テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
▶︎ 守り生かす
⚠︎
・卒業済ライバー有
・axa×lrn
・死ネタ有
・カップリング表現有
・EDN組しか出ない
_____________________
▶︎ 死後厳禁
「 しすたー! 」
「 おー、なんですか? 」
白い壁に囲まれた教会に風が吹き通る。
その風に胸元の鍵が揺れ、「シャラ」と音を立てる。
黒く染まった服が靡き、彼の赤い髪の毛をもっと美しく惹き立てた。
「 しんじゃったひとって、かえってくるの? 」
「 … 」
少年は困り眉で言った。
何だか焦っているようで、大体に察しがついた。
でもその発言が、彼の心を優しく傷付けた。
「 …、返ってきたら、良いですね。 」
「 ……、返ってこない、…? 」
『 もうこれ以上聞かないでくれ 』
彼の心はそう叫んでいた。
明日でこの潜入も終わる事を頭に叩き込み、少年にこう囁いた。
「 死んだ者は、返っては来れないのです。 」
彼の低い声は、少年の涙を引き上げた。
少年は大粒の涙を沢山流した。
そして、彼には何も言わずに、泣きながら教会を後にした。
彼の言葉は、彼自身も傷つけた。
彼はもう、大切な物を作らないとその場で決心した。
優しい人が先に死ぬとはこう言う事だった。
自分でも分かっていた。
人を守って、人を生かして、自分を傷つけ、自分が死ぬ。
警備隊としては自己犠牲は当たり前のような物だったが、
まさか自分の一番守ってきた人が死ぬとは思わないだろ、誰も。
普通守るなら被害者。
何であいつはあんなにも俺を守ろうとしたんだろう。
人が死んだ後、俺は泣けなくなってしまった。
___________________
▶︎ 不老
「 おいレオス 」
「 おっとー!これはこれは、ローレン君じゃないですかぁ! 」
薄暗い研究室に低く甲高い声が響く。
真っ青な髪の毛が靡く。
それは何十年も前とずっと同じだった。
「 おや?ローレン君目元が腫れていますよ? 」
「 …凶報だ。 」
「 おっとこれは失礼。 」
レオスは目を3回ほど瞬きさせては、目を閉じて眉を下げた。
まだ口角が上がっているのが俺からしてはとても不快だった。
「 スローンズの共同任務でアクシアが死んだ。 」
「 ……、おやおや、本当に失礼でしたねぇ 」
『 今のその顔が一番失礼だ。 』
最もその理由は、きょとんとした顔でまるで人が死ぬことが嬉しいようだった。
あくまで偏見だが、本当にそうかもしれなくて不安になってくる。
「 折角彼にも不老薬をあげたのに… 」
「 …お前には呆れた。帰る。 」
「 え、ローレン君!? 」
本当に奴は不快だ。
不老薬をあげた、ではなく正確には不老薬を飲ませた。
俺らはお前の実験体にされた被害者だ。
なのになぜそんな事が言える。
本当に奴は不快だ。
___________________
▶︎ 香るレモン
ノック音が小さな部屋に響く。
「 どうぞ。 」
「 エバさん。 」
部屋の中からは柑橘類の香りがする。
この酸っぱい匂いは、…檸檬か。
「 檸檬まで飼い始めたんすか? 」
「 柑橘系の匂いは好きだからね〜 」
はは、と笑いを溢す。
この前まで薔薇だったの辞めたのか。
「 薔薇やめたのかって思ったでしょ。 」
「 え”、バレてたっすか… 」
「 薔薇に変えた当日、女生徒に自分に恋してるのかって勘違いされて… 」
「 自己中も湧いてるもんっすね 」
びしっと軽くチョップされ、大袈裟に頭を抑える。
「 で、本題は? 」
「 凶報です。 」
「 おや 」
エバさんは眉を下げた。
こっちに来なさい、と来客用の椅子に座らせられる。
「 アクシアが、 」
俺は辛くなってこれ以上言えなかったし、俯くことしかできなかったけど、
エバさんが口元を抑えて驚いている事ははっきりと分かった。
ま、エバさんには俺とアクシアの関係なんてお見通しだったろう。
「 檸檬、持っていったらどうですか? 」
「 は? 」
そう言って急にエバさんが熟した檸檬を取り始めた。
檸檬、なんで?
「 檸檬の花言葉は心からの思慕。心から誰かを恋しく思う。 」
「 スローンズにピッタリじゃないですか? 」
「 ……、ありがたく貰っときます。 」
そう言って俺は笑って部屋を出て行った。
檸檬を眺めた。相変わらずよく出来ている。
アクシア、檸檬好きだったかな。
____________________
▶︎ 紅い責任
照らされている町を上から眺める。
風が気持ちよく吹いており、曇っている黒い空さえも綺麗に見えた。
「 パタ姐。 」
「 ローレンじゃん、どしたー? 」
パタ姐の黒と朱色の髪色が靡く。
パタ姐はこちらを振り向いた。
これからその笑顔を潰すと思うと苦しくなる。
「 アクシアが、いなくなった。 」
「 ……、行方不明? 」
「 この世はね。 」
この世どこ探してもいるわけない。
俺の目の前で死んだから。
「 ……、ローレン仕事は? 」
「 ちゃんとやってる。 」
「 アクシアの私物は? 」
「 俺が全部受け取った。 」
「 ローレンはアクシアの事嫌いなの? 」
「 …は、? 」
アクシアの事 嫌い
このワードが並べられるとは思わなかった。
今の回答でおかしなところはなかった。
何が悪かった?
「 …、アクシアの為に、ローレンは何もしないの? 」
「 …、なんで 」
「 ……、私達にはレオスも居るし、何とかなるんじゃない? 」
「 …、そんな、魔法みたいな 」
「 レオスの研究所に行った時、私みたよ。 」
「 行ってきな、レオスのところ。 」
今日のパタ姐は怖かった。
_____________________
▶︎ 再生
「 …って話なんだ。 」
「 なんだ、ローレン君、結構ダサいじゃないですか。 」
イラっとし、顔に力が入り皺ができる。
ダサいのは分かってるけど口に出すな。その想いが頭を一掃した。
「 あと、その話。本当にやるとしたらローレン君、自分の命自分から落とす事になりますよ? 」
「 だから!それでも良いんだよ! 」
頭にパタ姐の顔とレオスの顔が映ってイライラする。
そのせいで態度も悪くなっていることがすぐ自分でも分かった。
「 アクシア君の事が大好きなんですねぇ、私はいいですよ?もともと犯罪に触れているものですから。 」
「 警備隊のローレン君? 」
奴は笑顔で言った。
イライラの限度を超えそうになり、
とうとう怒りが溢れ出した。
「 早くしろっつってんだよ、… 」
「 はいはい。 」
その瞬間俺は意識が飛んで、そこから先の記憶がない。
_____________________
▶︎ 再世
「 …、!あ…!あく…! 」
「 アクシア君! 」
聞き慣れた声がする。
耳にスッと入ってきた。
博士の話によると、俺はずっと寝ていたらしい。
俺は「 アクシア・クローネ 」という名前らしい。
目覚める前の記憶が一つも無いから、最初は焦っていた。
目覚めた瞬間髪色は赤色で結構派手だったし、長髪らしい。
片目がギリギリ見えるほどまで前髪が降りてきた所も、
レイン・パターソンという女性に切って貰った。
目の色は緑のままにとって置こうかって博士が言ってたけれど、
俺は元々何色だったんだろう。
短い黒髪と、首辺りに巻かれた布が靡く。
「 さーて、新しい人生突っ走っていきますかー! 」
ずっと昔に聞いたような。
自分でも愛しい低い声が、自分の喉から出る。
誰かも知らない人が写っている写真がある。
その写真は、俺が目覚めた瞬間の俺とそっくりだった。
もしかしたら、生き別れの兄弟かも!
今日もその人を探すため、警備隊として街を回る。
警備隊の上の人たちは混乱に包まれてるけど、
おれには分かんないや!
「 いってきまーす! 」
その低い声が玄関に響いた瞬間、
写真に写っている人の髪が靡いた気がした。
▶︎ 守り生かす
コメント
1件