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#etさん愛され
聖奈
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「次…どこ行く?」
浴衣の袖を揺らしながら、振り返る。
屋台の明かりが笑った横顔を照らして、思わず見惚れた。
…だめだ。
今日こそ伝えるって決めたのに。
また何も言えない。
「じゃあ…射的しよーぜ!」
「いいよ笑」
「hr裙と俺、どっちが多く取れるか勝負しよ!!」
「また?笑 いいけどさ」
「ur彡さっきヨーヨー釣りで俺に負けたじゃん笑」
「次は勝つ!!」
「はいはい笑」
呆れたように笑う声。
その笑い声さえ愛おしいなんて、
重症だ。
「んぁ〜っ!負けた〜、」
「urが俺に勝とうだなんて100年はやいよっ」
「ぉまッ、なんだと〜っ!」
「…笑」
何気ない会話。
でもそれだけで、笑みがこぼれる。
心の底から、楽しいと思ってしまう。
今日こそ伝える。
何度も鏡の前で練習した。
『好きだ。』
たった三文字。
たった三文字なのに。
「…ねぇ。」
「ん? 」
今だ。
言え。
言えよ。
口を開く。
喉まで来る。
でも。
「…りんご飴食べる?」
「何それ笑」
「いいよ。食べよ?笑」
また逃げた。
俺は今日だけで何回、この恋から逃げるんだろう。
近くのベンチに座る。
りんご飴を持つ手が少し震えて、
砂糖がぱらっと落ちる。
足元で、からん、と音がした。
落ちた砂糖の横に
誰かのラムネ瓶が、ゆっくりと転がっていた。
夏祭りは、残酷だ。
笑顔が溢れている。
子どもが走り回る。
浴衣姿のカップルが手を繋いで歩いていく。
世界中が幸せそうなのに。
俺だけが。
“あと少し”を越えられない。
「ur彡…ちょっとこっち」
人混みを抜ける。
少し離れた丘の上。
町が一望できる、神社から少し離れた場所。
屋台の賑やかさが少し遠くなる。
風が吹いた。
「俺…ur彡に言いたいことがあるんだよね。」
その言葉に心臓が跳ねた。
まさか。
もしかして。
俺と…
同じことだったりして。
そんな期待をした自分が、
恥ずかしい。
「俺さ、笑」
少し笑って。
少し困ったように目を細めて。
「今日の夏祭りが終わったらすぐ…この街を出るんだよね。」
「…え、?」
「転校するんだ、」
頭の中が真っ白になる。
きっと…聞き間違いだ。
だってそんなわけない。
昨日まで普通だった。
今日だって。
笑ってた。
「…なんで ッ 、」
やっと絞り出した声は、自分でも驚くくらい
弱かった。
「もっとはやく言ってよ ッ 、 」
hr裙は苦く笑う。
「…言えなかった。」
「なんで ッ …」
少しだけ黙る。
それから夜空を見上げた。
「最後くらい。」
「…?」
「いつも通りur彡と笑っていたかった」
息が止まる。
「知ったら…ur彡さ、」
「…優しいから、笑」
「気…使うでしょ、?」
「最後の思い出が“さよなら”なのは」
「…嫌だった」
「だから。」
「今日まで隠してた。」
ずるい。
ずるいよhr裙。
そんな理由…
泣くしかないじゃん。
ドン__
一発目の花火。
夜空に大きな光が咲く。
歓声。
拍手。
笑い声。
全部遠い。
俺の世界には。
hr裙しかいない。
ドン
ドン
ドン__
花火は止まらない。
赤。
青。
金色。
色とりどりの花が夜空を彩る。
花火が終わったら、すぐ、
hr裙はこの街を出る。
もう、会えなくなる。
あと3分。
言う?
やめる?
今言ったらhr裙を困らせるかもしれない。
遠距離…?
続く保証もない。
もし振られたら、?
この最後まで壊れてしまう。
怖い。
怖い。
でもーー
もっと怖いのは、
ーー何も言えないまま、終わることだ。
あと2分。
hr裙は花火を見て笑っている。
その横顔を見れるのも
あと少し。
嫌だよ。
嫌だな、
この時間が
終わって欲しくない。
あと1分。
屋台の人が片付けを始める。
子供達が親の手を握る。
祭りが終わっていく。
この夏も終わっていく。
俺達の“いつも”が終わっていく。
最後の花火。
夜空いっぱいに
大輪の花が咲く。
今だ。
今しかない。
足が勝手に動いた。
「hr裙、!」
「待って ッ 、!!」
「ur彡…?」
「俺、もう行かなきゃ、笑」
寂しそうに笑うhr裙の瞳に
花火の光が映る。
綺麗だった。
悔しいくらい。
綺麗だった。
「好きだ。」
口に出ていた。
静かだった。
長かった。
hr裙の返事を待つ時間だけ。
世界が
息を止めたみたいだった。
自分の心臓の音しか聞こえない。
うるさいくらいに鼓動してるのがわかる。
hr裙は目を見開く。
それから。
困ったように笑って。
「遅いよ。」
胸が落ちる。
やっぱり。
そうだよな。
今更こんなこと言われたって。
そう思った、その時。
「俺も。」
え、?
「俺も、今日言うつもりだった。」
涙が出た。
情けないくらい。
止まらなかった。
「遠距離になるけど」
「それでも」
「俺と…付き合ってくれますか?」
返事なんて決まってる。
何度も
何度も頷いた。
言葉にならないくらい。
何度も。
夜空では最後の花火が散っていく。
でも。
終わったのは
花火だけだった。
俺達の恋は
ここから始まる。
新幹線がゆっくりとホームを離れる。
窓の外で、街の灯りが少しずつ遠ざかる。
ポケットの中でスマホが震えた。
《ちゃんと、着いたら連絡しろよ。》
短い文章。
でも、画面を見るだけで笑ってしまう。
握っていた手を開く。
中には、小さく折りたたんだメモ。
結局、渡せなかった。
そこには、少し震えた字で書かれていた。
“ずっと好きでした”
苦笑する。
「先…越されちゃったな」
窓に映る自分は、少し悔しそうで。
でも、それ以上に幸せそうだった。
通知がもう1つ届く。
《次の夏祭りも、一緒に行こ》
思わず、窓から空を見上げる。
さっきまで咲いていた花火はもうない。
だけど。
終わったはずの夏の続きを、俺達はこれから何度でも作っていける。
そう思えた。
コメント
23件
うぁぁ、🥺 感動したぁぁ😭 次回の夏が気になる、✨
うわぁぁぁぁ(?) まず、情景&心情描写が好きすぎる💕えぐい、泣けるは🥲ハッピーエンドでよかった、最後言えるかほんとドキドキした、 しーちゃんが夏休みにあげてきた読切作品全部読んでるけどちゃんと、前作のストーリーと繋がってる部分があって細?!ってなった、凄すぎるよ…✨