、縁日の中、なんだか怪しげなおばあちゃんに半ば強制的に手渡された水風船を弄ぶ。
二人が俺の前から姿を消してもう何年たったか。
俺はいまだに、二人の色を、影を、香りを、希っている。
――――――――――――――――――――――
一人、誰かと行くわけでもないのにわざわざ着飾って出向いた花火大会。
ゆっくり、ゆっくりと足を進めてゆく。
二人との思い出を振り返るように、探すように。
カラン、コロン、とゆっくり、心地よく響く下駄の音とは裏腹に俺に心臓は早まっていた。
もしかしたら、会えるかもしれない。
俺と同じように、期待に胸躍らせてここに来ているかもしれない。
今年こそ、今年こそ・・・
「そこの兄ちゃんほら、そこの桃色の髪の子」
「・・・俺です、か?」
「そうさ、お前さんだよ」
「俺に何か、用でもあるんですか?」
「兄ちゃん、彼氏さんと会いたいだろ?」
「・・・彼氏って」
「わたしゃ下手に長く生きてないからね。わかるもんなんだよ」
「は、はあ」
「で?会いたいのか、会いたくないのか。どっちかい?」
「そんなの・・・会いたいに決まってるじゃないですか・・・」
「そうだろう?」
「でも!・・・でも、俺のせいだから、俺のせいで、」
「そこでこいつだ。」
「これ、ですか?」
最初の不信感はどこへやら、少し怪しげなおばあさんの手からぶら下がるものを見つめる。
おばあさんが持っていたのは、ごくごく普通の水風船だった。
・・・ただ1点を除いて。
その水風船は、内側からキラキラと光っていた。
蛍のあの瞬きを、星のあの煌きを、生命のこの輝きを、閉じ込めたような神秘的な光だった。
「この水風船にまずは願い事をする。そして、近くにある中で一番大きく開く”花”の前で割るんだ。」
「はあ」
「信じれないかもしれないがな。」
少し笑みをこぼすおばあさん。
願い事。
二人に、もう一度会いたい。
一度だけでいいから、二人に・・・
「願いは一つに付き1個まで。叶っている時間は、花の大きさと、あんたの思いによって変わる。」
「・・・ちなみに、幾らなんですか?」
こんなことを聞いてしまう自分が少し怖い。
「私があげようと思った人にしかあげてないからね。タダでいいよ。」
タダなんだ。
お金を取られるわけではないんだ。
そうだ、もし叶わなくたって、こちらに損はないのだし。
・・・もし命がかかっていたとしても。
二人のいない世界でここまで生きてきた自分を褒めてほしい。
「・・・ください。」
「あぁ。あげるよ。」
おばあさんは俺に二つの水風船をくれた。赤と青。二人の色。りうらと、いふまろの色。
俺が、恋焦がれ、愛し、失い、奇跡を希った色。
受け取ったとたん、強い風が吹いた。
反射的に目をつぶり、その目を開いた時にはあのおばあさんは消え、あの水風船の光もなくなっていた。
ボケっとしていた俺を心配したのか、水風船の番をしていたと思われる青年に声をかけられる。
俺は100円をはらって、ピンク色の水風船を取った。
夢ではないことを示す唯一の証、赤と青の水風船と並べると、少しだけ光が移った気がした。
―――――――――――――――――
家に帰り、ふと我に返る。
まだあの光を湛えている水風船。
でも、本当にこんなもので会えるのだろうか。
二人がいるかもしれないという望みだけで行った花火大会。
二人が可愛いと言ってくれるのがうれしいから、少しかわいらしい髪飾りもつけて。ヘアアレンジもして。
それでも会えない。
・・・会う資格もないかもしれないけれども。
「まろと、りうらに、会いたいなあ」
ポツリと零れた、いつもの独り言。
このまま虚しく消える、
はずだった。
ごろりと寝返りを打つと、パン、という乾いた音が立て続けに二つ。
「やば、水風船割っちゃったじゃん」
信じる信じない云々の前に水風船なのだから、中身は、
「畳に水滲みちゃう・・・!」
水が滲みていて大惨事かと思いきや。
「・・・あれ?もう、乾いて、る?」
水の滲みどころか、風船の残骸も残っていなかった。
「なんでだろ」
「おーいないくん、何してんのー?」
「急にきょろきょろするやんwなんかあったん?」
水風船と引き換えに現れた、愛しい声。
「りう、ら・・・?まろ・・・?」
「どったんないこたん」
「急に甘えたじゃん。」
「りうらぁ・・・!まろぉ・・・!会いたかったぁ!」
「俺も会えてうれしいよ。」
「いっつも会ってるけどね。りうらも毎回嬉しいよ」
涙でぐしゃぐしゃになった顔をまろは優しくぬぐってくれ、りうらは俺を優しく優しく抱きしめてくれた。
ここ数年感じられていなかった優しさ。
もしかして、あのおばあちゃんの言ってた花って、偽物でもいいのかな?
造花のように、偽物の愛。
二人にはいつも一緒にいる設定になっているのだろう、でも、俺はそうではないからどうしてもこんな反応しかできない。
頭の中にかすかにある「これは偽物だ」という意識に蓋をしてしまいそうになる。
すべて忘れて、今はこの二人の愛に溺れたい。
「んふふ、ないくん可愛い♡」
「やっばい、その顔そそるわ」
「ないくんの泣き顔だもんねぇ♡」
「りうらテンション高くね?」
「逆に聞くけどさ、なんでこの状況でテンション上がらんの?」
「・・・上がるに決まってるやろ」
久しぶりなこの会話。
そうしていっつもこのまま押し倒されて・・・
・・・いいよね?このまま快楽に、幸福に身をゆだねても。
「・・・ね、まろ、りうら」
「「なに?ないこ/ないくん」」
「抱いて・・・♡」
「忘れらんないぐらい、いっぱい、いーっぱい愛して♡」
一気に雄の表情になる二人。
あぁ、このままこの幸福が続けばいいのにな・・・
次の日、体の痛みと差し込む朝日に目が覚める。
周りを見渡しても、二人は影も形もなかった。
ただ、光をなくし、涙をいっぱいに湛えた水風船が転がっているだけだった。
―――――――――――――――――――
それからというもの、花火大会が終わるまで同じような夜を過ごし続けた。
おばあちゃんに水風船をもらい、願い、割り、愛し合い、消えゆく二人に涙を流す、そんな日々。
少し違ったのは、二人といる時間が少しづつ長くなっていったこと。
そして花火大会最終日の今日には丸1日過ごせるまでになっていた。
「ないこ、めっちゃかわええ恰好しとるやん」
「ねー!浴衣めっちゃ似合ってるし!」
「ありがと///」
「りうらやった髪もない君似合っててよかった~!」
「髪飾りなんか俺らの色じゃん。良く見つけたな、こんなの」
「うん、お気に入りなんだ!」
「りうらのことも褒めて!」
「りうら、ありがとうね」
「ないくん・・・!好きぴよまる~!」
「まろもないこ好き!」
「俺も、二人のこと好きだよ。」
もう、このまま偽物の愛に溺れたままでいいかも。
そう思っていた時に、邪魔者(しんじつって読んでほしい)が現れてしまうのは定めなのだろうか。
三人で来た花火大会。
人ごみの中で、二人とはぐれてしまった。
スマホを取り出し、連絡を取ろうとするも、あることに気が付く。
二人はあくまでも偽物。
本物と同じ連絡手段は使えない。
こんな簡単なことも分からなくなってしまった自分と、改めて突き付けられた真実に怖くなる。
少し怖けれどももう一度人混みに繰り出そうかと思い、前を向く。
しかし、運悪く柄が悪そうな男たちに囲まれてしまった。
体中から一気に汗が噴き出してくる感覚がする。
フラッシュバックする記憶。
男たちの言葉は全く聞こえなくなり、呼吸が荒くなる。
あのとき、あんな事をしなければ。
助けを呼ばなければ。
二人が来なければ。
俺だけで解決できていれば。
殺されるべきだったのは、俺だったのに。
身に覚えもないことを言われても何も抵抗せず、そのまま死んでいれば。
あの日も、今日と同じように二人と花火大会に来ていた。
そして、ここまでほぼ同じことが起こった・・・
要するに、こうやって男たちに絡まれていた。
嫌な予感がして、自惚れかもしれないが必ず探しに来てくれるであろうりうらとまろとのLINEグループにこないで、とだけ送った。
そいつら曰く「お前に貸した金が帰ってきていない」だそうだが、俺はカード払いのものもしっかりと払っているし、ましてや借金なんて成人前に両親にしたぐらいでそれもしっかり返している。
反論しても聞く耳を持たないそいつら。
ましてや、「お前が死ぬか、俺たちの性奴隷にでもなってくれるのだったら許してやろう」だなんて。
こんな脅しが漫画だけでなく現実にもあるのかと現実逃避している頭を働かせる。
どうすれば大人な対応ができるか。
どうすれば、「なあ、俺らのないこに何してるん?」ぇ…
「ないくん嫌がってんじゃん。そんなことも分かんないの?」
「お前らには関係ないことだ」
「関係あるけど?」
まろとそいつらが睨み合う。りうらは俺に「ないくんはなんもしゃべんなくていいからね」とだけ告げてまろの隣に立つ。
その時はただ、二人が来てくれたことが嬉しくて何も考えていなかった。
たった四文字の冷たいメッセージ、それでもその四文字の本当の俺の心を読み取ってくれたことが嬉しくて仕方がない。
そんな俺の耳は、何の音も入っていなかった。
気が付いた時には、さようなら、という言葉を残して男たちと去る二人の姿しかなかった。
きっと、俺の代わりに連れていかれたのだ。
きっと、俺の代わりになき叫ぶんだ。
きっと、俺の代わりに・・・!
・・・意識が現実に戻ってくる。
でも息は荒いままで、苦しくて、呼吸の仕方が分かんなくなる感じがして、
あれ、このまま放っておけば、死ねるんじゃない・・・?
「りう、ら・・・ま、ろ・・・」
でも、最後に、お願い、ねぇ、
「ふたりに、あいたいな」
呟いたとたんに聞こえた、ドーンという花火の音。
かすかに聞こえる、風船が割れる音。
そして聞こえた、
「ないこ!」
「ないくん!」
愛しい声。
「顔色悪すぎやろ!大丈夫か?!」
「ないくん息して!ほら!」
ぎゅっと抱きしめられて、りうらの鼓動が伝わってくる。
背後からは、まろの鼓動。
俺が希い続けていた、二人の色も、影も、香りも、そのままだった。
「りうら・・・?まろ・・・?」
「ないこぉ!!!!」
「やっと会えたよぉ!!!!!!」
「ほんとの、りうらとまろなの?」
「うん、ほんとだよ。」
「ずっと、ずっと探してた。」
「俺も、俺もずっと探してた。」
「そんで、なんかおばあちゃんに水風船もらってな。」
「花って言われても分かんなくてね~」
「なんか信じがたかったのもあって、スズランの前で割ったわけよ。あの通りに生えとるやつ」
「そしたら・・・」
「会えたんだ、まろと、りうらに」
「うんそういうこと。」
俺たちの顔を花火の光が照らす。
幸せを詰め込んで、最後の花火がひときわ大きく咲き誇った。
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