どうしてっ…………どうしてっ……
こんなに幸せなのに、
こんなに楽しいのに、
どうして…………………
「どうして、こんなに苦しいんだよっっっ………」
これは、
君に恋してしまった僕と、
純粋無垢で綺麗な君の
物語。
「君は、こんな僕と結ばれないで、」
「ずっと汚れを知らない、」
「純粋無垢な、綺麗な君でいて______。」
ーーーーーーーーーーー
自分がおらふくんへの想いに気づいたのは、1ヶ月ほど前のことだった。
それより前から、おらふくんが他の人と楽しそうに話していると、胸の辺りがチクチクしたりすることがあった。
でも、その時はまだ、その気持ちが何なのかよく分からなかった。
だから、僕はその感情を気づかなかったことにして、蓋をした。
だって、この感情に気づいてしまったら、きっと今までみたいにはいられないから。
そんなことを思いながら過ごしていたある日のこと。
その日はおらふくんと遊びに行っていた。
「いただきま〜す!」
「いただきます。」
ぶっ通しで遊んでたのもあり、お腹が空いてしまったので、早めのランチタイムということで近場のレストランに入っていた。
「ん〜!!!これおいしーよおんりー!!!!」
「そっかそっか、それはよかったね。」
「うん!」
ニコニコとしながら、美味しそうに料理を口に運ぶおらふくんを見て、思わず頬が緩む。
「おらふくん、口元にソースついてるよ。」
「え!?うわぁ恥ずかしぃ……。教えてくれてありがとおんりー……」
そう言いながら口を拭くおらふくん。
「いえいえどういたしまして。」
そんな君を見ながら、
(…………愛おしいな。)
なんて思ってしまった。
(………は?愛おしい?自分、何思って…)
さっきの自分の馬鹿にしながら食べ進める。
ふと目の前にいるおらふくんを見る。
ニコニコしているおらふくんを見て、
(……好きだな。)
またもや、心の中でそう呟いていた。
(あれ?もしかして自分、今好きって思った?)
なんでそんなことを、もしかして、自分は本当におらふくんのことが好きなのか……?
そして気づく。
(あぁ、これが恋か。)
自覚した瞬間だった。
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それからというもの、おらふくんの声を聞くだけで幸せになったり、おらふくんが笑うと嬉しくなったりした。
でもそれと同時に、苦しくなる時もあった。
君は自分なんかとは釣り合わないような人だと思ったからだ。
第一に、僕は男だ。それに、おらふくんは女の子が好きだろう。
第二に、おらふくんは純粋無垢な綺麗な子だ。
第三に、自分はそんな綺麗な君が好きな汚い人間だ。
こんなにも沢山理由があるじゃないか。
おらふくんは可愛いし優しいしかっこいいから、おらふくんは僕みたいな奴じゃなくてもっと良い人がいるはず。
おらふくんには幸せになって欲しい。
その為なら、この恋心を隠せる気がする。
おらふくんには嫌われたくない。
その為なら、この恋心を殺せる気がする。
そう思っていたけど、
そう思っていたかったけど、
やっぱり無理だった。日に日に、おらふくんへの想いが強くなって、溢れ出しそうなくらいまで来ていた。
もういっそのこと、この想いを伝えようかとも考えた。
だけど、もし断られたら? もしも引かれたら? 怖くて出来なかった。
結局、何も出来ないまま、君への想いだけがどんどん大きくなっていくばかりだった。そして今日もまた、君への想いが大きくなる。
『……おんりー?おんりー?』
おらふくんに名前を呼ばれる。そう言えば、今は通話中だった。
「……ん?」
『どしたの?ボーッとして。』
「あ、ごめんごめん、考え事してただけだよ。」
『ふぅーん。』
おらふくんは。正直わかってなさそうな声色で返事をする。
「おらふくん、この後予定あるの?」
『特に無いかな〜』
「そっか!それなら良かったら一緒に映画見ない?」
『見る!』
そう言って声色が明るくなるおらふくん。自分も自然と笑みがこぼれる。
「どんなのがいいとかある?」
『なんでもいいで〜!』
「分かった、じゃあ12:30に迎えに行くね。」
『了解!!』
こうして、おらふくんとのデート……(?)が始まった。
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映画館に着いた。
「おらふくん、どれが見たいか決まった?」
そう聞くと、少し悩んだ後に、
「これ見てみたいかも!」
と言って指をさしたのは、最近話題になっている恋愛ものだった。
「おぉ、これね。」
そう言うと、おらふくんは、
「おんりーは興味なかったりする……?」
と不安げに聞いてきた。
「いや、大丈夫。むしろ、おらふくんと見たいと思ってたところだから。」
そう返すと、おらふくんはパァッと明るい顔になり、
「ほんと!?やったぁ!!」
と言った。そんな顔をされたらこっちも嬉しいよ。
受付でチケットを買い、ポップコーンと飲み物を買って席に着くとすぐに上映が開始された。
(……めっちゃ面白いなこれ)
内容は、高校生同士の男女2人が主人公なのだが、実はその2人はお互い両片思いという、王道なもの。だが、それがとても面白くて、ずっとスクリーンにのめり込んでいた。
そしてエンドロールが流れ始め、スタッフさんの名前が出てきた時にふと隣を見ると、そこには目を輝かせながらスクリーンを見つめている君がいた。
(……ほんとに可愛いな)
またもやそんなことを思ってしまった。
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「いやぁ面白かったねぇ〜」
そう言いながら伸びをするおらふくん。
「そうだね、凄くよかった。」
本当によかった。お陰でまた1つ、おらふくんの魅力を知ることが出来たのだから。
「あぁ〜楽しかったぁ……」
「僕も、こんなに楽しい気持ちになったのは久しぶりだったよ。誘いに乗ってくれてありがとうおらふくん。」
「こちらこそ、誘ってくれてありがと!!!!!すっごく楽しかった!!!!!!」
(……そんな笑顔で言われたら惚れちゃうじゃん)
まぁ、もう惚れてるんだけど。
「それなら良かった。じゃあ、帰ろっか。」
「うん!!」
そうして、帰り道を歩き始める。
今日は、いつもより長くお話できた気がする。それはきっと、この感情のせいでもあるだろう。
でも、まだ、この恋心を明かすつもりはない。もう少し、このままの関係でいたいから。
ーーーーーーーーーーー
1週間後。
「…………今日雨降りそうだな…」
今日はおらふくんと買い物を約束している日。
窓から空を見上げると、どんよりとした暗い雲が立ち込めていた。
(傘持って行くか……)
傘を片手に、待ち合わせ場所に向かった。
ーーーーーーーーーーー
「おらふくん、もう来てるかな…」
そう呟きながら待ち合わせ場所に向かう。家からちょっと離れているが、歩いて向かっていたので、少し遅れてしまっていた。
「あ、おらふく______」
反対の歩道におらふくんの姿が見えたので、おらふくんの名前を言いかけたがやめる。
なぜなら、おらふくんと年下ぐらいの女の子が談笑していたからだ。
いつもよりもっと楽しそうな笑顔で。見たことない笑顔で。
「…………………」
やっぱり、自分より、他の人といるほうがいいよね。分かっていたことだけれど、やはり辛かった。胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に陥る。
「……そっか。」
自分に言い聞かせるように、小さくそう言った。
「……そりゃそうだよね。」
分かっているんだ。おらふくんには、自分の知らない、たくさんの魅力があるということなんて。
おらふくんの視界に自分が映る前に、消えよう。そう思って、がむしゃらに走った。
走り始める前に、
「あ、おんりー!?!?」
そう聞こえた気がした。気がしただけだ。
ザーッと雨が降ってくる。
これで自分の顔がおらふくんに顔が見られても大丈夫だ。
……………本当に、雨でよかった。
ーーーーーーーーーーー
「ハァッッ………ハァッッッ………」
がむしゃらに走ってどのぐらい経ったんだろうか。
どこまで走ってきたのか、まずここがどこなのかもわからなかった。
「……ははっ、馬鹿みたい。」
そう自嘲気味に笑って、その場に座り込む。
「……どうせ、自分なんか……好きになってもらえるわけないもんな。」
そう言ってその場にしゃがむ。
「なんで……なんで期待してたんだろう。元から諦めてたじゃないか……何回も、何度も……」
自分に言い聞かすように、そう繰り返す。
「なのに……なのになんでこんなに傷ついてるんだろ。」
周りの音は雨が地面に落ちる音だけが聞こえる。
「ははは……馬鹿みたいだな、自分。」
はぁ、とため息をつく。
ザーッと雨が降っている。顔から流れるものが、雨水か涙か、もうわからなくなってしまった。
「ははは………本当に、雨でよかったな」
泣き疲れたのと、走り疲れたので、もう何も考えられなくなって、空を見上げる。
これからどうしようか、そう思い、力なくふらっと立ち上がった瞬間、
「おんりー!?!?!?!?」
そう声が聞こえた。振り返るとそこには、びしょ濡れのおらふくんがいた。
「おらふくん……?」
「おんりー……やっと見つけた……」
そう言いながらこちらに向かってくる。
「………おらふくん。」
「ごめんね、本当にごめんね……」
おらふくんが謝ってくる。なんで?なんでおらふくんが謝るの?悪いのは、全部自分なのに。
「違うよ、僕が全部悪いんだよ…おらふくんは何も悪くないよ…」
そう言うと、おらふくんは怒った表情をして、僕の手を握る。
「えっ……おらふく____」
「おんりーはさぁ!どうしてそうやって1人で抱え込んじゃうのかな!!」
そう言われ、ぎゅっと抱きしめられる。
「おらふくん……離して……おらふくんがもっと濡れちゃうって……」
「嫌だよ。絶対に離さない。」
雨の音にかき消されてしまいそうなほど小さな声で呟く。すると、おらふくんはさらに強く抱き寄せてくる。
(……暖かい)
雨に打たれて体が冷えていたのだろう。人の温もりを感じ、心が暖まるのを感じる。
「おんりー、ごめんね、勘違いさせちゃって…」
「………え?」
勘違いってなんだ?自分は何かを勘違していたのだろうか。
「あの……待ち合わせの時にいた女の子、いたじゃん?」
「……うん」
「実は、あの子に道聞かれただけなんだ。」
「……へっ!?」
驚きすぎて変な声が出てしまった。
「あ、でも、そのあと少し喋ったけど……それで結構盛り上がっちゃって…」
「……えぇ……それじゃあ、自分が勝手に勘違いしてただけなのか……」
恥ずかしすぎる。ただでさえ雨で顔がぐしゃぐしゃになっているというのに、もっとひどくなってしまう。
「ほんっと……馬鹿みたいだなぁ……自分……。」
また自嘲気味に笑う。
「馬鹿じゃないよ、勘違いさせちゃった僕も悪いよ。」
「いや、おらふくんは全然悪くないよ……悪いのは、自分のほうだから……」
「そんなこと言わないで。おんりーは何も悪くないから。」
おらふくんは優しい口調でそう言ってくる。その優しさに、胸の奥が熱くなる。
「ありがとう……おらふくん。」
そう言って微笑むと、おらふくんの顔がみるみると赤くなっていく。
「ど、どうかした?」
「……やっぱりおんりー可愛い……」
「……は?」
「あっ!!ち、違うよ!?今のは言葉のあやっていうか、ほんとに可愛かったんだけどそういう意味ではなくて……」
おらふくんは顔を真っ赤にして慌てている。その姿がとても愛しく感じる。……あれ?今なら言えるんじゃないか?自分の気持ち。ずっと言いたくても言えないでいたこと。
「おらふくん。」
「ん、どうし___!?」
そっと唇を重ねる。一瞬の出来事だった。それでも、今までで一番長く感じた。
「……おんりー……?」
そう言ってこちらを見つめる瞳には、困惑の色が浮かぶ。
「……ごめんね、急に。」
「え、ちょっ、待って、どういう事……?」
おらふくんはまだ状況を理解しきれていないようだ。それもそうだろう。突然キスされたのだから。
「……好きだよ。おらふくんのこと。」
……言った。ついに言ってしまった。心臓がバクバクしている。顔が熱い。きっと耳まで赤いだろう。
「おんりー……ほんとうなの?」
おずおずといった様子で尋ねてくる。
「……本当だよ。」
「嘘だぁ……」
「本当だって。本当じゃなかったら泣いてここまで走ってこないよ。」
そう言うとおらふくんは、
「確かに……」
と言って納得する。
そうして、
「僕もおんりーが好き。大好き。」
と言ってくれた。おらふくんに優しく抱きしめられる。
「……両想い、だね。」
「そうだね。」
お互い見合って、クスッと笑い合う。
「おんりー寒くない?大丈夫?」
「おらふくんと一緒だから寒くない。」
「それは嬉しいけど……このままだと風邪ひくから、僕の家行こっか。」
「うん、ありがとう」
「おんりー、明日休みなら今日泊まっていきなよ!」
「えっ、いいの……?」
「もちろん!それに、もっと一緒に居たいんだ。」
「………!!!!うん!!!」
そうして、2人で手を繋ぎながら帰って行く。
雨はいつの間にか止んでいた。
コメント
9件
この作品も神だぁー! 初コメ失礼します!そしてありがとうございます!
これは本当に紙作品…!おんおらにもおらおんにもみえるからめちゃくちゃ好き!天才だ…!
これ見る専時代含め5週目✰ 神〜! 初コメ失礼!