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平日、麻宏でいる時間と麻琴でいる時間は半々といったところだろうか。
学校へ行くのに世間一般的な性別は男であるから男として通学しているが、麻琴である方が自分的に自然体である。
麻宏であるときいつも眠そうだとか無気力だとか言われるが、目を普通に開けると目が大きくなり麻琴に近くなるので、目を細めているだけだったりする。まあ、慢性的な寝不足で眠いのもあるが。
口調も男っぽくを意識した結果、雑な喋り方になっていると自分でも思う。
だがこれくらい喋り方を変えないと、素が出そうになるからこれでいいのだ。
俺はそんなことを考えながら、隣にいる大多和雪恵を見る。
下を向いて口を結び、時々何か言いたそうにモゴモゴとしている。
春も終わりに近づき、初夏へ向け天気予報の欄が曇りと雨マークに占拠されそうななか、今日は貴重な晴れの日だと思う。
そんな貴重な晴れた青空の下にはもったいないどんよりした雰囲気を放つ俺たちは、大多和と2人で公園のベンチに並んで座っている。
今日は朝から大多和と相田の2人と縁があるようで、帰りに逃げるように走って帰る相田とそれを呆然と見つめる大多和と出会ってしまった俺は、声を掛けて今に至るわけだ。
泣きそうな顔をする大多和の顔を思い出してしまう。
──ほっとけないよな……。
困っている人がいると声を掛けてしまう。それは弱っている人間に対し麻琴という存在を刻みやすいという自分のエゴからなのか、本心から救いたいという思いからなのか、正直自分でも分からない。
「朝は深入りしないって言ったけど、何があったかくらいは聞いてもいいか?」
俺が声を掛けると、一瞬肩を大きく震わせた大多和だが小さく頷く。
「菜々子……人がいいから宿題をいつも写さしてて。それで写す子たちもそれが当たり前になってて菜々子に宿題やらしておけばいいんだって、帰って勉強しなくていいからラッキーだってたまたま聞いてしまったから。菜々子にあんなやつらの為に宿題見せたらダメだって言ったの」
下を向いたままポツリポツリと話始めた大多和だが、話しているうちにそのときの怒りも一緒に思い出したのか、段々と声が大きくなっていく。
目には薄っすらと涙を溜め顔が赤みが掛かっている。
「菜々子は分かったって言ったけど、昨日も見せてたから今日は見せたらだめだって、私があの子たちに直接文句言ってやるって言ったら……」
「相田がほっといてくれと言われ、それにイラっとして手を上げた……ってことか」
大多和の途切れた言葉を俺が続けると、俺の目を見た後悲しそうな顔をして頷く。
この子は真面目で間違ったことが許せない、しかも包み隠さず真っ直ぐに伝えてしまう。相手の為を思って言っているけど、真っ直ぐ伝え過ぎて軋轢を生む、ある意味不器用な子。
でも相手の為を思って行動できる子ではあると、そう感じた。
「大多和は正しいことをしようと思って行動したんだろ。なら悪くないと思うがな」
俺の言葉を聞いた大多和は顔を上げ俺をじっと見つめる。