こんにちは、リーフ人のフェラルーシアです。ティナを初めとして親しい人からはフェルと呼ばれています。
アードの交流センターで、現地の同胞から一族からの追放と除名処分を受けた時は目の前が真っ暗になったのを今でも覚えています。理由は髪の色と二対の羽でした。
家族を失い、漸くたどり着いた場所で同胞からも存在を否定される。多分、精神的に一番危ない時期でした。
そんな私に光を与えてくれたティナ、そして私を受け入れてくれたご両親やドルワの里の皆さん。里長のティリスさんには本当にお世話になりました。先日初対面としてティナに紹介されましたが、ティナがお仕事の最中に会ってるんですよね。あちらも私を見定めたかったみたいで、様子を見に来てくれたんです。
とても優しい方で、里の皆さんに私を紹介して暖かく受け入れてくれました。ただ、自分をティリスちゃんと呼ばせようとしてくるのは困りましたけど。
いやまあ、見た目は本当に小さな女の子なんですよ。ティナも小柄ですが、ティリスさんは最早幼女と呼べるくらいに。
私は少しでも恩返しがしたいのと、出来るだけ傍に居たくて今もティナと一緒に旅をしています。先日のラーナ星系での戦いにも参加しました。ティナの無茶な行動にはヒヤヒヤさせられてしまいましたけど。
たくさんの犠牲が出てしまいましたが、それでもティナは200名弱の命を救いました。色々と問題も起きたみたいですが、人命は何よりも尊いというティナの考えには賛成します。何故かって?
だって、彼女の無茶や形破りが無かったら私は生きていないのですから。
そんなティナが今頑張っているのがアードから地球単位で10万光年彼方にある惑星、地球との交流です。銀河系の反対側に位置するこの場所に文明が存在することをなぜティナが知っていたのか。謎は多いですが、聞くつもりはありません。ティナにだって事情があるんですから。
地球は豊かな自然と海を持つ緑の惑星です。陸地面積はアードの倍以上、人口もアードより遥かに多いです。アリアが集めてくれた地球の環境の写真に感動してしまいました。何と雄大な自然が残されているのかと。
文明レベルが上がった惑星は手付かずの自然が残されていないのが一般的だと学びましたので、素直に驚きました。まだ発展過程だと見ても良さそうです。
あと食事がとても美味しい!保存食の類いでしたが、開拓団で栄養スティックしか食べた事がない私にとってアードの食事だけでも美味しいのに、地球の食べ物は更に上をいきます。
「アリア、地球の情報をお願いします。特にネットワークを重点的に」
『少しお待ちを、マスターフェル』
私は今プラネット号の居住区にある談話室でソファーに座って端末を弄っています。ティナが地球からのプレゼントとして持ち込んだこの絨毯はとても心地が良いです。
アードやリーフで一般的な草を編んだ敷物よりずっと肌触りが良いのでお気に入りです。何より汚れないので、裸足でもティナに怒られませんし。
私達リーフ人は何か理由があるのか足を圧迫されるのを極端に嫌います。もちろん私もです。開拓団時代、船外作業の際は宇宙服を身に付けないといけませんでしたが、あのブーツの圧迫感は忘れられません。早く脱ぎたくて作業の手順を誰よりも早くマスターしてしまったのは秘密です。
そんな私を気にしてか、ティナはプレゼントされた絨毯を全部使って談話室と私達の部屋の床に敷き詰めました。草で編んだ伝統的なサンダルすら嫌だった私からすれば、まさに天国のような環境です。益々ティナのことが好きになったのは言うまでもありません。
素敵な環境や食べ物、文化のある地球ですが、地球人については正直少し怖いというのが私の感想です。
基本的に争いを好まないリーフ人の立場からすれば、同族相手に数えきれない程の戦争を仕掛け膨大な犠牲者を出す地球人の歴史は恐ろしいものです。もちろん排他的なリーフ人社会にも争いはありましたけど、比ではありません。
現地でマンハッタンの奇跡と呼ばれているティナの活躍で概ね好意的ではありますが、中には否定的、もしくは敵対的な意見も少なくありません。
意見などは個人の自由だと思いますけど、明らかに害意を持つ地球人が居るのは間違いありません。
アリアはこれら否定的な意見などを意図的にティナに伝えていないと教えてくれました。こんな情報を見たら、ティナが傷付いてしまうのは明白です。それだけは許さない。
ティナが私を地球へ連れていきたいと思っているのを知った時は迷いましたが、地球人の悪意を知った今なら迷いはありません。地球へ行くことを決意しました。
私も荒事が得意というわけではありませんし、他者を傷付けるのは抵抗があります。でも、万が一の時は私が矢面に立ってティナを守る。あの日、私はティナに助けられたんです。今度は私が助ける番。
『マスターフェル、地球全体の世論は地域によって差がありますが、概ねティナに好意的なのは変わりません。ただ、ある独裁者がティナを自分の妹だと主張しています』
……ビーム砲撃っちゃダメかな?
『チャージしますか?』
「冗談ですよ!? 凄い主張をする人だなぁ」
『権威を高めるための発言と推測されます』
だからと言って宇宙からのお客様を妹扱いするんだ?無理がありそうですけどね。念のために。
「その地球人、アード人じゃありませんよね?」
『翼がありませんから、この時点でアード人である可能性はゼロです』
「良かった。ティナが気付かないように操作をお願いしますね?」
『畏まりました。既に地球側も隠蔽に動き始めています』
下手をすれば外交問題ですからね、揉み消そうとするのは当然です。
『マスターフェル、ティナが会議室を後にしました。そのままギャラクシー号に搭乗、此方へ帰還します』
「はーい」
ティナが帰ってくる。それを聞いただけで自分が上機嫌になっていることに気が付きました。我ながら単純だとは思います。
結局ティナは疲れ果てていたのか私に飛び付いたまま眠ってしまいました。夕食やお風呂も用意していたんですけど……まあ、いっか。
私は手早く料理とお風呂に保存魔法を掛けてティナを部屋へと連れ帰り、リボンをほどいてサンダルを脱がせてベッドに寝かせて……ん、私も寝ましょうか。
隣に潜り込んでぎゅっとティナを抱きしめました。
「お休みなさい、私の小さな勇者様」
今日は良い夢が見られそうです。
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