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「何でだよッ」

 無意識に口から飛び出した言葉は震えていて、隣にいる猫の耳がピクッと動いた。

開け放たれた窓から吹き込む夜風が頬を伝うものを乾かしてくれることを期待するが、髪が揺れるだけで乾きはしない。

 青と紫のグラデーションが美しい夜空に煌々と輝く星と月が浮かんでいる。 窓際に座っているからだろうか、いつもよりも月が眩しい気がする。

 艶々としている毛並みは触ってみると案外ふわふわしているのだと少し驚く。猫の尻尾がゆらゆら揺れている。少し小さな声でナァと鳴くのが可愛くて口元が緩む。

 どこらか来たのか、何の種類なのか、どうして私の元へ来たのか、ほとんど全てが謎なこの猫は妙に懐かしさを感じる。

 この猫にならと、少し大きな声で独り言を呟くことにした。

 「今日は付き合って1年の記念日なのにさ、あいつ行方不明になったって。意味わからないよね。」

「朝はいつも通りだったのにさ、少し出掛けた間にいなくなったんだよ!信じられないよ…」「いつまで経っても帰らないから探しに行ってさ、結局見つかんなくて、帰ったら玄関の前にお前が居たんだよね。」

 理解しているのか分からないが、猫の表情が変わった気がするので続けることにした。

 「それにさ…あいつ庭に指輪捨てて行ったとかあり得ない。」「お前が庭で見つけてきたあの指輪はあいつが私に告白する時にくれたものなんだよ。」

 自分の左手の薬指を見つめる。猫の毛の中でも月の光が反射してキラキラ輝いている。

 頬を涙が伝う。やっと止まったと思ったのに。

 猫がナァと鳴く。そっちを向くと猫が心配そうな顔をしていた。大丈夫だよと言いながら頭を撫でる。 本当は大丈夫なんかじゃないけど。

 「もう嫌いになったのかな。いつも文句ばっか言って傷つけて」「嫌われても仕方ないことばっかりしてきたし。」

 ナァンと猫が鳴く。慰めてくれてるみたいだ。ありがとって言ったら少し笑った気がした。

 「お前あいつに似てるな」

 猫の尻尾が止まった。

 「そうやって誰かを心配して、慰めて、心から喜んでるんだって分かる笑顔して 」

 「ごめんな、お前があいつならって、あいつがここに居ればって思うんだ。」

 猫の尻尾が腕に絡みつく。少しくすぐったい。ふふふって笑うと猫が笑顔になった。

 こんなに綺麗な夜なのに、あいつだけがどこにも居ないんだ。

 こんなに寂しい夜なのにお前はどこにも居ないんだ。

 お前がどこにも居ないから、こんなに綺麗な夜だって涙で滲んでしまうんだ。

 なぁ、どこに行っちゃったんだよ…

 猫が泣いた。

 急に立ち上がったから、驚いてバランスを崩しかけた。

 猫も泣くんだなんて呑気に思ってたら、猫が唇にキスをした。

 凄いびっくりした。

 そしたら猫から煙が出てきて、あっという間にあいつになった。

 あいつは一言目に『悲しませてごめん』って言った。

 違う。今欲しいのは謝罪なんかじゃ無いなんて思ってたら、あいつが私の手に嵌った指輪にキスをして、

「今日は月が綺麗だな」

って、なんてベタなこと言うんだろって思ってた。

 でもそれで終わりじゃ無かったみたい。あいつは続けて

「まるで君のようだ。君は月の女神のように美しい」

なんて、顔真っ赤にしながら言うからこっちまで顔が熱くなってきた。

 あいつは指に指輪を嵌め直して愛おしそうな顔でキスをした。

『大好きだよ。俺に君の全てをくれないか?』

 真剣な顔で言ってるけど、顔が真っ赤で台無しだなぁなんて思った。

 勿論答えは決まってるけど、そのまま言うのは癪だなんて考えてたら思いついた。

『お前が私に全てを捧げるならな』

って言ってキスしてやった。

お前の間抜け面が見れて面白かったよ。

 そしたら仕返しと言わんばかりに

『あぁ、俺の全てを捧げよう。俺は永遠に君のモノだ』

って言ってキスしてきやがった。

 なんか負けた気がする…

 あいつは私の手に嵌ってる指輪を改めて薬指に嵌め直す。自分の指輪を直して欲しそうに見つめてきたから、嵌め直してやった。

 お互いに見つめ合って、目を閉じて唇を重ね合えば、口の中が甘ったるいような、甘酸っぱいような不思議な感覚になる。重ねた唇から広がる甘い快楽に体を支配される。

 きっとこうなる運命なんだ。

 前世も、来世も。

 これが運命という名の呪いなら一生解けなくて良い。

 これまでお前と結ばれ続けてきたように、これからもお前と結ばれ続ける。

 お前に溺れる事が罪だとしたら、愚かな罪人のままで良いから。だから、

 「……ない」

お前が言ったことを聞き逃した。

聞かすつもりも無かったのかもしれない。

「私はお前を離してあげられない。ごめんなさい。」

お前に聞こえないように呟く。

顔をしかめてるから、きっと聞き逃したんだろう。そうだろう。

 見上げたお前の顔はいつもよりも男みたいだった。

 そっと繋いだてからお前の体温と鼓動が伝わってくる。熱かった、とても。

 お前と繋がってる部分から広がる熱と快楽で脳が溶けそうだ。

 これは美しい恋なんかじゃない。

 これは…独占欲に塗れた恋だ。

何度輪廻の輪に戻って新たな人生を歩もうと、必ずお前を見つけ出して見せるよ。

 40万年前から愛してる。

 100億年後も愛してる。


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