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北門から家までは町中を歩いて40分ぐらいかかる。
シロは隣りで尻尾をフリフリ軽快に歩いている。森の中でいっぱい遊べて楽しかったようだ。
そして、中央広場にさしかかったので串焼きの補充をしておく。インベントリーに入れておけばいつでも焼きたてが味わえるのだ。
散策がてら串焼き屋をまわっていると道を挟んだ向かいに酒屋を発見した。
酒樽が多く並ぶ店内を覗いていると、
「うちは良い酒をたくさん置いてるから、ゆっくり見ていってくんな」
と酒屋のおやじはなかなか愛想がいい。
大樽・小樽いろいろ置いてあるが、いったいどんな物があるのだろう。
「そうだなぁ~、まずはこのワインだな。こいつは産地が近いから安いし品質も良い。次を言えば~、このエールだな。これは直接買付けしているやつで、そこらの酒場にも卸している極上品だ」
などと丁寧に教えてくれた。
また、”ドワーフが好む物” をと尋ねてみるとさっきのエールを指差してきた。
とりあえず、おすすめワインとエールを小樽で1樽ずつ買うことにした。小樽だと10リッター程入るのかな。
樽を両脇に抱えて路地に入り、インベントリーへ収納する。
あぁ、マジックバッグがあればこそこそしなくてもいいのに……。
シロの首輪の件もあるし、明日は魔道具店にいってみるかな。
それからは家に戻って薬草採取用に使う麻袋を10枚、このまえ野営地でいただいたハーブティーも仕入れ値で譲ってもらえた。
夕食まで時間があったので俺は裏庭に出て剣を振ることにした。
以前と比べても剣を振った感覚がだいぶ違ってきている。
振り抜いた剣は鋭く、風切る音もいい感じだ。
夕食後はリビングにてミリーちゃんに童話を語り聞かせた。――今日は白雪姫だ。
何故だかマクベさんも熱心に聞きいっていた。
自室に戻った俺は今日摘んできた薬草の仕分け作業を始じめた。
薬草はインベントリー内でそれぞれの種類別に保管され数量も表示されている。
なので、それを10本ずつテーブルに出していき、他の草でしばってひとまとめにしてから麻袋に詰めていく。
終わったら袋ごとインベントリーに保管しておく。
そして、寝る前には魔力操作の訓練だ。
ベッドの上で座禅を組み、心を落ちつけ瞑想する。
おっ、おおっ! すごい魔力の圧が昨日と比べて段違いだ。
その魔力の感じ方も……何というか色が付いたよう感じ?
おお、とにかく凄いのだ!
今ならエアハンマーも難なく出来そうである。
その魔力をぐるぐる回していき身体の隅々まで行き渡らせていく。
――おおおおおおおっ!
これは凄いな。何というか、力が漲っている感じ!?
ピーン! {魔法スキル身体強化を取得しました}
なるほど、身体強化は魔力操作と大きく結び付いているようだな。
んん~、さらに気を練っていく感じで……。
それでいて、よりスムーズに身体の中を循環《じゅんかん》させていく。
回す回す。よし慣れてきたぞ。
――おおおおおおおっ!
ピーン! {身体強化レベルが2に上がりました}
よっしゃ! 俺もこれで戦闘民族の仲間入りだな。
まさか、髪の毛がパッキンにはなってないよね……。
怖いねぇ。怖いから、俺寝る。 (by次元 大介)
次の朝。
剣の素振りのあとに身体強化の訓練もしている。
例のスパーサ○ヤ人よろしく気を入れないと強化できないようではダメなのだ。
その隙に一撃喰らってしまうし、主導権すら渡してしまうことになる。
だから、スムーズにだ。そう、よりスムーズに……。
と、その時である。隣にいたシロの存在感が増したのだ。
ん! なに事!?
横目でチラッとシロを見やる。
はぁ――――っ、なにやってんの!
そして、何よ? そのオーラは!?
やめてよ~、見てたら出来ましたみたいな~。
んっ、なにげにドヤッているよなシロのやつ……。
澄ましているが分かっているんだからな! 尻尾が隠しきれてないぞ。尻尾が。
くっそー、俺も頑張るかんな!
………………
朝ごはん食べた後は出かける準備をして冒険者ギルドに顔を出す。
薬草の入った麻袋を買取りカウンターへ持っていく。
「なかなか上手く採取しているな。鮮度もいいし、よし! 『良』を付けてやろう。次回もこの調子で頼むぞ」
そのように買取り受付のおっさんに言われ引き換え伝票がわりの木札を受け取った。
その足で今度は受付カウンターへ行き指導料と先ほどの木札を提出する。
それでようやく薬草採取の報酬である315バースを受け取ることになる。
因みにだが、買取り査定で『良』をつけてもらえると報酬が5%アップするのだ。
その後、例によってボロボロにされた俺は冒険者ギルドを出て、そのまま衛兵詰め所へ行ってみることにした。
すると、あの痩せぎす男は審議の結果、犯罪者として奴隷に落されることに決まったという。
それで、今日にも奴隷商がここを訪れ、男を引取っていく予定だそうだ。
「報酬の方は明日以降ならいつでも取りにきていい」
「なるほど明日ですね。それでは」
そう言い残し立ち去ろうとしている俺に、
「あっ、ちょっと待ってくれ!」
衛兵の一人から声がかかった。
何事かと振り返って聞いてみると、その奴隷商がちょうど今来ているそうなのだ。
応接室へ通された俺はここで少し待つように言われた。
ソファーに腰を下ろしシロをもふりながらしばらく待つ。
インベントリーから水筒を取り出し、水を飲んでいると扉が開いた。
「いや、待たせたな」
そう言って2人の男が応接室へ入ってきた。
俺は水筒を置きソファーから立ち上がると目礼をする。
「まあ、座ってくれ」
先方の衛兵にそう促されたが、あちらさんが座るのを見てから俺も座った。
シロも立ち上がり『どうしたの~』と俺を見ながら尻尾を振っている。――可愛い。
俺がソファーに腰掛けるのを見て、シロも再びお座りしていた。
「こちらは奴隷商のリッツさんだ。犯人を捕まえた人が来ているのなら、ぜひ会ってみたいと言われてな。それで同席してもらったというわけだ」
あとは、もっぱら事務手続きをするように進んでいき大銀貨2枚を報酬として受け取った。
「では、私はこれで!」
そう言って衛兵の方はサッサと出て行ってしまった。
奴隷商のリッツさんはニッコリ笑顔を浮かべている。
ああっ、もしかして『ぜひ会ってみたい』って言うのは営業するためですかぁ~。
いやいや、営業おおいに結構! 聞くよ、聞いちゃうよ男の子だからね……。
「奴隷に興味はおありですか?」
「それはまぁ、多少ですが興味はあります」
「では、ダンジョンなどに興味は?」
「ゆくゆくは行ってみたいですね」
「それならば、ぜひ奴隷の購入を検討するべきです。まず裏切ることがありませんし、戦闘向きの奴隷も多数おります。もちろん女奴隷もおります。契約次第でいろいろと調整することもできます。……いろいろと。人生のお供に・旅の護衛に・ダンジョンなどの戦闘に・そして夜にと……、よきパートナーになるかと思うのです!」
すっ、すごい! もと居た世界のテレショップもかくやといった営業トーク。
そこで俺はベタだがこう聞いてみた。
「でも、お高いんでしょう?」
「いえいえ。今なら特別に衣類と靴がセットでついて、な な なんと! …………あとは当商館にお越しください」