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ザッカル局長との話し合いが終わり、新しい船の準備に二日くらい掛かるみたいだから、それまで私は待機となった。女王陛下のご意志が関わってくるなんて思っても見なかったけど、許可は許可だもんね。

責任重大ではあるけど、期限は指定されていない。お土産に関しては、今後どうやって用意しようかな。今回は良いけど、次回以降は地球の産物を持ち帰ってお金に変える。

交易が必要になるね。開発局の予算は少ないし、私の懐事情は寒いんだよ。

意気揚々と家に帰ってみたけど、フェルが居ない?

「お母さん、フェルは?」

「フェルちゃんはまだ帰ってきてないわね。里を見て回ってるんじゃないかしら?」

「ふーん?」

なら私も行ってみようかな?

私は家を飛び出して羽ばたき、交流センターがある浮島へ飛んでいくことにした。

うん、やっぱり空を飛ぶのは楽しい。地球でも飛べるかな?地球の人たちに許可を貰わないとね。

「それが、面会のあと彼女は飛び出してしまいまして。てっきりお戻りになったのかと」

「えぇっ!?」

交流センターに到着した私は職員さんにフェルの事を尋ねたんだけど、返ってきた言葉に絶句した。飛び出した!?あの大人しいフェルが!?

「何があったんですか!?」

「その、間接的にしか聞いていないんですが……」

受付のお姉さんの話だと、フェルは里への出入りを拒否されたみたい。なんで!?

「リーフ人は同族意識が強いって聞いてたんだけど。フェルだって悪い子じゃないんだし、何で?」

「あの子が二対の羽を持っているからよ」

私の疑問に答えてくれたのは、近くに居たリーフ人のお姉さんだった。

「二対の羽?それが何だって言うの?」

「リーフ星では、二対の羽は不吉を呼び込むと言われているの。あの子は髪の色も違うし、里に災いを呼び込んでしまうわ。異質な子だもの」

「なにそれ!?違いが何なの!?フェルは良い子なのに!」

「私達は貴女達の保護で生きていくしかないのよ。異質な子を受け入れることなんて……」

お姉さんの言葉で私の中で何かが切れる音がした。

「分かった。じゃあ、フェルは私が保護する。連れてきたのは私なんだから、文句無いよね?」

「待って、異質な子を保護したら種族間の問題になってしまうかもしれないわ」

受付のお姉さんが注意してきたけど……異質だからって受け入れないのは……例え伝承があるから仕方ないにしても……うん、私なら問題ないよね。

「なら問題ありませんよね!私だって異質なんだから!」

私は自分の銀の髪を見せ付けながら翼を広げて空へ舞い上がった。

「アリア、直ぐにフェルを見付けて!」

『畏まりました。マスターフェラルーシアの反応を探知……ナビゲーションを開始します』

ブレスレット型の端末からアリアが応えてくれて、フェルの居場所へナビゲーションを始めてくれた。流石は相棒!

私はナビゲーションに従いながら空を飛ぶ。

「……ねぇ、アリア。さっきの話だけど」

『リーフ星では二対の存在は異端として排除されてきた様です。かつて災いを呼び寄せたリーフ人が二対であったことから始まった伝承です。記録に残されている限り、これまで数人二対の羽を持つ子供が生まれ、全て処理されているみたいです』

「なにそれ!?昔の悪い人が二対だからって理由だけで!?」

『リーフ人は閉鎖的かつ排他的な種族でしたから、異端に対する抵抗は強いものがあります。まして、伝承の通りの人物となれば排斥の対象となっても不思議ではありません』

まあ、アード人がリーフ人と友好関係を築けたのは奇跡だとも言われてるけどさ。

でも、そんな理由で同胞に見捨てられたフェルは可哀想だ!

彼らがどうしても受け入れないなら、私が受け入れる!なにより、こんなことを言われてフェルはとても傷付いているはず!皆を失ったばっかりなのに、こんな対応はあんまりだよ!

フェルには直ぐに会うことが出来た。地上、つまり浮島ではなくて数少ない大地の一角にある大きな滝の側に居た。

大地は特別な場所だけど、一部以外は解放されてる。この辺りは雄大な自然が残されている保護区域。

滝の側の岩に腰かけたフェルを見付けて、私はそっと着地して翼を畳んだ。

「フェル」

フェルの背中に声をかけると、彼女はゆっくりと振り向いた。

「あっ、ティナ。ごめんなさい、勝手に飛び出してしまって」

……フェルは笑ってるけど、目が赤いよ。

私はなにも言わずに隣に座った。

「探したよ、フェル。もう、飛び出したって聞いたときはビックリしたんだからね?」

「ごめんなさい、ティナ。ちょっと……心を落ち着かせたくて」

「ん……話は聞いたよ」

私が素直に告白したら、フェルへ悲しげな目を向けた。

「……ごめんなさい」

「何で謝るの?」

「せっかく助けて貰ったのに、私は……私が居たから皆が……」

「伝承の事?それなら気にしないよ。むしろ、フェルを受け入れないリーフ人達に腹が立ったかな」

「ティナ……?」

「姿が異質だから、なに?私だってそうだよ。それに、本当に災いを呼び寄せるなら私は今頃生きてないよ」

文化を否定するつもりはないけど、全てを失って天涯孤独になったフェルを突き放す人達を私は好きになれない。

「でも私は……里に行けませんでした。同胞達に受け入れて貰えない以上、私の居場所なんて……」

「私の隣じゃダメ?」

「ティナ!?」

ビックリしてる。

「私だって異質なんだよ。それに、フェルが本当に良い子だって知ってる。私の大切な友達だもん。お父さん、お母さんも受け入れてくれるよ」

里に受け入れて貰えないリーフ人の末路は酷いものらしい。前例があるみたい。

でも、リーフ人がフェルを受け入れないなら私達が受け入れる。それだけだよ。

「……大変なことになるかもしれませんよ?」

「むしろどんと来いだよ。フェルこそ後悔しないでね?存分に振り回してあげるから」

私は泣きそうなフェルに笑顔で応えた。

地球との交流、宇宙の調査。大変なのは変わらない。それでも、フェルが支えてくれるなら頑張れそうな気がする!

「……ありがとう……ティナ」

涙を流しながら抱き付いてきたフェルを私は優しく抱きしめた。

フェルも色々あって余裕がないんだ。私は口下手だけど、想いが伝わったなら……良かったかな。

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