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「逃げたぞ!追え!」
くそっ、俺はバカか!使った道具を置きっぱなしにしてしまうなんて!
「ちょ、お嬢さん退いて!」
「わっ!?」
顔を隠しているだけ、まだマシか……
いや、今はそんなことを考えている場合では──
「っ!?」
聞こえたのは、銃声。
見えたのは、俺の目の前を通っていく弾丸。
俺の近くにいた猫が、弾丸に当たった。いやでも、血を流したりはしていない。
爆睡はしているけれど。
──もしかして、いや、もしかしなくても……麻酔銃?
「グズグズするな!狙え!」
そんなのアリかよ、ズルい、だ、……ろ──!
「──で、食い物を盗んだ、と。」
「……そうだ、って言っているでしょう」
ここは日本という国を治める神々が暮らす国“高天原”にある裁判所……みたいな何か。
日本と聞くと俺は、着物を着た人々がいる和の国を連想するが、案外高天原は現代的な場所であった。まあ、日本の東京も高いビルやら電車やらがあって、なかなか便利そうな都市だったしな。もう日本はサムライの国ではないのだろう。
「…………」
さて俺は、食い物を盗んだため尋問中。
ちなみに、目の前にいるおっさんは、高天原の重鎮の何とか様という方らしい。これまでにたくさんの法律を作ったんだとか。
……あれ、三権分立は?
「疑っておられるのですか?」
「……ううむ」
俺は「食い物を盗んだだけだ」と主張した。そして俺の他の罪の証拠は残っていない。
だが、おっさん達は顔を見合わせ、唸る。俺を疑ってやまないのだ。
……そりゃそうだろうな。
俺のことは世界中の神々の間で、噂になったというし。
「本当にそれだけなのか?ロキよ。」
そう。俺の名前はロキ。
──とは言っても、北欧神話の神の“ロキ”ではない。そのロキの魂の片鱗を持った、生まれ変わりなんだとか。詳しいことは、俺もまだよく分かっていないのだが。
最初に俺をロキだと言ったのは、北欧の地の地下深くで出会った女だった。アイツは、俺に向かってこう言った。
──……お父様?お父様なのですね!
アイツは言った。俺はアイツの父親の生まれ変わりだ、と。
……う〜ん、よくわからない。
だっておかしいだろ。仮にも有名な神様だぞ。
何でその有名な神様の生まれ変わりが──
「まあいい。取り敢えず、食い物を盗んだのは事実だ。」
コソドロ生活しないといけねーんだよ……っ!!