テラーノベル
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「……やっぱり、昴さんは狡いです……」
「何がだ?」
「……だって、私ばっかり意識してて、昴さんは涼しい顔をしていますし……」
「それはまあ、俺の方が大人だからな」
「…………」
どこか不満そうな声を漏らしつつも羽衣子がベッドに入ると、希海を真ん中にして三人で横になる。
「みんないっしょ、うれしいね!」
大好きな羽衣子と昴に挟まれているからなのか、希海は終始ご機嫌で安心したようで数分もすると寝息を立てて眠ってしまう。
こうなるとますます意識せざるを得ない羽衣子は落ち着かない様子で、目を瞑って眠ったフリをしてみるも、
「眠れないのか?」
昴にはバレているようで答えない訳にもいかず再び瞳を開いて昴の方へ視線を向け、
「……昴さんこそ……眠らないんですか?」
逆に質問を返していく。
「……眠りたいが、なかなかな……」
「…………どうして?」
「決まってるだろう? お前がすぐ傍に居るからだよ」
「え……?」
「お前は自分ばかり意識してると言うが、俺だって意識してるさ」
「嘘……」
「嘘じゃねぇよ。好きな女を抱いた後で、何も思わねぇ訳ねぇじゃねぇか。仕事もなかなか手につかなくて朝まで掛かったしな」
「…………」
「お前だって、全然眠れなかったんだろう? 目の下、薄らクマが出来てる」
「っ!」
「少しでも眠った方がいい。希海が完全に目を覚ましたら寝かせてもらえねぇだろうからな」
「……そう、ですよね……」
二人がそんな会話を交わしていると、「ううーん」
と寝返りを打った希海が羽衣子の方へ身体を寄せた。
そんな希海の身体を抱き締めると、昴は二人を包み込むように抱き寄せた。
「す、昴……さん?」
「これくらい良いだろ?」
「……でも、近い……」
「嫌か?」
「……ううん、嫌じゃ、ないです……嬉しいです」
「そうか」
恥ずかしそうに俯きながらも、「嬉しい」と答えた羽衣子を前に、昴は満足そうな表情を浮かべていた。
勿論、お互い意識はする。
けれど、出来ることなら少しでも傍に居たいという想いも同じだった。
暫くは互いの鼓動が煩く、なかなか寝付けなかったものの、二人とも眠気がピークに達したこともあり、いつの間にか眠ってしまっていた。
そして、それからだいぶ時間が経って昼前になる頃、
「昴さん? 入りますよ」
なかなか起きてこない昴を起こしにやって来た乙哉がノックをして寝室のドアを開けて目にしたのは、三人が身体を寄せ合って仲良く眠る姿で、それはまるで家族そのもののように見えた。
それから暫くして、
「あ、おはようございます。よく眠れたみたいですね」
三人揃ってリビングへ降りて来ると、どこか意味深な笑みを浮かべつつもそれを悟られないようテレビに視線を移す乙哉と、キッチンで作業をしていた皐月に迎えられた。
「おなかすいたー!」
すっかり目を覚ました希海は、「お腹が空いた」と皐月にご飯をせがむ。
「今準備するので待っててくださいね」
「ああ、悪いな、頼む」
「私もお手伝い――」
「いいですよ、吾妻さんも皆さんと座っていてください」
「ういちゃん、すわろー!」
皐月が手際良く準備を始める中、昴や希海と共に席に着いた羽衣子。
先に用意された飲み物を飲みながら、
「今日はどこか出掛けるか」
昴がそう提案すると、
「おでかけ! どこ? ゆーえんち?」
希海は瞳を輝かせながらどこにいくのかを尋ねていく。
「遊園地はもう少し時間のある時にしよう。今日は天気も良いし、少し遠くの自然公園にでも行くか」
「こーえん! むしとる!」
「そうだな、希海は虫取りしたいって言ってたよな」
「うん!」
「そういう訳で乙哉、お前も同行決定な?」
「え!?」
どうやらニヤニヤしていたのが昴にはバレていたようで、強制的に同行させられることになった乙哉は慌てていた。
「希海の虫取りに付き合ってやってくれ。頼むぞ」
「……りょーかい……」
乙哉は虫があまり得意では無いらしく、渋々と言った感じで納得する。
そんな昴たちのやり取りを間近で見ていた羽衣子はクスリと笑いながら今日の休日も楽しくなりそうだとワクワクしていた。
少し遅めの昼食を済ませた羽衣子たちは皐月が用意してくれたマフィンを持って隣町にある自然公園へ向かうことに。
乙哉が運転席に座り助手席に昴、後部座席に羽衣子と希海が座っている。
「これがちょうちょで、これがかぶとむし!」
希海は虫の図鑑を見ながら羽衣子に一つ一つ指差しながら虫の名前を口にしていく。
「うん、そうだね。希海くんは沢山知ってて凄いねぇ」
「うん! ぼくむしすき!」
「じゃあ今日は虫沢山取れるといいね」
「うん!」
希海のお陰で車内は終始賑やかで、後部座席の二人のやり取りを聞きながら昴は時折笑みを浮かべていて、乙哉はそれを見つつも前を向いたまま運転を続けていく。
#年の差
西原衣都
993
コメント
1件
うわあ、もうこの二人の距離感がたまらないですね……!昴さんが「好きな女を抱いた後で」って平然と言っちゃうのがずるいし、羽衣子が「嬉しいです」って素直に返せるようになった成長もじんわり来ました。希海ちゃんを真ん中にした三人の寝姿、乙哉さんに見られてるシーンがもう完全に家族で泣けます。虫取りに巻き込まれる乙哉さんの渋々感も含めて、休日の温かさがぎゅっと詰まったお話でした🌷