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「でも、佐藤さんの家わかるの?」
「葵さんの妹の亜季さんに聞いてみるよ」
「渡してもらえば、いいんじゃないの?」
「そうなんだけどさ…」
「大丈夫?」
「まぁ、何とかなるよ」
「そぉ? 部活がなければ私も一緒に行ってあげられるのに…ゴメンね」
「仲村…‥」
「何?」
「いつもありがとな」
僕らしくない言葉が、何故かこの時は不思議と出てしまった。
「うっ‥うん…‥」
仲村は、僕の聞き慣れないその言葉に動揺の色を隠せないでいた。
それから、僕は亜季ちゃんとの待ち合わせ場所に向かった。
すると案の定、亜季ちゃんは先に来ていた。
亜季ちゃん…‥
心の中でそう叫ぶと…‥
亜季ちゃんは振り返り僕を見た。
「お待たせ」
「待ってません」
「えっ!?」
僕なんか待ってないって事?
「そう言う意味じゃなくて、私も今来たばかりと言う意味です」
「ふぅ…良かった」
まぎらわしいなぁ…。
「ごめんなさい。まぎらわしくて」
「・・・・・」
「それじゃあ行きましょう」
「いっ‥行こう」
駅に向かって歩いているが、葵さんに渡す宿題のプリントと連絡ノートの事を話せないでいた。
「もしかして、担任の先生から何か預かってません?」
「よっ‥よくわかったね?」
「だって瑛太さん、何かソワソワして落ち着かない様子だったので…」
さすが亜季ちゃん。
でも流石に何を預かっているかまでは…‥。
「もうしょうがないなぁ。葵ちゃんに渡す宿題のプリントと連絡ノートを出して下さい。私が葵ちゃんに渡しときますから」
「・・・・・。でも、自分で渡すように言われたから」
「言わなければわかりませんよ」
「そうかもしれないけど…」
でも、それだけじゃなくて、亜季ちゃんの家がどこにあるのかも知りたいし…。
「そっ‥そうなんですか? わかりました。それなら一緒に行きましょう」
意外にも説明など必要なく納得してくれた。
それから僕と亜季ちゃんは下りの電車に乗り、2つ目の駅で降りた。
そして駅から5分くらいで亜季ちゃんたちが住んでいるマンションに着いた。
15階建ての高級マンションだった。
以前に聞いた事があるが、亜季ちゃんの父親は大企業の役員をしており世界各国を渡り歩いているらしく、ほとんど家には帰って来ないらしい。
また、母親は弁護士をしており、今は職場である都内の弁護士事務所の近くにアパートを借りて生活をしているそうだ。
だから両親ともに、マンションには月に1度帰って来れば良い方だと聞いていた。