私たちは次の日、ブラブラと青山通りを歩いていた。
「ほら…
はぐれるといけませんから…」
宇賀神先生が左手を差し出して言った。
「今日人少ないですけど…?」
つい、意地悪を言いたくなってしまう。
仕事ではいつも馬鹿にされてるのだから。
「あなた!
ほんっとうに、可愛くないですね!」
「ごめんなさい、冗談ですよ。
繋ぎます。」
私は宇賀神先生の手を取って、キュッと繋いだ。
「よ、よろしい…!」
宇賀神先生はかなり嬉しそうだ。
私たちが青山通りをそのままブラブラし続けて、そろそろお腹も減ったし、カフェに入ろうか?とした時…
パトカーが数台裏路地に入っていくのが見えた。
「先生!
事件です!」
「だから何なんですか!!!
僕たちのデートの方が大切でしょう!?」
「いいえ、事件の方が大事です!
良いから走って!
ほら!」
私は宇賀神先生のやる気の無い手を引っ張る。
そして、入り組んだ裏通りの廃ビルの前で警察官が青いビニールシートと、テープで仕切ってるのが目に入った。
「どうしたんですか?
あ、私たち黒川法律事務所の弁護士です!」
「あぁ…
弁護士先生ですか…
どうも、事件みたいで、被害者はナイフで刺された後に廃ビルから突き落とされていて…
遺体は見れた物じゃありませんよ。
弁護士先生でもこれ以上は言えません。」
警察官は言った。
「綾乃ちゃん!
もう、行きますよ!
これ以上ここに居たって何も出来ませんよ!
美味しいコーヒー飲みに行きましょう?」
先生は私の手を引っ張る。
お前の辞書には、仕事、という文字は無いのかっ!?怒
そう思いながらも、確かにあんまりだな、と思ってデートに戻った。
♦︎♦︎♦︎
カフェにて。
「ナイフで刺した上に突き落とす、なんて、確実に息の根を止めたかったんですよね?」
「犯人は被害者に強い恨みを持っていた?」
「廃ビルに居たって事は呼び出したのかしら?」
私は言う。
「あ・の・ね!
《《デート》》ですよ!
これは!
いつまで事件のこと言ってるんですか…
この仕事ばか…」
「あー!
言ったな!?
私が仕事馬鹿なら先生は仕事間抜けですよ!
まっったくやる気が無いじゃないですか!」
「僕が…
僕が…どれだけこのデートを楽しみにしてたか、あなたには分からないんですよ!」
先生は何故か半泣きだった。
えっ!
そんなに悪いことした!?
「もう良いです!
ずっと事件のこと考えてなさい!」
先生はお勘定を取ると、会計へ向かい、私を置いてけぼりで帰ってしまった。
な、な、何よー!
か、帰る事ないじゃんかー!
そりゃ…
私が悪い…かも…だけど…
私はトボトボと地下鉄でマンションに向かった。
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