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(ああ……もう、認めるしかないじゃないか)
でもそれをはっきりと口にするのは憚られて、口籠る。するとナギは困った様な表情を浮かべながら小さく溜息を漏らし、コツンと胸元に頭を預けて来た。
「……お兄さんって、イケメンのクセにヘタレだよね」
「な……っ」
「小学生でもわかるような、みっともないヤキモチ妬くし? 自分の事になると途端に臆病になるし? ホント、呆れるくらい」
グサリグサリと容赦なく刺さる棘に、思わず涙が出そうになる。自覚はしているが、改めて他人に言われるとかなり傷つく。
「そ、そこまで言わなくてもいいだろ」
「言いたくもなるよ。せっかく俺がこれだけお膳立てしてあげたのにさぁ……。でも、そういう所も俺は好きだよ」
ちゅん、と触れるだけのキスが唇に降ってきて、思わず固まってしまう。
今、自分は何をされた? 好きって言われた? 誰が? 誰を? 思考が追い付かず混乱していると、悪戯っ子のような笑みを浮かべたナギと目が合った。
「なに、ハトが豆鉄砲喰らったような顔してるのさ。そんなに意外だった?」
「い、いや……ごめん。少しビックリして……」
驚きのあまり上手く言葉を紡げない。
だって、そんな素振り今まで一度も見せたことなかったじゃないか。
「そうかなぁ? 俺、めちゃくちゃアピールしまくってると思うんだけど……。鈍すぎじゃない?」
「……さっきから棘が刺さりまくってるんだけど」
ジトリとした眼差しを向けると、ナギはクスクス笑いながらゴメンと謝ってくる。
「事実じゃん。お兄さんってさ……自分の気持ちに気付くの遅すぎて、好きな人にフラれてそうだよね」
「う……っ」
何気ない一言が胸に突き刺さる。
実際問題、自分の気持ちと向き合うのが遅すぎて、本気で手に入れたいと思った男に逃げられたのはここ数カ月以内の事だ。
そんな過去の恋愛事情を的確に突かれ、ぐうの音も出ない。
「あれ? ……図星?」
「……五月蠅い」
何もかも見透かされているようで悔しくて堪らない。せめてもの抵抗で不貞腐れた表情を浮かべると、ナギが口元をにやりと緩ませて目を眇めた。
「へぇ、……そうなんだぁ。ふぅん?」
「なに?」
「別にぃ~? ただ、ちょっと可愛いなって思っただけ。こんなにイケメンで、いいモノ持ってるのに、恋愛に関してはポンコツとかほんっとウケる」
するりと腿を撫でられ、股間にナギの指先が絡む。服越しではあるが、形を確かめるようになぞられると、ヒクリと腰が震えた。
「もしかして、付き合ったことも無いとか言わないよね?」
「……」
「え? マジで?」
「……うるさいな。必要性を感じなかったんだから仕方が無いだろ」
昔から男にも女にもモテていたから、性処理に困ることは無かったし、特定の誰かを本気で好きになったこともなかった。
一人の人間と付き合うという感覚が自分にはいまいち自分にはわからない。
「ほんっと意外。恋愛豊富そうな顔してるのに」
ニヤニヤと口元を歪ませ、揶揄うように声をかけてくるナギに苛立ちを覚え、ムッとしながら反論する。
「特定の相手なんて面倒くさいだけじゃないか。付き合うメリットを感じないよ。後腐れなく出来ればそれでいいじゃないか」
「身も蓋もないなぁ。あ! そうだ……。じゃぁさ、俺と付き合ってみない?」
「はい?」
突然の提案に驚いて思わず声がひっくり返った。一体どういう意味なのか?
と首を傾げると、ナギはにっこりと笑みを深めながら話を続けた。
「俺はお兄さんのこと好きだから、付き合いたいと思ってる。正直コッチの相性も凄くいいし、お兄さんも俺の事は嫌いじゃないでしょ? だったら付き合っちゃおうよ」
「…………」
「それにさぁ、付き合ってもないのに今朝みたいな事されても困るし。このままだとお兄さん、ただの痛い人みたいになっちゃう」
確かにそれは否めない。いや、むしろ既に痛い奴になっているかもしれない。
「俺が付き合う良さってのを教えてあげる。そして、いつか必ず……、お兄さんに俺のことめちゃくちゃ好きだって言わせてみせるから」
その日は結局押し切られる形でナギの家に泊まることになった。
「流石に狭くない?」
「んもう、わかってないなぁ。この窮屈さがいいんじゃん」
狭い浴槽の中、股の間にすっぽりと収まるようにナギが座り込んでくる。背中をこちらに向けているせいで表情は見えないが、楽しげに鼻歌を歌いながら身体を預けてきていて上機嫌な様子が伺える。
(……にしても)
目の前にある項が眩しい。濡れて張り付いた髪の毛先からポタリポタリと滴が落ちていく様は妙に艶めかしくて目の毒だ。しかもシャンプーの良い香りまで漂ってきてなんだか落ち着かない。
そして何より密着した身体が熱い。お湯の熱さのせいもあるが、それだけではない気がする。
何となく居たたまれない気持ちになり、ふいっと視線を逸らすとナギが振り返ってじっと見つめてきた。
視線が絡み合い、思わずドキリとする。
「おにいさんのエッチ。さっきから、俺のお尻に硬いのが当たってるんだけど?」
「……っ!」
指摘されてカッと頬が熱くなるのを感じた。咄嵯に身を引こうとするが、それに気付いたナギがさらに尻を押し付けてきて、ますます体が密着してしまう。
「あはは、もっと硬くなった……。お尻の割れ目、そんなに気持ちがいいの?」
「ちがっ……」
否定しようと口を開くが言葉にならない。
柔らかい双丘が、硬くなり始めたペニスを挟み込むようにして擦り付けられ、ゾクゾクとした快感に襲われる。
「ん……、ねぇこのままお風呂の中でシちゃおっか?」
「なっ!?」
耳元で囁かれた提案にギョッとして、思わず息を呑む。
すると、目の前の肩が震えクスクスと忍び笑いが聞こえてきて、今の言葉はどうやら冗談だったらしいと悟る。
完全に弄ばれている。そう思うと無性に腹立たしくて仕返しをしたくなってきた。
少しくらいならいいだろう? と思い至り、腕を伸ばして細い首筋をするりと撫で上げる。ビクンと跳ね上がる体を押さえつけながら、そのまま後ろから抱きしめるようにして胸元に手を伸ばすと、指先にツンと尖った突起が触れた。
「や、ちょっと! どこ触ってんだよっ」
「どこって、シて欲しかったんだろ?」
胸元の尖りを指で弄びながら耳元で囁いてやると、ナギは一瞬息を詰まらせた。
「っ、冗談だったのに……っ、んぁっ、ねぇ、流石にお風呂場は響いちゃうから……ダメだって、は……んんっ」
くにくにと指先で転がしてやる度に甘い吐息が漏れる。
「好きなくせに。君が声出さなきゃいいだけの話だろ?」
「ちょ、そんな……っ」
抗議の声を無視して耳の中に舌を差し込み、ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながら舐めてやると、途端にお湯がバシャンと音を立てた。
「ん……あっ、や、ぁっ耳、やめっ」
逃げようとする体をしっかり抱き留めたまま胸と耳を執拗に責め立てると、ナギの口から切なげな喘ぎが零れる。
先程までの余裕ぶった態度はどこに行ったのか? ただでさえ敏感なのに感じやすい場所を同時に攻め立てられて、もどかしそうに腰を押し付けてくる。
「っは……っ」
「おや? 風呂場ではシたくないんじゃなかった?」
「い、意地悪……っ」
恨めしそうに睨んでくる瞳には薄らと涙が滲んでいる。
それを見下ろしながらニヤリと口角を上げると、ナギは悔しそうに唇を噛み締めた。
ああ、なんて可愛らしいんだろう。
もっといじめてやりたい。嗜虐心がくすぐられるような感覚を覚えて思わず喉が鳴る。
「はぁ……も、いいから……っお兄さんのソレちょうだい?」
すっかり蕩けた顔で見上げられて下半身に血が集まるのを感じる。瞳を潤ませおねだりする姿はとても淫靡で堪らない気持ちになる。う言って自信満々に笑うナギは、やっぱり天使のように魅力的に見えた。