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のあがようやく着いた後、みんなでご飯のことや遊びのことで楽しく会話しながら、人混みに入っていった。
去年以上の人混みだったので、すぐに離れ離れになってしまった。
えとは肌触りがとてもよい、シナバー色の可愛い小さな花が織られている着物の袖を、激しく振って、今頃きっと射撃でもやっているたっつんを探していた。
みんなが離れ離れになったのはきっとじゃぱぱの意図だろう、えとはそう考えた。
だって、みんなを仕切っていたのはじゃぱぱだし、居なくなりはじめたのもじゃぱぱだからだ。多分、さっきのたっつんの件を聞いて悪戯心で仕掛けたのだろう。悔しいというかなんというか……。
えとは、考えても仕方のないことをもやもやと頭の中でループさせていたら、いつも間にか、ほんと偶然で蒸し暑い人混みの中で、屋台の暖かい照明で照らせれているたっつんをえとは見つけた。
えとはたっつんを見つけた瞬間、ドキドキと少女漫画の主人公が壁ドンされた時のように胸が高鳴り、頬は熱を帯びてゆく。額から汗がぽたぽたと雨水のように着物へ落ちる。
「た、たっつん……!」
声が裏返って変な声が出る。
「あっ」
えとはハッとして恥ずかしくなって、両手で口を塞ぐ。彼を見ると思考がまわらなくなる。
気の良さそうな屋台のおじさんと話していたたっつんは、ほんの数十秒、気づくのが遅れて、赤らめて放心状態のえとにようやく気づいた。
たっつんはおじさんに少しの別れを告げて、えとに心配そうに駆け寄る。
「えとさん、顔真っ赤やけど大丈夫?」
たっつんは彼女の顔を目線を合わせて覗き込む。えとはもう、恋した乙女にたっつんがそんなことしてくるので熱中症になりそうだった。
えとはこの初恋キラーから離れるために、聖徳太子がギリギリ聞き取れるくらいめちゃくちゃ早口で答える。
「ダ、ダイジョウブダイジョウブ」
ぎこちないえとの様子にたっつんは少々違和感を覚えながらも、返答に安心した。
えとはあっ、とわざとらしく何か思い出したかのように言った。
「そ、そうだ!一緒に、や、屋台まわらない?」
たっつんは考えることもなく、素直に頷いて返事をした。