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【ユース合宿・夕暮れの校庭】
(翔陽は体育館から逃げ出し、広い校庭を駆ける。胸の奥で未練と罪悪感、安心したい気持ちが渦巻いて、足は自然に速くなる。夕暮れの光が肩に影を落とし、汗で濡れた髪が顔に貼りつく)
🏐日向(心の声)
「……俺……どうしてこんなに……苦しいんだ……」
(佐久早や古森の熱い視線、侑の必死な声、全部が頭の中でぐるぐると回る。逃げれば逃げるほど、心の奥底で誰かに触れてほしいという小さな声が泣いていることに気づく)
(翔陽は校庭の端にあるベンチに座り込み、膝を抱えた。息が荒く、胸の奥でざわつく心音が自分でも聞こえる)
🏐日向(小さく)
「……どうして……俺、侑の声を聞くと……落ち着くんだ……」
(その時、背後から足音が近づく。振り返ると、侑が静かに立っていた。汗と夕日の光で輪郭が赤く染まり、優しい瞳で自分を見つめている)
侑(落ち着いた声で)
「翔陽……無理に隠れんでええんや。俺、ここにおるで」
(侑の声は低く、けれど力強く、胸の奥に直接届くようだった。逃げたい気持ちも、怖い気持ちも、全部受け止めてくれる気がした)
🏐日向(心の声)
「……侑……怖くないのか……?なんで、俺なんかのために……」
侑(少し微笑んで)
「怖いよ。でも翔陽が困っとるの見とったら、黙っとれんわ」
(侑はそっと膝をつき、翔陽の隣に座る。距離は少ししか離れていないが、翔陽の胸に直接届く温かさがあった)
🏐日向(心の声)
「……こんなに安心できるの、久しぶりかもしれない……」
(胸の奥で、佐久早や古森への未練がまだ小さくくすぶっている。けれど、侑の静かな優しさが、徐々にそれを溶かしていく)
侑(そっと翔陽の手を取って握る)
「翔陽……俺、知っとるんや。お前、過去のこと全部消せるわけちゃうって。佐久早のことも、まだ心のどこかで引っかかっとるやろ?」
🏐日向(小さく頷き、声が震える)
「……うん……でも……」
侑(優しく)
「でも、今は俺と一緒に歩こや。逃げるんちゃう、俺となら……きっと大丈夫や」
(侑の手の温もり、声の安心感。翔陽の胸の奥で硬く閉じていた感情の扉が、少しずつ開いていく)
🏐日向(心の声)
「……侑……俺、怖くない……かも……」
(沈む夕陽の光が二人を包む。翔陽は小さく息を吐き、侑の手をぎゅっと握り返す。未練の火はまだ完全には消えていないけれど、今は侑と一緒にいることが、何よりも大切だと心の奥で実感する――)
🏐日向(小さく微笑んで)
「……ありがとう、侑……」
侑(にっこり微笑み)
「ええんやで。翔陽が笑ってくれるだけで、俺は嬉しいんや」
(翔陽は初めて、安心して心から笑った。夕暮れの校庭に、二人だけの静かな時間が流れる――)
侑(静かに、でも真剣な瞳で翔陽を見つめる)
「翔陽……俺、ずっと思っとったことがある。お前が逃げとる時も、苦しんどる時も、俺はずっと……翔陽のそばにおりたいって思っとった、翔陽好きや…」
🏐日向(心の声、少し動揺しながら)
「……侑……告白……?でも、俺……まだ、佐久早……」
(心の中で揺れる。未練の残る元彼の顔がちらつく。でも侑といると、自然に胸が温かくなり、心臓が早鐘のように打つ。なんだか、懐かしい安心感とドキドキが同時に押し寄せる)
🏐日向(小さく息を吐き、少し目を逸らしながら)
「……侑……でも……俺……まだ、整理ついてないし……」
侑(肩を少し寄せ、優しく笑う)
「ええんやで……急がんでええ。俺はただ、今の翔陽の隣におりたいんや。それだけや」
(侑の声、温もり、穏やかな視線。翔陽の心の中に、これまでの揺れが少しずつ溶けていくのが分かる。未練の火はまだあるけれど、侑の存在はそれをかき消すほど大きく、優しく、あたたかい)
🏐日向(心の声)
「……そうか……侑……俺、こんなに安心できるんだ……こんなにドキドキもする……」
(夕暮れの光が二人を柔らかく包む。校庭は静かで、風がそっと髪を揺らす。翔陽はゆっくり顔を上げ、侑の瞳を見つめた。そこには強さと優しさ、そして迷わない真剣さが映っていた)
🏐日向(小さく微笑みながら、声は震える)
「……侑……俺……」
(言葉が途切れ、息が詰まる。侑はゆっくりと顔を近づけ、翔陽の手を握り直す。互いの距離はほんの数センチ。心臓がぶつかるように早くなる。翔陽の心は恐怖ではなく、期待で震えていた)
侑(囁くように)
「翔陽……俺でええか?」
🏐日向(胸の奥でドキドキが高まり、瞳にうっすら涙を浮かべながら、頷く)
「……うん……」
(侑はゆっくり、慎重に、でも迷わず唇を重ねる。翔陽は一瞬驚くが、そのまま身を委ねる。夕日のオレンジ色が二人を包み、世界は二人だけのものになったように静かで甘い時間が流れる)
🏐日向(心の声)
「……侑……こんなに温かいの、初めて……佐久早も古森も、もう関係ない……今は侑とだけ……」
(唇が触れるたび、翔陽の心の奥の不安や迷いが溶けていく。侑の手の温もり、胸の鼓動、息づかい……全てが翔陽の心を満たし、震わせる。夕暮れの校庭、静かな風、柔らかい光――二人だけの甘い世界が広がった)
侑(微笑みながら、そっと額を寄せる)
「翔陽……ずっと、こうしたかったんや」
🏐日向(微笑み返し、肩を寄せながら)
「……俺も……ずっと、侑と一緒にいたかった……」
(二人の心はしっかりとつながり、夕日の光の中で、甘く濃厚な距離感を感じながら、初めて互いの心の全部を少しずつ委ねる――)
(夕暮れの柔らかい光が二人を包む。翔陽はまだ少し心を震わせながら、侑の瞳を見つめる。胸の奥にくすぶる佐久早への未練も、今は侑の温もりに溶かされそうだ)
🏐日向(息を呑み、少し戸惑いながらも心が熱くなる)
「……侑……」
(侑は一気に距離を縮め、唇を重ねる。最初は柔らかく触れるだけの軽いキスだったが、徐々に互いの唇を押し付け合い、深く絡めるように重なる。翔陽は体を預け、自然と目を閉じる)
🏐日向(心の声)
「……侑……こんなに……熱い……胸の奥が……震える……」
(侑の手が翔陽の肩から背中に回り、引き寄せる力は優しいのに確実で、唇はさらに深く、舌先で互いの感情を確かめ合うように絡む。校庭の風、夕陽の光、二人の吐息が交じり合い、世界が二人だけのものになる)
侑(息を混ぜながら、唇を少し離して囁く)
「翔陽……心、全部預けてええんやで」
🏐日向(軽く頷き、胸の高鳴りを感じながら)
「……うん……侑……俺……全部……」
(再び唇を重ねる。今度は強く、深く、互いの呼吸も混ざり合う。翔陽の手も侑の背中に回り、二人の体が自然に密着する。キスを通して心の迷いが消え、ただ温かさと安心、そして熱い感情だけが残る)
🏐日向(心の声、震えるように)
「……侑……こんなに……甘くて……温かい……もう……過去のことなんて……どうでもいい……」
(唇が離れると、二人の額が触れ、互いの呼吸がゆっくり落ち着いていく。夕暮れの光は柔らかく、静寂と余韻が校庭に広がる。翔陽の心には初めて、完全に安心できる場所ができたと実感が広がる)
侑(微笑み、翔陽の髪に手を滑らせながら)
「翔陽……もう、誰もいらんやろ。俺がここにおるんやから」
🏐日向(小さく微笑み返し、心臓がまだドキドキするのを感じながら)
「……うん……侑……ありがとう……」
(二人は肩を寄せ、夕陽の光の中で、唇の余韻を胸に刻みながら、静かに濃密な時間を共有する――心も体も、完全に互いに預けた瞬間だった)
【ユース合宿・夕暮れの校庭】
(夕暮れのオレンジが完全に赤紫へと変わり、二人はまだ校庭のベンチに寄り添っていた。深いキスを交わした余韻で、翔陽の胸はまだドキドキと鳴り止まない。侑はそんな翔陽を見守るように優しく背中をさすっていた)
🏐日向(小さく息を吐いて、視線を落としながら)
「……侑……さっきの……キス……」
侑(わざと茶化さず、真剣なまま微笑む)
「後悔しとる?」
🏐日向(すぐに首を振り、少し赤くなった頬を隠すように)
「……ううん。全然。むしろ……ずっと、こうしてたいって思った……」
(言葉を口にした瞬間、自分の気持ちにハッとする。佐久早への未練も確かにまだある。けれど侑といると、心の奥の傷口がじんわりと塞がっていくような温かさを感じる。それは佐久早とは違う、新しい安心感だった)
侑(小さく頷き、翔陽の肩を抱き寄せる)
「……ほな、これからは隠さんとおれ。俺が全部受け止める」
(侑の言葉は真剣そのもので、翔陽の胸に真っ直ぐ届く。夕暮れの風が二人の髪を揺らし、重なった影はまるでひとつのように見えた)
⸻
【合宿中の練習】
(翌日からのユース合宿はハードだった。全国から集められた選手たちの中で、翔陽と侑は互いに刺激し合い、持ち味を存分に発揮していた。翔陽の圧倒的なスピードとジャンプ力。侑のトスセンスと大胆な発想。練習が進むごとに、周囲の選手たちも二人を認め始める)
👦他の選手
「稲荷崎の宮侑は有名やけど……日向って奴、ヤバすぎやろ……」
👦別の選手
「跳ぶ速さも高さも、まるで人間やない……」
(翔陽はそんな声を聞いても冷静だった。ただ、侑が隣にいてトスを上げてくれるだけで、自分の力を最大限に発揮できる。侑の視線が合うたびに、不思議と心が落ち着くのだ)
⸻
【夜・宿舎の部屋】
(夜、練習を終えて宿舎に戻ると、翔陽のスマホにまた通知が入っていた。「佐久早」や「古森」の名前が画面に並んでいる。翔陽はベッドに座り込み、しばらく見つめて動けなくなった)
🏐日向
「……まだ、忘れられない…」
(その時、部屋に入ってきた侑が翔陽の表情を見て気づく。翔陽は慌ててスマホを伏せるが、侑は無理に覗こうとはしない。ただ、静かに隣に腰を下ろす)
侑(穏やかに)
「翔陽……辛なったら、無理して笑わんでええ」
🏐日向(小さく息を呑み、視線を逸らしながら)
「……俺……あの二人と……ちゃんと別れたわけじゃないんだ……勝手に逃げただけで……」
(震える声で吐き出す。侑の前だからこそ言えた言葉だった。心の奥にずっと刺さっていた棘を少しだけ口にする)
👦侑(翔陽の手を握り、優しく強い目で)
「……それでもええやん。翔陽が辛かったんやろ?逃げてもええ。誰に何言われても、俺だけはお前を責めん」
(その言葉に、翔陽の胸の奥がじんわり熱くなる。涙がにじみそうになるのを堪え、ぎゅっと侑の手を握り返す)
🏐日向(心の声)
「……侑……俺、佐久早とは違う。侑といると……自由で、温かくて……心が楽になる……」
⸻
【深夜・宿舎のベランダ】
(その夜、翔陽は眠れずにベランダに出る。月明かりに照らされ、冷たい夜風が頬を撫でる。そこに侑が後からやってきた)
侑(小声で)
「眠れへんのか?」
🏐日向(少し驚きながら)
「……うん……色々考えすぎて……」
(侑は隣に立ち、何も言わずに翔陽の肩にそっと手を置く。その沈黙は不思議と心地よく、翔陽は少しずつ呼吸を整えていく。二人の距離はまた自然に近づき、気づけば唇が触れ合うほど近い)
🏐日向(心の声)
「……また……侑と……キスしたい……」
(その思いに突き動かされ、翔陽は自分から侑に唇を重ねた。さっきよりも深く、長く、心の奥に届くようなキスだった。侑は驚いたように目を見開いたが、すぐに優しく抱き寄せ、応える)
(夜風が二人の体を冷やす代わりに、唇と体温は互いを熱くする。佐久早の影は、今だけは完全に消えていた。翔陽の心には、侑だけがいる――)
⸻
侑(囁くように、額を重ねながら)
「翔陽……。俺がおる限り、ずっと守るからな」
🏐日向(微笑み、涙を拭いながら)
「……うん……侑……俺、やっぱり……侑が好きだ……」
【ユース合宿・夜/体育館裏】
(練習を終え、夜の空気がひんやりと漂う体育館裏。翔陽は水を飲もうと一人で外に出ていた。その時――背後から声が響いた)
古森(優しいけれど必死な声で)
「……やっと、見つけた、昨日どこ行ってたの?」
(振り返ると、そこには佐久早と古森。二人の目は真剣で、今にも掴みかかってきそうな強い視線だった。翔陽の胸がドクンと高鳴る)
🏐日向(心の声)
「……また、来た…逃げても、やっぱり追ってくる……」
古森(駆け寄り、翔陽の腕を掴む)
「翔陽……お願い、戻ってきて。お前がいないと俺達、本当に駄目なんだよ」
佐久早(低い声)
「俺も……翔陽、お前がいないと……何も出来ない。もう束縛もしない、直すから……だから、戻ってきてくれ」
(佐久早の顔は険しくも弱さが滲んでいた。翔陽の心に、かつての思い出がよみがえる。笑い合った時間、支え合った瞬間――そして、重すぎた束縛と苦しさ。胸がチクリと痛む)
🏐日向(唇を噛みしめ、震えながら)
「……俺も……未練がないわけじゃない」
(その言葉に、二人の顔がパッと希望に満ちる。だが翔陽は続けた)
🏐日向(はっきりと目を見据えて)
「でも……今の俺は、侑と一緒に居たいんだ」
古森(必死に首を振る)
「侑より俺達の方が翔陽を知ってる!ずっと一緒にいたんだ!何で……」
佐久早(強い声で遮るように)
「翔陽は俺達のもんだろ!あの時だって別れるなんて言ってない!勝手にいなくなっただけだろ」
(その言葉に翔陽の心が強く揺れる。確かに、自分から「別れる」とは言っていなかった。でも――)
🏐日向(涙を浮かべながら、強い声で)
「…俺は“逃げた”んだ!お前達の愛が、重すぎて、苦しかったんだ!」
(古森と佐久早の表情が凍り付く。翔陽の声は震えているが、心の奥底から絞り出すように続けた)
🏐日向
「俺も愛してた……お前達のこと、ほんとに大事だった。でも……愛されてるのに、自由がなくて……笑えなくなってた」
古森(声を震わせて)
「……じゃあ、俺達が変わるって言ったら……?」
🏐日向(首を振り、涙を拭う)
「変わるって言葉だけじゃ駄目なんだ。俺はもう……侑と一緒にいて、初めて“安心できる愛”を知ったんだ」
(佐久早の拳が震える。唇を噛みしめているが、目には涙がにじんでいた)
佐久早(絞り出すように)
「翔陽……本当に……俺じゃ駄目か… …?」
🏐日向(涙を堪え、でも微笑んで)
「……俺を愛してくれてありがとう。俺も、二人のことを本気で愛してたよ」
(古森も佐久早も、言葉を失う。翔陽の声は震えながらも、最後は確かに響いた)
🏐日向(静かに、でも強く)
「さようなら」
(そう言って、翔陽は二人の前から背を向けて歩き出す。古森が呼び止めようと手を伸ばすが、佐久早がそれを掴んで止めた。二人の目から涙がこぼれる)
古森(嗚咽混じりに)
「翔陽……っ……!」
佐久早(うつむき、小さく呟く)
「……さようなら…か…」
(翔陽は振り返らない。涙が頬を伝っても、歩みは止めなかった。その先には――侑が待っているから)
🏐日向(心の声)
「未練はある。でも……今、俺が愛したいのは……侑だ」
(夜の空に、翔陽の決意が溶けていった。過去にさよならを告げ、未来へと歩き出すために――)
【ユース合宿・夜/宿舎前】
(翔陽は涙を拭いながら、重たい足取りで宿舎へ戻ってきた。けれど心の奥では、さっきまでの迷いが嘘みたいに軽くなっていた。長く背負っていた鎖を、ようやく外したような感覚。そこに――)
侑(心配そうに駆け寄ってくる)
「翔陽!どこ行っとったんや!?……顔、泣いとるやん」
(侑の声は怒っているようで、でも震えていて、本当は心配で仕方なかったのが伝わる。翔陽は少し笑って、涙の跡を隠そうともせずに侑を見つめた)
🏐日向(小さな声で)
「……ちゃんと、決着つけてきた」
侑(眉をひそめ、真剣に)
「……佐久早と古森に?」
(翔陽は頷く。侑の胸に、迷いも不安もない瞳で答えた)
🏐日向
「俺……未練がないわけじゃなかった。でも……今は、侑と一緒にいたいって、はっきり伝えた。最後に……ありがとう、愛してた、さようならって言った」
(侑の目が大きく見開かれる。次の瞬間、強く翔陽を抱きしめた。温かく、包み込むように、二度と離さないと誓うみたいに)
侑(震える声で)
「……バカやな……なんで一人で抱え込むんや。……でも、偉い……めっちゃ偉いで翔陽」
🏐日向(侑の胸に顔を埋めながら)
「……侑がいたから、できたんだよ……俺、一人だったら……絶対逃げ続けてた……」
(侑はさらに抱き寄せる。翔陽の体温と心音が重なり、二人の呼吸がひとつになる。夜の静寂の中で、互いの存在だけが確かにあった)
侑(小さく囁きながら)
「翔陽……俺を選んでくれて、ありがとう」
🏐日向(涙声だけど笑顔で)
「……俺の方こそ、待っててくれてありがとう……侑」
(言葉を交わすより先に、侑が翔陽の顎をそっと持ち上げ、唇を重ねた。深く、熱く、そして優しいキス。過去に区切りをつけた翔陽の心は、この瞬間侑だけで満たされていた)
🏐日向(心の声)
「……もう迷わない。俺が居たい場所は、侑の隣だ」
(キスが終わると、侑は翔陽の額に軽く触れ、柔らかく笑った)
侑
「これからは、俺の隣でだけ泣け。苦しい時は俺に全部預けろ」
🏐日向(微笑み返し、目を細めて)
「……うん。約束する」
(その夜、翔陽はようやく本当の意味で過去に別れを告げ、未来へ踏み出した。侑の腕の中で眠る安心感は、どんな束縛よりも自由で、どんな孤独よりも温かかった)
【稲荷崎高校・卒業式の日】
(体育館には花の匂いと涙の空気。三年間を駆け抜けた先輩たちが笑い、泣き、別れを告げていた。翔陽と侑、治、倫太郎は二年生だからまだ在校生。でも、卒業していく三年生を見送る空気は自然と胸を熱くさせた)
🏐日向(心の声)
「……あっという間だったな。転校してきて、みんなに出会って、色んなことがあって……」
(目を閉じると、稲荷崎に来た初日の喧騒や、佐久早と古森との未練、そして侑との夕暮れのキスまで、全部が走馬灯のように浮かぶ。心に刺さった痛みも、今は全部、侑がいるから宝物みたいに思えた)
(卒業式が終わり、校舎の外に出ると夕陽が射していた。オレンジに染まる校庭で、侑が隣に立つ)
侑(少し照れくさそうに笑いながら)
「……なあ翔陽。三年になったら、もっと色んなことあるやろな。春高も最後やし、全国で勝ち進んで、世界に行くこともあるやろ」
🏐日向(侑を見上げて微笑む)
「……うん。でも……俺は侑と一緒なら、どこまでだって行ける気がする」
(侑は一瞬、息を飲む。翔陽の言葉は、まるで告白みたいに真っ直ぐで、心臓を揺さぶった。次の瞬間、侑は堪えきれずに翔陽を抱きしめる)
侑(耳元で囁くように)
「……もう、好きとか愛してるとか言葉にするんもしんどいくらい……お前のことが必要や。翔陽……一生、俺の隣におってくれ」
(翔陽の瞳に涙が溢れる。けど、それは悲しみじゃなくて、これまでで一番温かい涙だった。翔陽は強く頷いて、侑の背中に腕を回す)
🏐日向(泣き笑いしながら)
「……俺も。侑の隣じゃなきゃダメなんだ。侑が俺の居場所なんだ」
(そして、二人は夕陽の下で、深く長いキスを交わす。今までの未練も痛みも、すべて過去に置き去りにして。未来だけを見つめる、甘くて強い約束のキスだった)
(少し離れた場所から治と倫太郎がその光景を見ていて、苦笑しながら拍手を送る)
治
「……はぁ、完全に出来上がっとるやん。勝てる気せんわ」
角名(ニヤニヤしながら)
「まあええんちゃう?翔陽が笑ってるんなら」
(侑は翔陽の手をしっかり握り、校庭を歩き出す。これから続く未来、どんな壁があっても、二人なら絶対に乗り越えていける。そう信じられるほど、二人の絆は強く、確かなものになっていた)
🏐日向(心の声)
「ありがとう、侑。俺はもう迷わない。俺の世界は、侑と一緒に生きていく世界だから」
(夕陽の中、二人の影が重なってひとつになる。その姿は、誰よりも眩しく、幸せそうだった――)
✨【完】✨
コメント
4件
めっっっちゃ良かったです✨️ 佐久早&古森ルート先に見ててよかったかも♪ 途中のナレーター?説明?みたいのがすんごいいい役割してて!読みやすかったです! アツムゥ!ひなたぁ!お幸せにぃぃ!
めっちゃ好きです💖