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「なぜ、そのようなこともできないのですか!?」
バシッ
「ごめんなさいっ…お父様っ…」
「ちゃんと、ちゃんといい子にするっ…!するから!」
お父様が僕の頬をぶった。嫌な音が鳴り響くお屋敷。
先程、来客が来た時に挨拶をしなかっただけでこのさまだ。
「挨拶は基本中の基本!!何度言ったらわかるんです!?」
僕は内気で恥ずかしがり屋。なかなか自分から進んで行動に移すことは少ない。
「今度はしっかり…守りますから…だから、お父様…」
「もういいです。あなたには呆れました」
「グランドユニオン、あなたは“一応”私の息子なんですからね?」
「もう少し紳士的になっていただかないと」
「はい…」
「お部屋に戻って勉強でもしなさい。世の中の動きを知ればいいのですから」
「わかりましたお父様。お父様の期待に応えられるよう、努力しますので…」
「また、口だけで終わらせないでくださいね?」
「も、勿論…ですっ…!」
「グランドユニオン様、お部屋まで同行いたします」
僕のお屋敷に雇われている執事がそう言った。
キィ…
「着きましたよ。グランドユニオン様」
「ありがとう」
「お勉強でわからないことがあればお教えいたしますので遠慮せずにご報告ください」
「うん、わかったよ」
僕には持て余すほどの部屋。その部屋の隅にある机へ向かった。
部屋には最低限の物しか置いておらず自分が欲しいと思った物や自分で購入した物は一切ない。
お父様に勧められ購入した物、来客からの土産、お父様や執事が購入した物しかない。
そもそも私物を置くことは許されない。そのせいなのか今は物欲が一切ない。
そんな日々を過ごしていくうちに僕は感じてしまった。自分で判断することができないのだ。
全てお父様の判断なので日々、僕自身は擦り減っていく。街へ出かける時も楽しそうに駆け回る他の子供たち。その一方、僕はお父様に痛いくらいに手を繋がれる。いつもお屋敷に帰ってくると僕の手首にお父様の手の跡がついているけど、きっとそれだけお父様が僕を大切にしている証拠なんだろう…
「…可哀想」
「誰が可哀想なのですか?」
「え…あ、お父様…」
いつから居たのだろうか。物音や気配は一切感じなかった。
「…わからない」
「…?すみません、もう一度言っていただいても?」
「あっ…えと、この前お父様からいただいた物語の主人公をふと思い出してしまって…」
「そうですか。余程、あの本を気に入っているようでよかったです」
「は、はい…」
「邪魔をしてしまってすみません。では、引き続き頑張ってくださいね 」
気づかれていなかったが今、確かに「わからない」と言った。おかしい。「可哀想」と言ったつもりもなかったのに…
もし「わからない」が聞こえていたら「理由ぐらいはっきりしなさい」と言われていただろう…
「とにかく…お勉強しないとな…」
続く…