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「死んだら悪役令子に転生した。」
①「プロローグ」
「お兄ちゃ…ん」
急なことだった。
俺は真っ赤な液体に包まれた。
視界はそれで塞がれた。
音は聞こえた。
妹の声…。
「お兄ちゃん?!、お兄ちゃんっ、!!」
…あぁ、一生懸命呼んで、どうしたんだよ。
そう思って俺は妹を撫でようとした。
あれ。
身体が、震える。動かない。
「っ、すぐに!救急車!救急車を…!だ…。意識…あ…?は…」
「や……!し…じゃ…!」
段々周りの人の声が聞こえなくなった。
「死んじゃ嫌っ!!」
最後に聞こえたのは、大声でそう叫ぶ、妹の声だった。
②「1人だけ」
「ゲホッゲホッ…。」
咳が出た。
俺は今風邪で、ずっと1人でベッドにいる。
今の俺の名前はルカ・エンペルト(8歳)
俺は前世の記憶がある。
俺が死んだ原因は事故だ。
妹と買い物をしていたのだが、妹を庇った俺は死んだ。
妹はわからない。俺が死ぬ直前に妹は俺に対してすごく叫んでいたのを覚えているけど、多分生きていると思う。
生きていたらいいなと思う。
俺の転生先は前世のゲームで出てくる、スペア・キブというBLゲームに転生した。
俺は悪役令息子という、主人公の気を引かせて主人公の恋愛を邪魔する、所謂嫌われキャラだ。
俺はいつも他人と比べられて、親は大切になんてしてはくれなかった。
そのうえ差を見せつける様にカヤをつれてきた。
カヤはゲームの主人公。
優秀で魔法は全てマスターしている。
優しいしみんなに頼られていて、すごく人気者だ。
けど俺の親は俺に振り向いてはくれない。
むしろカヤをすごく気に入っていて…。
今だって俺は風邪を引いても誰にも心配されずに…。
そう思うと涙が出てきた。
(嘘だろ…。前世の俺でも、妹と母親は心配して声をかけるくらいしてくれたぞ…。)
ガチャ。
「あ、起きたんだ、ルカ、大丈夫?」
入ってきたのはカヤだった。
カヤは優秀で、周りに人がいっぱい居て…
でもそんなやつがなんで…
ぶわぁっ…、
目から涙が溢れてきた。
「!!」
カヤはびっくりした様に俺のベッドに来て、ちょこんと座った。
「まだ、具合悪かった?」
カヤにそう聞かれ、俺は首を振るう。
「もう、大丈夫。」
俺はゴシゴシと目を擦った。
カヤは慌てた様に俺の手を止める。
「目、擦ると赤くなっちゃう…!」
そんくらいでのカヤの慌てっぷりが面白くて笑いが出た。
俺は「大丈夫だよ」と微笑んだ。
カヤはじーっと俺をみて、こてんとベッドに寝転んだ。
俺はしばらくカヤを見つめた後、言った。
「風邪、うつっちゃうよ。」
言うとカヤはふっと笑った。
「その時はルカが看病に来てよっ」
そう言われ、馬鹿じゃないのと思う。
「俺は優秀でもないからルカの部屋になんて入れないよ。」
「大丈夫〜。俺が入室を許可するよ」
「勝手だなぁ…、笑」
カヤと話すのは楽しい。
カヤは俺と話してて楽しいのかな。と思うけど、俺は楽しいからあえて聞かなかった。
楽しくないって言われたら、嫌だから…。
「じゃあ俺行くから。ルカ。なんかあったらいつでも呼んで!」
カヤは笑顔で俺の顔に触れた。
俺も笑顔で返す。
「なにもないから。いっておいで。」
言うとカヤはにっこりとうなずいて部屋を出ていった。
俺は手を振って見送った。
行ってしまうのは仕方ない。
(だってカヤは俺と違って他の人に頼られる分、忙しいから。)
俺のところに、なんでわざわざ来たのかなんてわからない。、
わからない…けど。
俺ははぁ。とため息をついて、ベッドにゴロンと横たわった。
そして6年の月日が経過…。
「ルカ〜。じゃ〜ん!ルカが好きなパンダのコスチューム。これ着てみてくれ。」
カヤは明るい声で俺に言った。
俺は苦笑いを浮かべる。
「くれるのは嬉しいんだけど、これ俺が着るの?」
聞くとカヤは「もちろん」と眉をあげた。
「えっと、もらうだけもらっとく…」
「えー。着ないならあげないよ。」
カヤはぷいっとそっぽを向いた。
どうしても俺に着せたいらしい。
「ぅ”ー~…!ー、〜…!わ、わかったよ~、
着りゃあいいんでしょ着れば」
俺は渋々パンダコスチュームを受け取った。
(俺は見るのが好きなんだけどなぁ。)
そう思ったが、そんなこと言うとまたカヤに「もういい!」とパンダコスチュームを没収されそうなのでそれは言わなかった。
数分後…。
シャララ…
俺はカーテンを開けて顔だけ出す。
「き、着替えた…。」
俺がそう言うとカヤはおー。と拍手をした。
「似合ってる。耳見えてるよ?すごい…本当に頭にパンダの耳が生えてるみたいだ…。
少し高かったけど、買って良かったよ。」
カヤにそう言われ、俺は目を逸らしつつ聞く。
「ちなみに何ドルくらいしたんだ…??」
恐る恐る聞くと、カヤはニコッと笑う。
「まぁ大体1000ドルはしたよ??でもすごくかわっ…似合ってるし、買った甲斐があったってもんかな?」
「高っ…、」
俺はつい声が漏れてしまった。
いやこれで1000ドルは高くないか?、
*1ドル=大体140〜150円くらい?
するとカヤはじっと俺を見る。
「ふむ、、。やっぱりメイド姿も捨てがたいな…。いや、猫耳系もありだな。なんなら猛獣は全ていいだろう。」
「あの、聞こえてるんだけど」
俺ははぁ。と苦笑いをしてため息をついた。
カヤはファッションが昔から好きで、よく俺に色んなものを着せてくる。
「メイド服ならジュリ姉さんに頼めばいいでしょ〜っ…。」
俺がそう言うと、カヤは「違う。」と呟く。
「ジュリ姉さんじゃダメだ…。ルカじゃないとダメ。
全く、わかってないな。ルカは。」
カヤはなぜか俺にしか服を着せない。
俺以外だと嫌だといつも言う。
なんでダメなのかしらないけどさ…。
俺は無言でその場に立ち尽くす。
カヤはスッとカメラを取り出した。
「もっと、こう、可愛い感じのポーズでお願い。」
カヤはカメラを構えながら俺に色んなことを言う。
「もう少し右目の角度!」とか、「あ〜!袖まくったらダメ!なんのために萌え袖にしてると思ってるの!!」とか…。
ファッションに関わるといつも情熱的で、せっかくのクールさが台無しだ。
(まぁそういうところが個性的でいい、んだけどさ…。)
俺はとにかく写真を撮られ続けた。
「はぁ〜っ。やっと終わったぁ…」
俺はテーブルに突っ伏した。
カヤはポンっと俺の頭に手を乗せた。
「お疲れ様?ケーキ食べたいでしょ。付き合ってくれたお礼にやるよ。」
なんだか子供扱いされたような気がして俺は頬を膨らませる。
「いつまでも子供じゃな…っ、いや、ケーキは、いる、けども…っ。いるけども…。」
俺はモジモジと顔を伏せる。
(あれ、そういえば…)
このシーンって確かカヤが金髪イケメン王子に合って任務に行った後の展開と全く同じ…。
カヤが良い環境で育ってきたからかゲームの時よりもなんか成長してるし…。
(the・筋肉マッチョ☆ってわけでもない)
大丈夫だよな?
まさか、王子様が見向きもしないなんてことないよな…?
もうすぐでたしかそのイベントがあるはず…
それには一応俺も加わるはず…だけど。
俺は顔をあげてカヤを見る。
王子様にカヤと仲良さげな子って思われて消されたりでもしたらどうしよぉ…!!
焦る俺をカヤは首を傾げて見つめていた。
おわり(続きます((?)