テラーノベル
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練習が終わった直後、カキは突然、ギターを背負い直した。
「行くぞ!」
マサカゲが顔を上げる。
「どこへ?」
「電子の神殿だ!」
「ゲームセンターだな」
ミステーがピラミッドの被り物を揺らす。
「新しい採掘ゲームが入った。地下には未知の鉱石が眠っている」
「ゲームセンターに地下はないだろ」
マサカゲが言う。
「画面の中にある」
「それなら本物の地下じゃないよ!」
メバルが防音室の入口から叫ぶ。
「カキちゃん、今日は寄り道しないって言ってたよね?」
「言った覚えはない!」
「言ったよ! 昨日!」
「昨日の俺と今日の俺は別人だ!」
「同じ顔で言わないで!」
カキはマサカゲとミステーを連れ、裏口から逃げ出した。
「待て、カキ!」
マサカゲが追いかける。
「採掘の時間は待ってくれない!」
「採掘ゲームが逃げるわけじゃない!」
三人は町のゲームセンターへ向かった。
店内には派手な音楽が流れていた。カキは目的の大型筐体を見つけると、目を輝かせた。
「見ろ! あれが俺を呼んでいる!」
「ゲームの鉱石は呼ばない」
「電子の神殿には、鉱石の魂がある」
「ミステーまで乗るな」
三人が筐体へ向かおうとしたとき、マサカゲが足を止めた。
「……あれは」
店内の奥に、サツキが立っていた。
ゲームをしている様子はない。片手にスマートフォンを持ち、画面を見ながら店内を歩いている。
カキたちは大型筐体の陰に隠れた。
「サツキがアオノを追っているのか?」
カキが小声で言う。
「ここにアオノはいない」
「それは、アオノがまだ採掘されていないからだ」
「違う!」
マサカゲはサツキのスマートフォンに表示された画面を見た。
地図の中央に、青い点がある。
点はゲームセンターの中で動いていた。
「位置情報だ」
「アオノの位置が表示されている」
ミステーが真顔で言う。
「つまり、アオノを採掘しているんだな」
「違う!」
マサカゲは二度目のツッコミを入れた。
サツキは店内を見回し、スマートフォンを操作した。
その画面に、アオノの名前と、いくつもの時刻が表示されていた。
カキは息をのんだ。
「すげえ……。アオノの行動予定が全部ある」
そのとき、ミステーが足元に落ちていた紙を拾った。
「これは、地図ではない」
紙には細かい文字が並んでいた。
『朝八時十二分、起床』
『九時二十分、防音室へ移動』
『十二時四十五分、レイカと会話』
『十八時三分、キッチンで水を飲む』
アオノの一日の行動が、分単位で記録されている。
マサカゲの表情が険しくなった。
「これはまずい」
「でも、サツキはアオノが好きなんだろ?」
カキが言う。
「好きだからって、ここまで調べるのは普通じゃない」
「好きな人の行動を知ることは、普通です」
突然、背後から声がした。
三人が振り向く。
サツキが立っていた。
カキは反射的に筐体の裏へ隠れ直す。
「い、いやー、俺たちはただ鉱石を探していただけで!」
「紙を返してください」
サツキは笑顔のまま手を差し出した。
ミステーが紙を握りしめる。
「これはアオノの魂の採掘記録だ」
「返してください」
「断る」
マサカゲがミステーの肩を掴んだ。
「走るぞ!」
三人はゲームセンターの出口へ向かって駆け出した。
「待って!」
サツキの声が追ってくる。
外へ出たカキは、息を切らしながら叫んだ。
「ゲームをしてないのに、すごいスリルだった!」
「喜ぶな!」
帰宅した三人は、すぐにメバルとK-Tへ事情を話した。
マサカゲが紙をテーブルに広げる。
メバルは記録を読むほど、顔を曇らせていった。
「これ、アオノちゃんの予定をずっと見てたってこと?」
「位置情報も確認できるようだった」
マサカゲが答える。
K-Tは紙を手に取った。
短い沈黙のあと、低い声で言った。
「監視されている」
室内の空気が変わった。
カキも、さすがに笑わなかった。
その頃、二階の防音室では、アオノがひとりで機械の調整を続けていた。
モニターの画面には、見慣れない接続履歴が表示されている。
「外部からのアクセス……」
アオノは画面を拡大した。
だが、アクセス元はすでに消えていた。
彼は首を傾げる。
「記録が不完全だ」
その背後、閉じた扉の向こうで、誰かが立ち止まった。
しばらくして、足音が遠ざかる。
アオノはその気配に気づかなかった。
#スクラッチャーズ
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コメント
1件
いやー、第3話、めっちゃ不穏になってきたな……! ゲーセンでのコメディタッチから一気にサツキのストーカー行為が露わになって、紙の行動記録とか位置情報アプリの描写がリアルで怖かったわ。特に「好きだからってここまで調べるのは普通じゃない」のマサカゲの冷静なツッコミが刺さる。最後のアオノの無自覚なシーンもゾッとした。続きが気になる展開だ🔥